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消え隠れする暗雲

「とは言われましても…」

 いきなりそのような事を言われても、なんと返せば良いのか分からない。存在すら知りもしない神話の領分の話など、知るはずが無いのだ。分かりようが無い。


「答えられない?」

 彼女は、ふふっと笑った。不味い方向に話が持っていかれている様な気がする。直感が警告を繰り返しているのだ。


「そういう話はありますが、他の──」

 近くの貴族が上げた声も遮られる。


「あるのでしょう? それが全てを証明しています」

 んな無茶な。知らない話の責任を押し付けられては困る。


「いえ───」


「あ・る・の・で・しょ・う?」

 彼は反論を試みたようだったが、大きな声に掻き消される。


「もう少し話を広げた方が良いのでは?」

 櫻院が声を上げると、笑顔を向けた。


「気にしなくてよいのですよ? こんなゴミ共は」

 空気が冷え込む。……何を言っているんだこいつは。いくら何でも貴族相手にここまでコケにして良いものなのか?


「言わせておけば…」


「言わないのが悪い」

 先程の貴族の言葉はまた塞がれた。権力をかさにしやがって。やり取りをするのも、見ているのも不快な奴だ。


「姉上、いくら何でも… 

 根拠に欠けますし、控えられた方が…」

 隣に待機していた金髪の男性が咎める様に口を開くが、どこ吹く風といった様子だ。


「根拠などいりません。これが全てです」

 …何処がだよ。根拠も何も無いに等しいだろうが。人を責めるのならば、説明責任は十分に果たせ。


「やめなさい。父上の話の邪魔をしてはならない」

 その女は、銀髪の男性に注意されてようやく口を閉じた。黙ったは良いものの、ずっとへらへらと笑っていて気味が悪い。


「──諸君に説明をしておくべきことがある。そなたらの持っているその武器についてだ」

 王様が一つ咳払いをして仕切り直すと、改まった口調で言う。


「そのことにつきましては私が」

 初老の男性が貴族の群れの中から一歩出て、王様の言葉を引き継いだ。咳払いを一つしてから口を開く。


「その武器は様々な強化を行うことで強化され、新たな力と光明を生み出して『大厄災』を治め…… と言い伝えられておりますが、なにぶ情報が古く、その過程、歴史に関する資料も大半が散逸しています。我が国も情報の収集、周辺国との共有に力を入れておりますので何か新たに分かった事がありましたらお伝えしますが、あなた方の試行錯誤に頼る面が多々あると思われますのでご理解とご協力をお願い致します」


 『大厄災』か…… あまり状況が掴めないが、随分と禍々しい事になっているのかもしれない。


「おっしゃることはある程度分かりました。それで私達はこれからどうしたら良いのでしょうか。直ぐに戦いに行くというわけにはいかないと思うのですが」

 櫻院が意見を述べる。


「そのことなのだが、先ずは戦力強化のために騎士団と共に鍛錬と研究を──」


「我々白聖教会としましては事の重要さからして教皇様に直接指示を仰ぐべきだと確信しております」

 王様の言葉を遮って、聖職者の中でも高位と思われる男性が言い切った。


「無茶です。今の状態では遠方に勇者様方を出すわけには参りません。道中の危険さは教会の方であればよく理解しているでしょう」

 側近らしき人が反対意見を述べる。


「これは神の意志であり、試練なのです。我々は従わねばなりません」

 代表らしき聖職者はまたも言い切った。論理と信仰の対立か。交渉になっていない。


「謁見をしに行くにしても騎士団だけでは戦力不足です。教会関係者や腕に覚えのある者も集めて行くべきです。勿論私も同行します」

 またもあの女が口を挟んだ。こちらから願い下げだ。


「今すぐに出発させることは難しい。しばらく待ってはもらえまいか」

 王様が妥協案を出す。


「戦力不足でしたら聖騎士団を呼びましょう。でしたら到着次第直ぐに出せます」

 教会側は引かない。教会側からは賛成の声が上がる。


「だが、聖騎士団は──」

 王様が渋い声を上げたとき、


「──なら私も同行しましょう。聖騎士団を待つよりも戦力の強化に努めましょう」

 その静かな言葉に空気が静まりかえった。声の主は王様の傍で今まで黙っていた初老の男性。


「──いけません!! 王都の守りをどうされるのですか」

 焦ったようにあの女が反対意見を口にする。その言葉はどこか少し丁寧だ。


「何のための王立騎士団だと思っているのですか。老人一人がいなくなったところで何ら問題はありません」

 変わらぬ調子で反論を抑える。騎士の集団の辺りのざわめきが大きくなっているのが明らかだ。


「リッペル様、王都の守りでしたら問題ありません!! 何があろうと王都と王は、我々第三軍が赤色師団の名に掛けてお守りします!!」

 赤色がかった髪を持ち、髪と同じ色の服装をした男性が敬礼の態勢を取ってよく通る大声で宣言する。あたりに並ぶ上級騎士らしき人々の中ではかなり若いようで、その目は老人に向けられていて光り輝いている。それは尊敬の念といったところからだろうか。


「とのことですが、よろしいでしょうか? ローズ様」

 物腰柔らかにそのリッペルと呼ばれた老人はあのクソ姫に有無を言わさぬ雰囲気を携えながら声を掛けた。

 忌々しそうな顔をしながらもローズとやらは黙った。どうやらあの老人の言葉はかなり重いらしい。


「では一通り話が纏まったので解散とする。明日、会議を行い、今後の方針を詰める。聖輪者達には個室を割り当てて十分に休ませること。くれぐれも干渉を図ったりするなど余計なことをしないように」


 その言葉でお開きとなった。常時場の空気に圧倒されっぱなしだったな。帰りには今後の方針について話したが、これといった結論は出なかった。どこか不穏な様子だったが、今は何もできないだろう。


「……面倒な事になりそうだ」


 その後俺達は食事をとり、各自の部屋に休みに行ったが、熱田のつぶやきがどうも頭に残った。


────────────────────────────────────


「それ何? ミサンガ? ブレスレットみたいに見えるけど」


「昔に友達と交換した奴だ」


「てなるとやっぱり自作? その友達センスあるね」


 ”面倒な事になりそうだ”

 その言葉は、暇とか言って部屋にやってきて、櫻院の部屋にだれかいるらしいとかなんとかいう無駄話をしていたひかりが夜遅くに帰った後も、消えずに頭から離れなかった。


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