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任務受領

 結局、広場に着いた直後に謁見の許可が出されて王の間に全員で向かうこととなった。


 一面に掛けられた旗。黒地に白抜きで剣に巻き付いた蛇が入っている。国旗だろうか。結構禍々しい様に見えるが。普通は獅子とかで黄色とか赤色なイメージがある。

 この剣と蛇の意匠が刻まれた扉の先がが王の間の様だ。


「二列に並ぼう」

 熱田の言葉に自然と二列に並ぶ。流石にひかりが俺の腕から手を離した。


「この先か?」


 櫻院の言葉に騎士が返す。

「はい、その通りにございます。我々は此処で待機命令が出ています」


 扉が内側に向けてゆっくりと開く。


「──聖輪者様の入場」


 その先には大きな旗が貼られ、大きさの異なる玉座らしきものがある。向かって左の少し大きい方の玉座には、王冠を被った男性が厳かな雰囲気を醸し出しながらで鎮座している。彼が王様なのだろう。


 白髪交じりの銀髪の男性の後ろには、三人の人間が立っている。左から銀髪の男性、金髪の女性、金髪の男性だ。


 その前には赤のビロードのカーペットが広がり、脇には兵士が三〇〜四〇人並び、その奥には二〇人程の貴族らしき人と、同じくらいの数の聖職者らしき人々が二列になって並んでいる。出入り口も兵士や騎士が固めており、厳重警備といった雰囲気だ。仮に逃げようとしても逃げようがないだろう。


 兵士に挟まれたカーペットの間を、俺達は歩く。先頭の二人はそこまで顔色に変化はないが、隣と後ろからは不安げな気配が伝わってくる。鋭利な槍を天に向けた兵士の間を歩くのは、流石に肝が冷えるな。不安になるのも俺達は平和ボケした日本人なのだから仕方が無いだろう。


 玉座の前にたどり着き、背筋を正すと、王様らしき男性が口を開いた。

「私は、ヘヴンクライ= K =シュトバハト4世だ。突然のことで悪いのだが、諸君に試してもらいたいことがある」


「承知しました」

 櫻院が一歩前に出て、全体を代表して答える。


「これだ」

 そう言って王様が手を挙げると、聖職者らしき人がやってきて、何やら複雑な魔法陣の描かれた羊皮紙を玉座と櫻院の間に広げた。


「これは…?」


「手をかざしてみるのだ」

 指示されるがままに、櫻院が手をかざすと、手元が赤く、大きく光り輝く。


「うおっ!」

 光が収まると、手元には鞘に収まった大きな剣が握られていた。赤い宝石で装飾され、複雑な文様を持つ白銀の大剣だ。


「おお…………!!」

 あたりの貴族や高位に見える聖職者が驚きの声を上げ、どよめきが連鎖する。


「…まさに神話の通りであるな」

 王様が努めて冷静に述べる。驚きの色は余り見えない。


「神話…とは何でしょう?」

 大剣を握ったままの櫻院が訊ねる。


「詳細は後で伝えるが、『別世界から渡ってくる世界を救う者』いわゆる勇者が危機が迫った時、必要な場所に現れるいうものだ」

 衝撃の、ありきたりな話が明かされる。王道にも程がありそうだ。個人的には、分かりやすくて助かるが。


「他の者達も試してみるのだ」


「では私が」

 先程の様に手をかざすと、橙色に光り輝き、手元には櫻院の手元にある大剣と同じ様な意匠の大きな杖が出現した。


「おお…………!!」

 また同じ様に感嘆の声が上がり、神吊はまんざらでもないような様子だ。


「これは杖ですね。やはり人によって武器は異なるのですか?」


「複数種類の武器があると伝えられております」

 聖職者らしき人が問いに答える。


「そうですか」

 神吊がこちらに振り向く。


「では次は私の番という事で」

 並び順からして俺の番の様だ。得体のしれない不安は確かにあるが、流されるしか今は無さそうだ。


 一抹の不安を感じながら前に歩み出て、羊皮紙に手をかざす。するとまばゆい紫色の光に手元が包まれた。紫色…指輪に嵌っている宝石の色と同じだな。


「おお…………!!」

 先程と全く同じ反応が伝播した時、手元には同じく鞘に収められた細身の剣が手にあった。軽いようで重いが、振り回せない程では無さそうだ。


「次ですよ」

 辺りを一瞥してから、ひかりに振る。


「あ…っと、はい。分かりました」


 他と同じ様に透明な光とともに手元に現れたのは、大きな鎌だった。


「重い… ですが、立派です」

 少し大変そうにしているが、なんとか手に持ててはいる。


 次の寿は大きな槍、熱田は大きな弓が手元に収まった。終始、周りの貴族達は同じ反応をしていて、衝撃の大きさがこちらにも伝わってきたような気がする。それだけ驚くべきことなのかもしれない。


「全ての者が輪器を手にした。此処に、私は、ヘヴンクライ= K =シュトバハトの名のもとに諸君らを聖輪者として認める」


「おお…………!!」

 また貴族達が声を上げ、何処からいつの間に持ってこられたのか、盛大なファンファーレが鳴り響き、拍手喝采が起こる。 

 その熱気が大体収まったところで、

「私は諸君らに協力を求める。今我が国と周辺国は、魔物の大量発生と、『黒血一心連合』と争っているのだ」


「…魔物の大量発生はある程度想像がつくので分かりますが、『黒血一心連合』とはどんな組織なのでしょうか?」

 熱田が疑問を呈する。


「それは我々の敵性組織です。強大な身体能力と、魔法の技量を持ち、近年、魔物の大量発生が始まったのと同時期にこちらへの干渉を強めて来たのです」

 その疑問には、前の方に来た貴族が答えた。


「我が国はその攻防の矢面に立っている。現状では戦力は拮抗しており、今すぐに諸君らの助力が必要な状態では無い。暫くの間を使って、自らを高めてもらいたい」

 王様があとを引き取った。


 つまり、よく分からん強い奴らと戦えと言う訳か。とりあえず、一人だけ武器が出ないとか、フライパンが出てくるとか言うことにならなくて良かった。


「あなた達に協力すべき理由と、意味はあるのですか」

 熱田が重ねて攻めた質問をする。


「神話には、「『別世界から渡ってくる世界を救う者』いわゆる勇者が危機が迫った時、必要な場所に現れる」とあります。それが今、この地なのでしょう。何も初めてのことではありません。過去にもこの地で召喚が行われたとされており、それ故に我が国は存在しているのです」

 聖職者らしき人が先程の内容を補足しつつ繰り返した。


「どう思う?」

 櫻院が声を潜めて全体に訊ねる。


「協力すべきだと俺は考える」

 先程から質問を重ねていた熱田が意見を言う。


「理由は?」


「今、俺達は知らない世界で右も左も分からない状態だ。断るのは危険が大きすぎる」


「もっともだな。今の時点では断る理由も無さそうだし」


「そうですね… 交渉次第…といったところでしょうか」


「賛成だ。そうせざるを得ない曲面だろう」

 自己主張をしておく。


「なら、わたしも賛成します」

 ひかりも消極的ながら賛同の意を示し、寿も小さく頷いた。


「分かりました。ぜひ協力させてください。ですが私達の手助けをしてもらいたいのですが良いでしょうか」

 櫻院が代表して意思表明をする。


「勿論だ。情報収集や、資金の調達など、全面的に協力する」


「感謝します」


「あなた達は一体何を見たのか」

 いきなり言葉を発したのは玉座の後ろに立っていた金髪の女性だ。遠慮が無い。立ち位置的に偉い身分なのは間違いないだろうが。


「靄と五本の武器です」


「ええ、剣を始めとする武器を見ました」


 何を見た…か。この剣は見ていないな。剣はあったが、櫻院の持っていた物であったように思える。

「…この剣以外の武器を見ました」

 一応しっかりと答える。


「あんまり覚えていませんが、鎌がありました」


「多分…同じです」


「五本の武器を見ました。弓もあったような気がします」


「武器な〜」

 説明が一通り終わると、彼女は笑みを浮かべた。どこか薄ら寒い気がしてくるな。変な反応だ。違和感…なのか?


「あなた、その武器は見なかったわけね?」


「ええ」

 こちらに振られるとは思っておらず、咄嗟に反射的に返した。


「そう」

 そう言って含み笑いをする。自分の感覚が正しければ、得体のしれない気味の悪さがした。なんとも説明し難い嫌な感じだ。何か重大な事を言われる予感がした。


 …その予感が的中していたことを俺は、後に嫌という程思い知る事となった。


「細剣使いが蛮行を重ねた話があるのよ? あなたのことじゃあない?」

 個人的な諸用により更新が遅れております。申し訳ありません(早急に投稿を再開します)。

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