03 緊張の試験
「………そうだね。カッコよく言えば『スパイ』かな」
「………そ、そんなドヤ顔で言われても」
サイダーがガクッとうなだれる。
「いや、そこはカッコいいとか言ってくれないと困るよ」
「………?なんかすまん」
管理長とレティが笑う。
「ふふっ。面白い人だね」
「ですね。………っていうか管理長、もう準備出来てるのでは?」
「確かに。彰、サイダー、行こうか」
「「はい」」
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試験は倉庫の様な密閉された空間で行われるようだ。
その中に一つ、ロボットが置かれている。
一見普通の壁だが、ある程度の人ならわかる。
(………この壁、相当頑丈だな。それに何か感じる。コンクリートっていうやつに何か練り込まれてるんだな)
「試験は単純。そこにあるロボットを壊すか。あるいは3分間で10発以上打ち込むか。どちらを選ぶ?」
「………じゃあ、壊す方でお願いします」
(壊す方が多分俺の性に合う。“あいつ“を使えばきっと一瞬だろうからな。あと素手で10発っていうのも普通に痛いだろ)
「っていうか、壊しちゃって良いんですか?」
「あぁ。大丈夫だよ。そのロボットは試験用にたくさんコピーしてあるからね」
「えっ………」
(そうだったこの人管理長だった。管理長って事は強いに決まってるじゃん。管理長系は冷酷なのがお決まりのスタイルだってどっかで聞いたことあるし)
レティが前に出てき、声を張り上げる。
「それでは、今から試験を始めます。合否は私、レティが判断致します。試験、開始!」
開始の合図と共にロボットの目に光が走る。
瞬間、こちらに向かってくると共に彰も戦闘態勢をとる。
手には鎌が握られる。
ロボットの拳を鎌で受け、そのまま蹴飛ばした。
「………あっぶね。ちょっと気ぃ抜いてたらヤバかったな」
そんな彰を他所にロボットはすぐに態勢を整える。
瞬間、こちらに向かってくるロボットとは真反対の方向に彰がいる。
それと同時に、ロボットから火花が散り、動きを止めた。
「終了!合格です。よく頑張りました。これで貴方も、正式にこの組織の仲間です」
レティが優しい笑みを浮かべる。
「す、すごい!すごいです!彰、一瞬でロボット壊しちゃった!言ったでしょう管理長!私の目に狂いはないの!」
サイダーがこちらへ興奮しながら走ってくる。
「うん。やっぱりサイダーが目をつける人はいい人ばかりだね。頼りになってるよ」
「えへへ………」
管理長に褒められ、サイダーが嬉しそうに照れる。
「合格出来て良かったよ。下手したら落ちてたかも」
「そんな事ないですよ!彰は強いから!」
「ははっ。ありがとな」
(新しい世界で、新しい仲間と、新しい道を歩んでいくんだな。………楽しみだ)