09 駆除開始!
場所はレイズの寿町、廃ビル『杏璃』の前。
「……なんか、思ったよりも不気味なとこだな…」
「だよね!?もうちょっと綺麗だと思ってたのに、ツタが絡まりまくってるThe・廃ビルってとこで目を疑ったもん!」
涙目になりながら桜は話す。
「依頼なので仕方がないでしょう。……そろそろA班の方が来るはずですが……あ」
サイダーが見ている方向を見ると、こちらに向かってくる人影が見える。
「あ……。こ、こんにちは。……君たちがB班の子たち?」
二人のうち一人がこちらに喋りかける。
「はい」
ジュンが冷静に答えた。
「よ、良かった。あ……。わ、わたしはA班のう、卜部かごめだよ。よ、よろしくね。人見知りで、上手く、喋れなくてごめんね」
ミュール色のロングヘアはふわふわとしている。
シャンパン色の瞳には安堵しているという感覚が滲み出ている。
すると、隣にいるもう一人の人に目線を送る。
「……あ、えっと、この人は、わ、わたしと同じA班で、わたしのお姉ちゃんの卜部雲母だよ。お、お姉ちゃんは口下手であんまり話さないけど、い、いい人だよ。安心してね」
かごめがそう言うと、雲母は小さくお辞儀をした。
銀鼠色の髪は三つ編みに結って肩にかけてあり、ルビーレッドの瞳は優しくこちらを見つめていた。
「本日はよろしくお願いします。卜部さん方」
サイダーはお辞儀をして微笑んだ。
すると、かごめはあわてていった。
「そ、そんなかしこまらなくて大丈夫だよ。き、気軽に話しかけてくれるとう、嬉しいな」
「ほんと!?じゃあかごめちゃん!雲母ちゃん!よろしくね!」
「「「こら桜!」」」
同時に桜を叱った3人を見て、かごめと雲母はくすりと笑った。
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「え、えっと、これがこのビルのマップ、そして討伐対象の見た目、特徴などがそこにまとめられてるよ。後、基本的には一人で駆除して貰うね。制限時間は3時間。そ、それまでに駆除が出来なかったらわたし達が介入するね。い、1時間半後に軽食を配るから休憩を取りつつ、がんばってね。でもクリア出来なくてもおかしくないから、安心してね。わたし達は4人をみ、見守ってるから。そ、それじゃあ飛ばすよ?いい?」
4人が同時に頷く。
それを確認すると、かごめが魔方陣を展開した。
「そ、それじゃあ転移魔法が発動したらスタートということで……い、いくよ……!」
魔法が発動すると同時に辺りが真っ白になる。
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「……ん。転送されたか。思っていたよりも広いな。隅々まで探さないといけなさそうだ」
すると、手から鎌を出した。
(………この鎌は魔力を圧縮してできたものだからな。あんまり魔力は消費しないが、出すたびに魔力消費ってなると痛いな。だからといって常時持ち歩くとなるとなかなかに面倒だ。……そこは何とかするしかないか)
そうして部屋の探索を各々始めだした。