#記念日にショートショートをNo.54『時燃ゆ』(The Times Burn)
2021/2/11(木)建国記念の日 公開
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【関連作品】
なし
4人はいつも一緒にいる。しっかり者で真面目な海,男らしさとリーダーシップのある俊,元気でよく笑う三葉,大人しく謙虚な瀧。海と俊はお互いに惹かれ合い、三葉と瀧もまたお互いに惹かれ合っていた。
彼らは、どこにでもいるような普通の高校生だ。学校に行って勉強し、友達と笑い合い、時に恋をする。
しかし、彼らにはある秘密があった。
その秘密は、彼らが出会ったあの日から始まった。
1964年、初の自国開催であるオリンピックまで、100日を切った日。
この日、街に彗星が落ちた。
予測できない事態に、世界は錯綜した。情報網の乱れ、医療機関の崩壊、治まらないざわめき、混乱…………。
しばらくして騒ぎが治まると、世界は一変していた。
彗星が落ちたからではない。
一瞬のち、世界は、2021年へと、時を移していた。
西暦の数値だけが変化し、人々の年齢は変わっていなかった。
みんな、当たり前のようにスマホを持っていた。当たり前のように、インターネットが普及していた。すぐそこに、二度目の自国開催のオリンピックを控えていた。
ただ、西暦の数値だけが、突然変化したのだ。
人々は、突然のあまりにも大きな変化に戸惑った。誰もが、夢と言い訳出来ないそれに畏怖を覚えた。
しかし、彼らだけは違った。
彼らは、何故時が動いたのか知っていたのだ。何故突然、57年もの月日が流れたのか。何故、自分たちの年齢は変わらないのか。
彼らは心の奥底で、自分たちの存在が時の移動を創り出したことを悟っていた。また、彼らはそれぞれ、自分と同じ境遇の人間が他にいることも悟っていた。
そして彼らはある日、バス停で出会った。いたって自然に、何の示し合わせもなく。彼らはお互いに頷き合うと、山奥にある洞窟へと向かった。
彼らはそこにあった口噛み酒を飲んだ。
再び、➖今度は何の動きもなく、世界が動いた。
そこに、最初から2021年だった世界が現れた。
人々の心に居座る大きな齟齬も微細なズレも、すべてが消え失せた。
神は磁石で結び付けるように、彼らに褒美として愛情と友情を授けた。
彼らはいつも、一緒にいる。
【登場人物】
○松崎 海(まつざき うみ/Umi Matsuzaki)
●風間 俊(かざま しゅん/Shun Kazama)
○宮水 三葉(みやみず みつは/Mitsuha Miyamizu)
●立花 瀧(たちばな たき/Taki Tachibana)
【バックグラウンドイメージ】
◎パスティーシュ題材
○宮崎 吾朗 監督作品/『コクリコ坂から』(From Up On Poppy Hill)
○新海 誠 監督作品/『君の名は。』(Your Name.)
【補足】
【原案誕生時期】
2020年8月頃