11 狭間で生まれる者
化け物を見た瞬間、サイダーは驚いた。
「あ、あいつ……!私を襲ってきた……!」
すると雲母はこちらを振り返った。
「ん、思い出した?体調はどう?」
「は、はい。……あの、あれは一体……?」
声がまだ震えている。
そんな姿を見て雲母は優しくサイダーの頭を撫でる。
そして淡々とまた話し始める。
「……『バグ』だよ。君たちにはまだ知らされてないみたいだね。はぁ……全く管理長は何をしてるんだか。っと話が逸れたね。世界と世界の間で生まれる不可思議な存在。コイツを倒すには特別な手順や才能を要する。こういうとこが厄介。だから何年たっても完全に討伐されない。……簡単に言うとこうだね。かごめと『バグ』対しての専門家に電話するから……こっち来て休んでて。寝ててもいいよ」
そうして電話をかけ始めた。
(……かごめさんは口下手だと仰っていましたが……仕事関係だとよく話すのでしょうか………?……でも、いい人……ですね)
ここでサイダーの意識は途切れた。
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(………寝たかな。まぁ初めて精神汚染系の魔法食らったもんね。疲れててもしょうがないか)
電話がつながる。
『ふわぁ………ひゃい。こちら百合園バグ退治事務所ですぅ……』
酔っているのだろうか。
呂律が回っていない。
「……雲母です。バグが出たので至急退治を頼みます」
『おぉ……雲母ちゃんが電話してくるなんて珍しい。ってかバグ?ん゙ん゙ーー……それっぽい悪魔じゃなくてぇ?』
「切った感覚的にバグです。精神汚染系の魔法を使用する、意思の疎通はできないです」
『………もうちょっとお酒のまして?』
「駄目です」
『頼むよ雲母ちゃ〜ん。アタシ5時から退治行ってたんだよ!ちょっとぐらい休ませて〜』
「……こっちこそ頼みますよ。私じゃ殺せないんですから。全く」
電話越しにため息をつく。
『はいはい。……んで、住所は〜?』
「レイズの寿町にある廃ビル『杏璃』、3階の手前にある廊下です」
『了解〜。んじゃぁ、今から向かうから取り逃さないでよぉ』
そうして電話が切れた
(………全く。朝からお酒は寄せと何回言ったら分かるのか。……と言うか、弱いくせに何でお酒飲むんだろ。大人の威厳っていうのを敦生君に見せたいのかな)




