34 黒霧の烏
「ねぇ、なれるんでしょ?人間。じゃあなってよ、そっちの方がやりやすいし」
烏は少し間を置き、黒い霧に包まれた。
「……ふーん。分かるんだ、中々のやり手だね」
いずれ霧が晴れ、人間の姿が露わになる。
紅い目に長い濡羽色の髪、少し幼い見た目だ。
「ほらっ、なれるじゃん。何でやんないの?」
「……答える筋はないから」
烏はぶっきらぼうにそっぽを向く。
それを見て傑は笑った。
「あっそ、じゃあさっさと殺すね〜」
「笑顔でなんて言葉を……」
「敵だから当たり前じゃん」
烏は傑を睨む。
傑は悪戯に笑った。
「あんま舐めないでよっ……と!」
背中の大きな羽で暴風を起こす。
傑はそれを真正面で受ける。
「ん〜……威力は中々だけど、もうちょっと応用が利くといいかな。こうやって……ね!」
気付くと傑が後ろに回り込んでおり、烏の暴風を利用し思いっきり地面に打ち付ける。
「まだでしょ?」
宙に浮いている傑は気づけば大剣を持ち、大きく前に持ってきた。
「ねぇ、もっと楽しませてよ、つまんないじゃん?」
「あの人……乙女を地面に打ち付けるとか、馬鹿なの?殺されたいの?」
土埃を払いながら傑を睨む。
「殺されるのはむしろそっちの方でしょ、打ち付けられてんじゃん。ウケる」
「はぁ……??…本気出すから、覚悟してよ」
「そ、じゃあ50%くらいの力でボクもいこっかな。それが妥当だよね」
大剣を後ろに持ってきて肩にかける。
「…舐めるなよ」
「あははっ。口わっる〜、好かれないよ?」
「……わたしは妖狐様に好かれていればそれでいいの」
「そ、じゃあさっさと決着つけよ」
傑が剣を目の前に突き出す。
後1ミリ動けば血が出るほど近くに。
烏は目を見開く。
「で、どういうつもりでこうしたの?」
その声は聞いたことがないくらい低かった。
そんな姿に、私は少し恐怖したんだ。
傑が、傑じゃ無いようで。
「…………」
「話す気無いのね〜、じゃあ……ちょっと痛いよ?」
傑は後ろに回り込み、烏の首の後ろを打ち、眠らせた。
「……うん、よっし!終わったよ」
傑は烏の顔を見て、眠ったことを確認した。
するとこっちを振り返り、いつもの笑みを見せる。
雷はすたすたと傑の方へと向かう。
「……無茶しすぎだ」
「ははっ。そーお?……でも久々にちょっと楽しめたかも♪」
「全く……で、こいつはどうする?」
「拘束して目が覚めたら経緯を聞き出す」
「分かった、逃がすなよ」
「分かってるってー」




