12.5話 ドーナツは紙袋の中【真夜の場合】
【真夜の場合】
日奈が隠したドーナツを見つける宝探し。
真夜は駅に併設されているショッピングセンターへとやってきた。
ショッピングセンターは10階建てで、10階建ての屋上には展望テラスとなっている。
ドーナツを隠すのに10分しかかからなかったから、恐らく展望テラスにある可能性はゼロだと考える。短時間で隠すなら、低層の店のどこかだと真夜は結論づけた。
ショッピングセンターにはエスカレータ、エレベーター、階段がある。短時間で別の階層に移動するなら、エレベーターが楽だろうか。
私たちが最初にいたドーナツ屋前から駅まで3分。隠すのには4分。駅からまたドーナツ屋に戻るのに、3分くらいだと時間を見積もってみる。
隠す時間はショッピングセンターに滞在しているわけで、エレベーターが来るまでに待ち時間があって、待つのに2、3分だとして……。
そう考えてくると、ショッピングセンターは違うだろうか。
10分くらいで帰ってきたとして、ショッピングセンターにものを隠すことができるのだろうか。多分、無理、だろうか。
真夜はそれに気づき、ショッピングセンターを出ることにした。
それから真夜は商店街へと向かっていた。
駅近くにある商店街はよく夕食づくりのために通ることがあり、顔なじみも少しある。
でも、本当にこの商店街に日奈が一人で来ることができるのだろうか、少し疑問に思うことがあった。
以前、真夜は日奈と商店街へと行ったのだが、日奈は商店街が怖くてずっと真夜の手を握っていたことがある。
もう1か月も前のことになり、少しだけ懐かしさを感じた。
真夜は魚屋へとやってきた。
魚屋の店主は真夜の姿を見るとすぐに声をかけてくれた。
「おう、嬢ちゃん。一人で買い物か?」
「えっと今日はちょっと別件で」
「そうかい。それは残念だ」
「すみません。ところで茶髪の、パーカー来ている、なんというか猫っぽい子見かけませんでしたか?」
「んー、そんな子、いたような……。あ、そういえば男の子と二人でいたな。確か、大量の紙袋持っていた子だったな」
大量の紙袋? 一体どういうことなんだろうか。
そもそもあの短時間でどうやって大量の紙袋を用意できたんだろうか、少し気がかりなところがある。
さらに気になるのが、男の子の存在だ。男の子は多分、日奈の協力者なのだろうか。だとすれば、二人で大量の紙袋を隠していたということになるだろうか。
「その、男の子はどこへ行くか分かりますか?」
「うーん。確か、紙袋をゲームセンターへ隠しに行くとか言っていた気がするな」
「そうなんだ! ありがとう、おじちゃん!」
「おう! また今度魚買ってくれ!」
「うん! 次は紙袋の子連れてくるよ」
「おう! 楽しみにしているよ!」
真夜は魚屋の店主にお辞儀して、商店街を出た。
商店街を出てから、今度はゲームセンターへと向い歩いていると、自転車の男の子が一人、こちらへと向かってきていた。
男の子は真夜に近づく手前で、急にブレーキをかけて逆方向へと走り去ろうとした。
流石に呼び止めようとして真夜は、
「紙袋!」
と叫んでいた。
男の子は自転車を止めた。
真夜は走って男の子に近づいていく。男の子の正体は裕だった。
「ねえ、紙袋は全部配り終わった?」
裕は目をキョロキョロと目を泳がせて、
「えっと、何のことでしょうか。人違いじゃないですか?」
「そんなわけないでしょ!」
「ごめん。全部配り終わった」
裕はそう言いながら、頭を下げた。
「そうなんだ。というか、アンタがこのゲームに参加しているって、聞いていないんだけど」
「いや、俺も何も聞かされていないんだけど?」
「は? どういうこと?」
「俺はたまたま商店街で日奈に会って、急に紙袋渡されて、配ってきてって言われただけだ」
「へー、そうなんだ。それでドーナツの紙袋ってどこにあるわけ?」
「ドーナツの紙袋? ああ、紙袋の中身はドーナツだったのか。通りで少し重いなと感じていた」
裕は紙袋の中身を知らずに配っていたらしい。
「紙袋は全部でどのくらいなの?」
「そうだな。20個だな」
「じゃあ、アンタ、私と一緒に回収しにいくよ!」
「ええー。俺も行かなければだめなのか?」
「だって、隠したアンタがいればドーナツを見つける確率はあがるから」
「まあ、日奈には誰かの手伝いはするなって言われてないからな。仕方ない、場所案内するよ」
真夜は裕の案内の元、紙袋を回収しに行くことになった。




