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50 【記オくのカケラ】琴乃 後編

今回で琴乃編は以上になります。

後、長いです。

「……あ!これは修学旅行の写真!こいつら変顔ばっかり!あははっ………琴乃さん」

「あ、ごめん。面白いね」


気づけばぼーっとしていたようだ。

最近、わたしにとって彼はなんなのか、良く考えるようになった。


「…………琴乃さん、最近なんかおかしいですよ」

「……!そ、そう?」

「そうです。貴女の様子が変なのは、俺も心配です。なので、全部教えて下さいよ。俺……琴乃さんがずっと好きなんですよ。今さら自分の気持ちに嘘をつきたくないです」

「……冗談は言わないで」

「冗談じゃないです!」

「……冗談じゃ無くても…それはわたしが人間じゃないことを知らないから言えるんでしょ?」

「……人間じゃないから何なんですか?そんなこと、気にしないですよ。小さい頃からずっとここに来てましたが……それは人間じゃないとか関係無い……琴乃さんとの思い出なんですよ」


泣きながら必死にわたしに訴える。

そんな必死な姿にどうしようもなく自分が嫌いになった。

涙が自然に溢れ、琉雅の近くに寄る。


「……ごめん。わたし、君の……琉雅の気持ちを考えてなかった。こんなわたしでも良いなら……一緒にいよう」

「…!絶対ですよ!」


__________


あれから何年の月日が経っていた。

琉雅は立派な大人になった。


「……もう君も成人なんだね」

「君じゃなくて、琉雅ですよ」

「………り、琉雅」

「ははっ。何?琴乃」


悪戯に笑う彼を見て、少し恥ずかしくなった。


「……わたしと、結婚してくれない?」

「………え?」


早朝のリビングにて。

指輪の入った箱を開けた。

間抜けそうな顔をした琉雅と、真剣な琴乃がいた。


「……嫌?」

「い、嫌じゃないけど、急過ぎるって!俺まだ起きたばっかりだぞ!?」

「ご、ごめん。さぷらいず?って言うのをしたくて」

「……え?サプライズ?」

「うん。こういうのをさぷらいずって言うってネットで見たから」

「うーん……まぁ確かにサプライズは出来てるが……こういうのは普通男性がやるもんだぞ」

「え?そうなの?」

「……まぁ、いっか!結婚しようぜ!」


満面の笑顔で琉雅は答える。


「………え?」

「何だよその顔」

「い、いや……断られるかと思って」

「ははっ。断るわけ無いだろ!びっくりはしたけど……それじゃあ改めてよろしく。琴乃」

「……うん!」


それからは、しばらく平和な日々が続いていた。

琉雅と居るだけで、幸せだった。


「……夏祭り?」

「あぁ!琴乃は行ったこと無いだろ!だから二人で行こうぜ!」

「……うん」


正直興味は無かった。

でも楽しそうに話す琉雅を見たら何だか行きたくなってしまった。


「やった!じゃあ浴衣でも買いに行くか!」

「浴衣?」

「え……?」


__________


「……ん、美味っ!」


美味しそうに綿あめを頬張る琉雅を見て、自然に嬉しくなる。


「ほら!琴乃も食べてみ!美味いぞ!」

「……ん、おいひい」

「だろ!あ、次金魚すくい行くか?」

「うん」


本当に、楽しかったな。

あれまでは。

夏祭りが終わって数日、暑い日のことだった。


「いや~楽しかったな!この間の夏祭り!」

「うん。金魚すくい、上手だったな」

「ははっ。サンキュー……それにしても暑いな、アイスでも買ってくか?」

「何味?」

「ぶどう」

「悪くない」

「だろ!」


心地よい風が頬を掠める。


「ははー。結構買っちまった…」

「いくら使ったの?」

「……1306円」

「買いすぎ」

「……たまにはいーだろー」


交差点にて。

信号待ちの最中だった。

琉雅は隣でアイスを食べている。


「……一口頂戴」

「いいぜ!ほらよ……」

「……ん、悪くない」

「だろ!ほら、信号青になったぞ!」

「……うん」


わたしは彼よりも先に足を進めた。

しかしそれが全ての間違いだった。

大きなクラクションとブレーキ音、そしてわたしを呼ぶ琉雅の声、全てが合わさったその時に、ガンっと不穏な音が耳に響いた。


「………え?」


血溜まりが出来ており、返り血が頬を染める。

これは……誰のだ?


「……琴、乃」


弱々しい琉雅の声が聞こえた。

目の前には、血まみれになった彼の姿。


「……あ、あぁ…嘘!嘘嘘嘘!やだ!琉雅!!琉雅!!あぁ!!」

「……ンな顔、すんなってぇ……はは……悪い…琴乃……無理っぽいや……」


受け止められない、受け入れられない。

受け止めたくない、受け入れたくない。


余りのショックに、わたしは気を失った。


__________


気づけば、わたしは治療班の所にいた。

そしてカウンセリングをしてくれたのが、渉さんだ。

幸い、彼は生きていた。

そしてわたしは、彼の近くにいるためにも、治療班で働くことになった。

しかし、もう3カ月の月日が経ったが、琉雅は目を覚まさない。

打ちどころが悪かったようだ。

原因は相手の飲酒運転、運転手は今牢屋の中にいる。


__________


「彼のために、わたしは今日も働くの。……そして、わたしは今日も…罪を償う」

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