20 生活していく仲間
「……自己紹介を、させてくれ」
「そりゃあいい考えだね、ワタシも乗らせてもらおうか」
「は、はぁ……」
唐突な要求に驚く。
確かにここで生活していく以上、仲間の事は知っておいた方がいいだろう。
「スパイ事務所エルビスの治療班、会計担当の船橋雷だ。よろしく頼むぞ」
「同じくスパイ事務所エルビスの治療班の医務長を勤めている、クロエだ。姐さんとでも呼んでくれ。よろしく頼むよ」
「突然だが、生活面についての説明をする。コイツが言ったとおり、君は今、厄介なものに魅入られた。それと同時に、バグの症状が酷く、ここに来た。……我々が安全面を保証するから対して気にしなくてもいいが……あ、その……」
雷が言葉に詰まる。
「アンタが緊張してどうすんのよ。もっとシャンとしな!」
クロエに一喝されると雷は恥ずかしそうに目を瞑る。
案外抜けてるのかもしれない。
「うぅ……わ、分かってる。……大変申し訳ないが、君には暫くの間、ここに住んで貰う。安全を保証する為、我々の目の届く範囲にいて欲しいんだ。……知らない環境に移るということは、ストレスが溜まることは承知している。でも、君には元気でいて欲しい。それが管理長から聞いた思いだ」
「……管理長が、ですか。分かりました」
管理長がそんなに、私の事を……。
私が救われた側なのに、どうして。
「おやおや。見た目に反してカッコいいお嬢ちゃんじゃないか」
雷が驚いた様子でこちらを見てくる。
そしてクロエがまた雷を一喝。
「……おい、雷」
「あ、あぁ……そうしてくれると……助かる」
しどろもどろになりながらも、雷は感謝の言葉を伝えた。
……何だ、今の視線は。
そんな事を考えていると、自然に傑が目に入る。
「__あのー…サイダーちゃん、雷ちゃん、姐さん……ボクの事は〜?」
踏まれている傑が声を出す。
「……何がだ」
雷も完全に傑の事を忘れていたようだ。
……船橋さん、抜けてるな。
そう思っているとまた吐き気が込み上がってくる。
「……ぁ…あの」
「どうした?……ん?」
(やけに顔が青い、それに腹を擦って……まさか)
「おい、バケツを取ってこい!」
「ん?何で……っとこりゃ吐くね。バケツならベッドの横にあるよ。吐くとこなんて見られたくないだろうしボク達は出て行こう」
そうされると助かる。
サイダーはバケツを取り、その中に食べた物を戻した。
こんな生活が続くんだったら、ここにいても良いかもしれない、少しそう思うのだった。




