12話 ドーナツは紙袋の中【隅の場合】
日奈は二人にルールを提示した。
・制限時間は1時間
・場所は駅周辺
・ドーナツは紙袋に入っている
・紙袋の中身は必ずしもドーナツが入っているとは限らない。
真夜と隅は了承し、日奈は先にドーナツを隠しに駅の方へ向かっていった。
10分もしない内に、日奈は二人の元に帰ってきた。
「二人ともドーナツを探して」
その合図とともに二人はドーナツを探しに駅の方に向かった。
*
【隅の場合】
隅は開始数分で、何やら黒服の男達を数人呼んで、こそこそと話始めた。
男達は一瞬、動揺したが、「お嬢様のお望みであれば」と言い、手分けして捜索しだした。
駅周辺には若者たちがなぜか集まる公園、大きなショッピングセンター、飲み屋街、商店街、そしてゲームセンターがあった。
若者たちが集まる公園には、隅は行きたくなかったので、最後に回ることにした。そもそも日奈のようなおとなしい子がその公園に行くはずがないのだと。
隅は黒服たちに飲み屋街に行くように指示して、商店街へと向かった。
商店街には肉屋、魚屋、八百屋、本屋、ラーメン屋、中華料理店……。といった具合に、たくさん店が集まっていたようだった。
ここにある店を一から探そうっていなると流石に制限時間までには見つからないのではと思い始めた。
隅はスマホを取り出し、黒服たちに電話することにした。
が、しかしなぜか電話には応答しない。
「な、何しているのかしら! 全く!」
と言いつつ、スマホを地面に叩きつけようとして、やめた。
ここは冷静になるのよ、私。
隅は一人で商店街を探すことにした。
まず肉屋に入る。
「あの、こちらに紙袋とかないかしら。例えばそう、ドーナツ屋の紙袋とか!」
肉屋の店主は首を傾げた。が、すぐにピンと来たようで。
「もしかしたらこれのことかな?」
と言われ、紙袋を一つ渡された。
「ありがとう。感謝するわ」
「ええ。お役に立ててどうも、しかし……」
肉屋の店主が何か言いかけている時に、隅は紙袋を開けた。
すぐに隅は驚いて目を見開いた。
紙袋の中には、何もなかった。
「肉屋さん! これ、どういうことよ!」
「え? 私に言われても……」
肉屋はなぜ責められなければいけないのかと分からない具合に首を傾げた。
隅はここで日奈から提示されたルールを思い出す。
そういえば、紙袋の中には必ずしもドーナツが入っているとは限らない。
「申し訳ございませんわ。あなたを責めてはいけませんでしたわね。それよりも先ほど何か言いかけていませんでしたか?」
「ああ。紙袋がまあ、軽すぎなんじゃないかって思ったことよ。まあ、中身がはいっていないんだったら、仕方ないよね」
「ありがとう。では」
隅は肉屋を去ろうとすると、肉屋の店主に呼び止められ、
「ああ。代わりと言ってもなんだか、この肉、お嬢さんにあげるよ」
肉屋の店主はそう言いつつ、すき焼き用の肉を渡してきた。
「ええ。別にいいかしら」
「そんなこと言わずに。もらっておくれよ、お嬢様」
「お、お嬢様だなんて……。コホン。ありがたく、受け取りますわ」
隅はすき焼き用の肉を受け取った。
「しかし、今日は女子高生の客が多いね。それに君たち、なんだか面白いことしているね」
「そう。ところで茶髪のパーカーを来た女の子はこちらに来なかったかしら?」
「ああ、そうそう。その子なんだよね、紙袋の子」
「そう。やっぱり来ていたのね」
「でも、その紙袋渡してきた子ちょっと変わった子でね。大量の紙袋持っていたわけ。あと数件回りますからって言って」
「そうでございましたか。他に情報はございますか?」
「えっと確か、途中で自転車の男の子が一人来て、なんでも手伝うって話になって。多分、今も、男の子が紙袋を色んなところに置いているんじゃないかな」
「そう。貴重な情報、感謝するわ」
「またいつでもおいで」
「それでは失礼するわ」
隅はお辞儀をして去った。
どういうことかしら、あの女……。協力者がいるって聞いていないかしら。まるで、本当に私たちに見つけてほしくないようにしているかしら。そもそも駅周辺って言うのに10分で帰ってくるなんて。しかも男の子はまだ紙袋を隠しているって、どういう……。あ、多分、そういうことかしら。
隅はどこか不適な笑みを浮かべた。
「なかなか面白いわ、私が必ず見つけてみせるわ」
隅は商店街を出た。




