ヲタッキーズ52 謎のイメクラ強盗
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第52話"謎のイメクラ強盗"。さて、今回は秋葉原にスーパーヒロインによる強盗団が出没w
背後に悪に堕ちたスーパーヒロインを推しと崇めるTOの存在を知ったヲタッキーズは強盗団アキバキラーと対決スル羽目に!
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 スチームパンク強盗
「どっちのガジェットが良いかな?」
ガジェットとは、珍しげな小道具のコトだ。
「蒸気で翔ぶ飛行機械?絶対プロペラだわ!ロケット?あり得ないし」
「え。私はハデな方が好きだなー」
「テリィたん、翔んでみせて!」
万世橋の橋の上で、僕はヲタッキーズに囲まれて…キャピキャピしてるw
あ、ヲタッキーズは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団だ。
今はオフなので全員メイド服←
「こんな感じ?」
「背負うだけ?翔ばないの?」
「うーん無理カモ。先月までは扇風機だったし」←
ソコへパトカーが通りかかって、万世橋警察署のラギィ警部がウィンドウを開けて挨拶。
「テリィたん。可愛いメイドさんに囲まれて何の妄想?」
「ラギィの妄想は、アキバの全犯罪者を蔵前橋の重刑務所に送るコトだょね」
「私達、妄想を追う者同士ね。お互いに頑張ろ?」
ソコへ警察無線のお呼び出し。
「はい。ラギィ警部」
たちまち、彼女の眉間には(小w)シワが寄るw
「わかった、すぐ行くわ。仕事ょ。行くわ。またね」
パトカーの窓から手を振りながら走り去るw
「またまた妄想に挑むのか」
「あ、ミユリ姉様からコールだわ」
「私達も参戦ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は、駅に近いタワマン最上階のペントハウスで…何とプールに被害者が浮いているw
「抵抗した父親が惨殺されました」
「最近、スーパーヒロインによる押し込み強盗が頻発してる。今回も同じスーパーパワーの持ち主による犯行と思われます」
「犯人は、スチームパンクなマスクを着用。身体特徴はアメコミ体型でグラマラス。半年で7件。因みに、犯行間隔がドンドン短くなっています」
「彼女の狙いは?」
「いつも同じです。宝石に絵画、高級家具」
「意外に俗っぽいのね。秘密兵器とか未知のウィルスじゃナイの?」
犯人が物色した後のペントハウスにはフロアいっぱいにモノが散乱w
その中に落ちていたクマのぬいぐるみを拾い上げて娘に渡すラギィ。
怯えた目でクマを抱き締める娘。
「被害者はブルム。妻と15才の息子と一緒に帰宅すると、いきなりスーパーヒロインに縛られました」
「スーパーヒロインに縛られる?イメクラみたいね…息子さんは父親の死ぬトコロを見たの?」
「YES。スーパーヒロインは、先ず息子を殴ったそうです。止めに入った父親の手足を縛った上でプールに放り込み、溺れるのを笑って見ていた」
駆けつけたヲタッキーズのエアリとマリレがプールから父親の死体を引き上げてる。
エアリは妖精、マリレはロケット兵装備で空を飛べるのだ。警官と鑑識が駆け寄る。
「娘は、ハロウィンの打合せで友人宅へ遊びに行ってました。友人の母親が送り届けた後で異変に気づき通報。本人は、未だ何も知りません」
「よかった…でも、誰かが父親の死を知らせないと」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部で捜査方針会議が開かれる。
「スーパーヒロインによる連続押し込み強盗は目下7件。万世橋の単独捜査分4件とジャドーとの合同捜査分が3件。なお、凶器となったスーパーパワーはサイキック系と思われるが、未だ特定出来ません」
「狙われたのは、いずれも室内に高級品を溢れさせてるセレブばかりね」
「セレブが帰宅し、防犯装置を解除した後でスーパーヒロインが押し込み、緊縛ヒロイン強盗に豹変…」
「え。ヒロイン緊縛?」
「バカ」
ホワイトボードにズラリ父親の写真が並ぶ。
「コレは?」
「いずれも家族を守ろうとして殺された父親達の写真です。襲われる家族の基準は不明。特に円満でも不仲でもない。最近流行りの"妻の犯行"とも思えない」
「敢えて共通点と言えば、セレブと言うだけです。また、被害者同士に共通点も特に見当たりません」
ソコに、ジャドー司令部から会議アプリでリモート出席中のルイナが発言スル。
ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"の脅威と闘う秘密防衛組織だ。
「"データマイニング"という情報分析手法を試してみるわ」
「あ。テロの予知に諜報部が使う方法ね?」
「アルゴリズムを組めば、データを抽出して関係を特定出来る」
「警察情報は全て渡すわ」
「被害者の住所、子供達の学校、バイト先、担当の宅配業者、プールの清掃員、よく行くホットドッグ屋、使ってる車の修理工場…うーんまだまだ足りないカモ」
「他の情報も必要?」
「アレばアルほど助かるわ。ココ半年間の秋葉原全域の犯罪データとか助かるけど」
「それじゃあ情報過多にならない?」
「いいえ逆ょ。情報は、多い方が共通点を見つけやすいの。例えば、ジグソーパズル。手元のピースはホンの1部。残りは箱の中。でも、パズルが完成すれば、箱の中は空になる。実社会の問題は、コレと似ているけど、厄介なのは他のパズルのピースも混ざっているコト。とにかく、1片1片、正確に取り出すには膨大な手間が要る。全部ひっくり返して1ピースを探す方が早い時もアル。ソコでアルゴリズムなの。適切なアルゴリズムさえ組めれば、後は必要なピースだけを勝手に拾ってくれる」
「ジャドーの全データも提供スルわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
データ提供を確約したのは、ジャドーの沈着冷静なレイカ最高司令官だ。
彼女は…ワケあってイカれたゲーセン店員のコスプレ。アラサーなのにw
「テリィたん。頼みがあるの。ルイナの複雑なデータ分析を手伝ってあげて欲しいの」
「2〜3時間なら。昼間はサラリーマンなんだ」
「ありがとう。ところで、ルイナ。今週のアキバ科学大学"ヲタクサロン"の特別講師が誰か知ってる?」
"ヲタクサロン"は、大学主催のカルチャースクールみたいなモノで毎月開催されてる。
「いいえ。でも、何で?私も科学大で"ヲタクサロン"の幹事だけど?」
「ランダム行列の漸近に関する講義らしいわ」
「おや?確かルイナが数学系の業績を上げた分野だね」
「特別講師は…」
「待って!アイツがなぜ司令部に?」
「あいつってドイツ?」←
手を挙げ挨拶するアイツ♀w
「ベニカ。彼女がその講師ょ。首相官邸からの要請で、ウチの司令部視察を許可した」
「げ。プリンストン大学の同級生なの。いつも私の研究を批判して、私主催の飲み会ではビール樽を隠して…ベニカ!」
「ルイナ?貴女、こんな穴蔵にお勤めしてるの?まさか、私の"ヲタクサロン"を聴講に秋葉原まで来たとか?」
「さっきまで貴女が秋葉原に来るコトも知らなかったわ。テーマは何?」
「昔と同じょ」
「そう。攻め方は?昔、私の解析を批判した時には大恥をかいたわょね?」
「…た、確かに。でも、この分野で研究を続ける内に面白い発見をしたの。貴女の研究の結果…ううんヤッパリ詳しいコトは明日、サロンで話すわ。ごめんなさい、貴女の発見した認識のルイナ収束だけど…間違いだったコトを証明スルわ」
目を向くルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ラギィ警部は被害者の妻を万世橋に呼んで事情聴取を行なっている。
「あぁ!この写真に写ってるモノは、昔からウチにあったモノばかりです。でも、こんなモノどうでも良い。夫は…息子を守ろうとしただけナンです」
「お気持ちはわかります」
「夫は、傷ついた人を放って置けず医者になったの。篤い人なのです」
「盗難物に心当たりは?犯人を探す手がかりになります」
「コレは、スチームパンクアーティストARPU作のランプで2つで1組です。夫からの贈り物で、1つは結婚式の時に。もう1つを何年もかけて、やっと見つけてくれました。私達と同様2つで1つだと」
妻は泣き崩れる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室のマジックミラーのコッチ側では…
「1000万円のスチームパンクのランプだとぉ?!そんなモノありかょ?」
「どこでも売れる品じゃないなw」
「こういったモノを専門に売買してる連中を調べよう。秋葉原の故買ならテリィたんに相談だ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ジャドーのラボでは激昂するルイナのコトをレイカ司令官が必死にナダめてるw
「私が史上最年少で首相官邸のアドバイザーになったからだわ。彼女は、プリンストン高等研究所で"ルイナ収束はインチキょ"って描いたバッチを胸につけてた」
「ソレはもぉ子供の喧嘩だけど…貴女はスターなの。注目を浴びやすい。貴女が眩しいから、誰もが貴女にケチをつけたがる」
「あの子は、私の名声を傷つけたいだけ。ルイナ収束は私の原点。ソレが間違いなら私の学者生命は絶たれる。あの子は、理論には優れてるけど、自我に問題があるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。
ラギィ警部と部下が佐久間橋架道橋の下"リトル広東"と呼ばれるコピー商品街を訪問。
萌えグッズのコピーを世界に売りつけるシンジケートの巣窟で代理人は通称"センム"。
「アンタが"センム"さん?テリィたんの紹介だけど」
「あぁアンタがラギィさんか。スチームパンク?よく覚えてないな。誰かの遺品か?」
「ウソね。はい、今すぐ手を後に」
「ま、待った!」
「ここで言わないなら署まで連行するわょ。衆人環視の柳原通りを通ってね」
「わ、わかった。あぁテリィと付き合うとロクなコトがねぇな」
「彼とは長いの?」
「ウチがブルセラでミユリのパンツを売ってた頃からだ」←
「そ、そうなの?で、スチームパンクなランプの入手先を歌って」
「2〜3ヶ月前紹介されたラリィと言う仲買人からだ。奴は、破産処理で手に入れたと言っていた」
「で、センムはソレがウソだと承知で買ったワケね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一転してルイナは上機嫌。
鼻歌を歌いながら、ジャドーラボのホワイトボードにカレンダーを貼って逝く。
エアリ&マリレに、変身したミユリさんを加えたヲタッキーズが遠巻きにスルw
「ミユリ姉様、ルイナが怖いンですけど」
「ホントね。解析が行き詰まって発狂したのかしら?レイカ司令官が働かせ過ぎなのょ。私達も注意しましょ」
「とりあえず、セキュリティを呼んできます…」
ココでルイナが満面の笑みで振り向く。
「あ、ミユリン(誰だょw)!カレンダーって、素晴らしい数学のツールょね。星の動きに基づいた世界共通の時刻表だわ」
「いったい何の話?」
「暦は簡単に割り切れない。だから、昔は360日を12ヶ月に分けてから星の動きと合わせるために8年に1度、13ヶ月にしたり、5日加えたりしてたの」
「イメクラ強盗の起きた日と関係があるのね?」
「YES。アルゴリズムを作ってデータマイニングをした後、犯行の日時をフーリエ解析にかけてみた」
「警視庁が調べたけど、犯行日時にパターンはなかったって」
「ソレは解析方法がマズいから…ねぇカレンダーにつけた赤印は、イメクラ強盗のあった日。青印は、犯行が予測されたけど、何もなかった日ょ。でも、ホントに秋葉原には何もなかったのかしら」
「現にイメクラ強盗の被害は出てないわ」
「でも、同じスーパーヒロインが、別の犯罪を犯していたら?」
「押し込み強盗じゃなくて?」
「YES」
「で、ソコから証拠が見つかると?」
「とりあえず、他にスーパーパワー系の事件が起きてないか、調べてくれない?」
ミユリさん…じゃなかった、彼女が変身したムーンライトセレナーダーが尋ねる。
あ、ムーンライトセレナーダーは黒のセパレートでヘソ出し。アラサーなんだがw
「ねぇルイナ。ついでに、次の犯行がいつか予測出来ないかしら、とか逝ってみるテスト」
「こーゆーデータは、パターンは出せても予測には不向きなの。周期が不規則過ぎるのょ。2日おきの時もあれば1日おきの時もアル。1日2件の時もアルし」
「ルイナの推測で良いンだけどなー」
「私の推測では、次にイメクラ強盗が起きるのは3日後ね」
ヲタッキーズから一斉に溜息が漏れる。
第2章 パンカーじゃなくてパンクス
直ちに、ルイナのカレンダーは万世橋に持ち込まれ、急遽、捜査本部会議が招集される。
「青印の日にスーパーパワーが用いられたと思われる"痛車強盗"が3件も起きてました!街頭の防犯カメラ画像を見る限り犯人は3人。いずれも、アメコミ体型でグラマラス。スチームパンクなシルクハットを着用」
「イメクラ強盗に間違いナイわ!狙いは宝石や高級家具だけじゃなかったのね」
「確かに。ただ、何れもスゴい高級車を痛車化したモノばかりです。どんだけブランド好きナンだょw」
「ソレで盗難車は?」
「塗り替えたか、秋葉原の外で売られたようです」
「盗難車の売り捌きルート完備の強盗ね」
「ソレから、押し込み強盗の時は発砲しない彼女達が、痛車強盗の時には悪魔祓い用のコルトを宙に向けて1発撃ってます」
「ナンと!破魔用の銀の弾丸ね!ソレが見つかれば有力な手がかりになるわ!」
「銀の弾丸を見つけましょう。事件当時、周辺を捜索した担当の警官、鑑識を当たります」
「何を眠たいコト言ってンの!」
そう叫ぶや、ラギィ警部は会議室を飛び出して、万世橋警察署に響く大声を張り上げる。
「イメクラ強盗が逃走してヲタクの命が危ないの!みんな!力を貸して!」
その瞬間、全制服警官はモチロン、非番やコックまでが仕事をピタリとヤメ我先に集合w
「今から、全員で悪魔祓いに使われた銀の弾丸を探します!有力なイメクラ強盗団の手がかりよっ!…ソレから、ランプの方も追わなきゃ。センムが歌ったスチームパンカーの…」
集まった雑多な署員の中から声が飛ぶ。
「失礼、警部!パンクを愛する者はパンカーではなくパンクスです!」
「了解。センムが歌ったスチームパンクスの仲介役の名前は…えっと誰だっけ?」
「ラリィですょ警部」
「ソッチは…私が調べるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻、カレンダーを警察に提出し、ラボで一息ついてるルイナをレイカ司令官が訪問。
「今、良いかしら」
「YES。データマイニングの結果を待っているトコロょ。見て」
「アリの巣?」
ルイナは、アリの巣観察キットを眺めてる。
「創発説ょ。主体は、部分の総和に勝る。蟻一匹は非力だけど、蟻の巣全体は複雑な生命体と看做せるの…地球も同じだけど、蟻の話は関係ないわょね」
「万世橋の制服組が困ってる。彼等は、銀の銃弾を探してるの。カレンダーの青印の次の日に、痛車強盗したスーパーヒロインが発砲したけど弾丸が見つからない。銀の弾丸が出れば、有力な手がかりにナルそうょ」
「了解。で、銀の弾丸の発射角度は?」
「宙に向けて撃ったけど角度は不明」
「銃の種類は?」
「コルト」
突如ルイナは黒板に数式を描き殴り始める。
「つまり、変数は少なくとも2つってコトね?拳銃の弾丸速度は限られてるわ。上に向けて撃ったの?じゃ落ちた範囲は…半径600〜900mだわ。不確定要素が多いけど、参考にはなるハズ…あ。紹介すすわ、彼女はベニカ博士」
フト気づくとジャドー司令部の視察を終えたベニカがラボのドアにモタれて立っている。
「急にゴメンね、ルイナ。懐かしいリズムでチョークの音が聞こえて来たから…ねぇ私の講義に出るわょね?ランダム行列について意見を聞きたいの」
「私は今、直交対称数列を研究しているのょ」
「ホントに?どっちも同じモノだわ。量子カオス系共鳴でしょ?」
「ソンな単純な話じゃないし」
「マクロな視野から反論されると、直ぐムキになる…相変わらず短気ね。私がテリィたんと話をしたら…」
「貴女がテリィたんと話を?」
「昨夜、食事にお誘いして、遅くまで話をしたわ。構わないわょね?」
「勝手にして。テリィたんは、ミユリ姉様のTOだから、誘惑したって無駄ょ。貴女が…いくら"引きずり込み"系だって。私だって"締め付け"クィーンなのだから!」
「テリィたんとソンな話をするハズ無いでしょ?バカ」
いつも冷静なレイカ司令官が泡を喰ってるw
「い、今のは"名器論争"…なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、捜査本部には続々と情報が集まる。
「痛車強盗の3人目の被害者も、最初から狙われていました。上着で隠してた高級時計を奪われてる。2人目は時価500万円の指輪も盗まれてます」
「狙った痛車を尾行してる?」
「いいえ。1人目は、キーを車内に忘れてロードサービスに電話。10分後イメクラ強盗が現れてます。2人目は、道に迷って携帯のカーナビに目的地を入力。3人目は、ガス欠でサービス会社に電話。燃料を頼んだら、持ってきたのがイメクラ強盗」
「ターゲットのケータイを盗聴してるのかしら」
「うーんケータイの契約先はそれぞれ異なりますが…」
「ソレに、ソレでは予め指輪や高級時計を持ってたコトを知ってる理由になりません。何処で情報を拾ったのかな?」
「何か共通するモノがあるハズょ探して!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田練塀町。
地下アイドル通り、そのまた裏通りの路面が細かくロープで仕切られ銀の弾丸を捜索中w
「おい!入力を間違えると昔のやり方に逆戻りだ」
「ジャドーのパツキン姐さんが、俺達のグラフ電卓に弾道方程式を組み込んでくれた。起点はわかってるから、方程式で捜索範囲が絞れるぞ」
「変数の入力さえ間違えなければな」
動員された万世橋の制服警官は仕事熱心だ。
「大丈夫。変数は、弾丸速度と撃った時の銃の角度だけだ。前に入力したコトがアル。任せろ」
「ホントか?」
「お前こそ、警察学校で習ってナイのか?」
ソコへラギィ警部が顔を出す。
「御苦労様!私はラリィを捕まえるわ」
「仲介役ですね?しかし、どーやって?」
「罠を仕掛ける。囮捜査ょ。女の武器で体当たり!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"潜り酒場"は、御屋敷のバックヤードだが改装で居心地が良くなり常連の溜まり場にw
「テリィ様。また御栄転ですか?」
「うん。転勤はサラリーマンの宿命だからね」
「やっと原子力発電所の単身赴任から戻られたばかりなのに」
あ、僕の勤務先は"第3新東京電力"だw
カウンターの中のミユリさんは不安そう←
「ホントに宇宙のお仕事に就かれるのですね。星空の中のお仕事」
「宇宙発電衛星は子供の頃からの夢だ。誰にも指図されズに宇宙で好きな仕事に打ち込めルンだ」
「リスクもあります」
「ビジネスだからね。人生も同じ。役人には出来ない仕事さ。お袋が介護になった時、引退スルしかなかったけど、今の僕には選択の自由がアル」
「わかりました…良かったですね」
「ミユリさんの内助の功のお陰さ。あれ?ルイナ?大丈夫か?イメクラ強盗の捜査、順調ナンだろ?なんだか…落ち込んでるみたいだけど。どうした?」
ソコへ"潜り酒場"の流儀に従いメイド服で御帰宅したルイナは思い切り落ち込んでるw
喜怒哀楽が激し過ぎるょw
切替スイッチでもアルの?
「私の5年越しの研究をベニカは潰す気だわ。気づいてみたら、私ったら、新しい研究もせズに秋葉原のために時間を浪費している」
「おいおい。無駄にはなってないぜ」
「モチロン無駄にはなってないわ。そーなの。私って気が多いだけなのかな」
ミユリさんの前で意味不な流し目ヤメろょ←
「好奇心が強いだけだろ(愛じゃナイぞw)」
「もっと専念しなきゃ!数学の分野でも意義あるコトをしたい。もっと学問のためになるコトをしたいの!」
「ソレって…その時その時で心から大切だと思えるコトに取り組めば良いンじゃナイ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィが太ももホルダーに拳銃を仕込む。
地下の駐車場に黒いセダンが入ってくる。
「センムの紹介か?」
「YES。アンタ達、いつも最高の商品を仕入れるそうね」
「ラリィだ。遅くに呼び出してすまない」
「ううん。慣れてるわ」
駐車場の奥にある扉のロックを開けて、シャッターを上げたら…中はお宝グッズの山だw
「まぁ全部盗品だがなwさて、取引と行こう。金は持って来たか?」
「ソレが持ち合わせてナイのょ。でも、もっと役に立つ人達を連れて来たから」
「万世橋警察署!動くな!膝をつけ!手は頭に!」
拳銃を構えた警官がドッと飛び出して来る。
ラギィが盗品の山からスタンドを取り出す。
「まぁ!スチームパンクのランプ?こーゆーの欲しかったのょ。何処で仕入れたのかしら?」
「弁護士に聞いてくれ。コレから俺をどーするつもりだ?」
「ソコのランプを擦って占えば?」
第3章 闇に堕ちたスーパーヒロイン
早速ラリィを連行して捜査本部で取調べる。
「コレは倉庫にあったモノのリスト。コッチはイメクラ強盗に盗まれたモノのリスト。あらぁ?貴方の倉庫に全部アルわぁ!何でかしら?」←
「関係ねぇ」
「アンタ、盗品を溜め込んでたのょ?」
「だが、俺は盗みはしない。売りたい奴に買い手を探して仲介スルだけだ」
「過去を詮索しない客に?」
「YES。全員が未来指向だ。だから、俺の仕事は高級品を欲しがる奴を探すだけ。盗みも人殺しもナシ」
「じゃ誰から盗品を仕入れるの?」
「ソレが…いつもイカれた格好してる2人組のヲタクだ」
「イカれた格好?」
「ヤタラ歯車のついたレトロな服」
「ソレ、スチームパンクでしょ?で、知り合ったきっかけは?」
「話しかけられたんだ。秘密結社バーで。俺の評判を聞いたって」
「怪しいとは思わなかったの?」
「え。思ったに決まってるだろ?」
「…続けて。ふたりの名前は?」
「赤と白。そう聞いた」
「そりゃおめでたいけど…ふーんソンな感じなの?アンタ、大したコト無いのね」
ラギィが立ち上がって、取調室から出る素振りを見せると、慌ててラリィが引き止める。
「ちょ、ちょっと待った!ソレがさ。アイツら強盗らしくないんだょ。ヲタクなクセしてビジネスマンでさ」
「ビジネスマン?」
「予め商品リストを先に寄越すンだ。そうすれば、先に買い手を探しておけるだろって。何週間も先に仕入れる予定の商品リストをくれる。コレが大助かりでさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室を出たラギィ警部は、部下達と話す。
「ラリィの言う2人組のスチームパンクスは、イメクラ強盗犯とは別人ですね。アメコミ体型のグラマラスとは無縁です」
「そもそも男だしwスーパーヒロインの強盗団は実行部隊で、あの2人組は別ね」
「すると、イメクラ強盗団は全員で5名、男2人が計画を立て、スーパーヒロイン3人が実行スル?」
「ソレにケータイも絡んでそうです」
「…データマイニングの方は、どーなってるの?」
「ジャドーのパツキン姐さんが、抽出した共通点から重要なデータを探してますが…未だ目が粗くて、さっきアルゴリズムを回したら、容疑者リストに警視総監の名が上がったとか慌ててましたw」
「条件さえ合えば全部拾うからねw次の犯行は…ルイナの予測だと3日後だったっけ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、神田練塀町の現場では路面に升目を切り金属探知機にスコップ片手の捜索が続く。
「2つ目の変数は、銀の弾丸の速度。9ミリで計算したが、もっと重い弾だったら?」
「弾丸の速度は、弾丸の重さで変わる。重いほど遅くなる」
「そうだ!そもそも、手っ取り早く仕事が済むように銃を選ぶなら…お前なら何を使う?」
「銃撃効果が高いのなら、弾は45 ACP 火薬量180グレイン。弾丸速度は秒速1200フィートだな」
「ソレだょソレ。犯人の気持ちになってデータを入力をしてくれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、神田練塀町を遥か見下ろす高層ビルの中にあるアキバ科学大学では、恒例の"ヲタクサロン"でベニカ博士の講演が始まる。
「どんな表現論の展開も、通常2段階に分けられます。即ち、第1段階は、全ての論理の基本について説明し、第2段階は、当然の帰結として、対象となる群を最小限の要素に分解します。実は"ルイナ収束"を掘り下げてみたトコロ、今まで見逃されていた、些細な問題点を発見しました。例えるなら、コレは、方程式の中を流れる小さな血栓です。そして、ココ」
ホワイトボードの1群の方程式を指す博士。
「無限次元単体における結果により"ルイナ収束"の理論全体が脳卒中を起こしているコトがわかります」
リモートで講演を聞いてたルイナは渋い顔。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。眼下に広がる神田練塀町の一角。
「うーん待った。ヤッパリ俺なら38口径リボルバーか357マグナムだな…うーん悩んじゃう」←
「相手は荒っぽいチンピラだぞ。今や大金も手にしてる」
「わかった!ヤッパリ40口径かHK45口径だ」
「弾丸速度の議論も大事だが、真上に撃ってたら関係ない。弾は半径150メートル内のこの付近で落ちる。問題は、真上に撃った可能性があるかどーかの検証だ」
「ナルホド。大いにアリ得るが、今頃ソンなコトを言い出す意味は?」
「ソレは…銀の弾丸を見つけたからさ」
弾を手にニッコリ微笑むのは非番のコック。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに同時刻"ヲタクサロン"の終了後。
ルイナは無惨にドップリ落ち込んでいるw
「うーん残念だけど1次元格子におけるベニカ博士の意見はもっともだょルイナ」
「あぁベニカは…私の頭の中の血栓ょ!あ、機関室に命中した魚雷だっけ?」
「ひとまずココはジャドーのラボに戻って、色々整理した方が…」
慰める同僚もいたが、時既にお鮨…いや遅しw
「ルイナ!軽く食事にでも行かない?テリィたんに聞いたけど、貴女ってレモンメレンゲパイの依存症ナンだって?一緒に食べナイ?大勢集まるようだけど」
「パスだわ、ベニカ」
「アラ、何で?」
「イメクラ強盗捜査の突破口も、私の学者生命を賭けた研究も…潰されたから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は慌てて会議アプリからチャットに移行w
テ:ルイナ、仕事が多過ぎルンだょ
ル:テリィたんは、ベニカとツルんでばかり
テ:発想が面白いだけだ。それだけ。ルイナは、イメクラ強盗に首相官邸アドバイザー、ソレに大学の講義研究までこなしてる
ル:テリィたんだって、ヲタクでミユリ姉様のTOで…今度、宇宙発電所の所長さんになった
テ:ソレ your eyes only だから。しかし、良く知ってるな。さすが首相官邸アドバイザーだ
ル:機密保持レベルはジャドーのレイカ司令官より高いわ
ヘ:僕は…自分の好きなコトに専念してる。人付き合いも、その延長線上に限ってる。ホントにレモンメレンゲパイ、食べに逝かナイか?
ル:テリィたんは行って。私は…少し考えるコトがアル
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とのチャットを閉じたルイナに、今度は当のレイカ司令官がリアルで声をかけて来るw
「ねぇ!自分のケータイの中身ってわかる?」
「私?未読メールでいっぱいです、司令官」
「ケータイ経由の個人情報流出に歯止めがかからナイわ。全て太平洋の向こう岸で3.11テロが起きて以来ょね」
「GPS搭載ケータイの所持は、今や国民的義務です」
「YES。緊急時には10メートルの範囲で個人の居場所が特定出来るわ」
「でも…個人情報は機密扱いナンでしょ?ソレとも、イメクラ強盗は暗号データを傍受する方法でも見つけたのかしら?しかし…相手は軍事衛星ですょ?」
「ウチの早期警戒衛星の"シドレ"だって似たようなモノだし…ちょっと違うかなw」
"シドレ"は、アキバ上空3万6000kmの静止軌道にいる量子コンピューター衛星。
この"シドレ"が"リアルの裂け目"を確認するとジャドー全ステーションに急報。
「イメクラ強盗も、何らかの方法でGPS情報を入手し傍受してルンじゃナイかしら」
「ソレにしたって、被害者の所持品までは特定出来ないでしょ」
「問題は、金目の品を絞って、その持ち主の居場所を特定するアルゴリズムですね」
「いずれにせよ、居場所を突き止める鍵はケータイだわ。第1の問題の答えはわからない。でも、被害者には必ず共通点があるハズょ」
「ソレを見つけなきゃ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
とゆーワケで、御屋敷に御帰宅したら…ルイナがカウンターで何やらゴソゴソやってるw
「あれ?僕の社給ケータイ?…おい!何してるンだ?!」
「あーんゴメン、テリィたん。直ぐ組み立て直すから」
「ルイナ。分解スルなら自分のケータイにしなょ。ソレは会社の…」
「テリィたんは、ケータイ持ってないの?」
「こんなガジェットに人生の静寂を乱されたくない主義だ」
カウンターの中でミユリさんが笑ってる。
「ソンなコト逝って、イザと逝う時は私のを使うのょクスクス」
「テリィたん!1時間で返すから。GPSを調べてるの」
「何で?」
「ケータイには、居場所を特定するGPSチップが埋め込まれてる。イメクラ強盗は、この機能を利用して被害者を追跡しているの」
「どうやって?」
「ケータイって無線機ょ。電源が入っている間、常に基地局へ信号を送ってる。同時にGPSチップが、宇宙からの電波を受信してる。電波は、最低3基の衛星から送られて来る。そして、三角測量でGPSチップを搭載したケータイの正確な位置を特定スル。その情報は、緊急時に警察や消防の救援活動に使われるの」
「あと、推しがTOの居場所を把握するのにもねクスクス」
僕は、溜息をつくしか無い。
「ケータイは嫌だね。昭和なダイヤル式が1番だな」
「しかし、GPS信号の傍受なんて、かなり高度なテクょね」
「ミユリ姉様、テリィたん。相手はスーパーヒロインょ。ソレに、どんなシステムだって必ず穴はアルの」
第4章 アキバキラー vs ヲタッキーズ
またしても殺人現場だ。
今度は介護付きホーム。
「予想通り3日目です。74歳と77歳の老夫婦。抵抗した夫から殺されました」
「夫を殴殺した後、妻の方は絞殺です。大した手間はなかったでしょう。スーパーパワーを使った形跡スラ無い」
「犯行の間隔が狭まり、頻繁になって殺害も躊躇なく行われるようになってるわw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋の鑑識で懸命の作業が続く。
「神田練塀町で見つけた銀の弾丸、お願いだから痛車強盗の銃弾と一致して!」
「大丈夫。あの辺に銀の弾丸なんて、そーそー落ちてるモンじゃナイ」
「確かにナイフの方がよく使われる界隈だ」
「とにかく!目下、桜田門の銃弾データベースと照合中。せめて、過去の犯罪で使われていれば何かがヒットするハズ」
「どんな手がかりでも欲しい。8回も強盗したのに手がかりスラない…」
「ビンゴ!」
万世橋の建物全体がドヨメくw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き"潜り酒場"で僕と、メイド服を着たミユリさんとルイナ。
「イメクラ強盗がまた2人殺したって?」
「最悪だな。ルイナのデータマイニングでも成果がないンだろう?」
「第1の共通点は、ケータイだけど今時ソンなの誰でも持ってるw第2の共通点も、決め手になるかどうか。ただ、アルゴリズムによると、被害者の共通点は、みんな珍しい収集品を持ち、ソレに多額の保険をかけてるってコトなの」
「ナルホド。そのアルゴリズム、ベニカにも見せようか?」
「その必要はナイわ。ソレに彼女は…テリィたんと忙しいでしょ?」
「え。テリィ様もベニカ推しなのですか?あぁ昔から頭が良さげな委員長タイプがお好きだから…」
「ま、待ってょミユリさん!ホラ、あの"ルイナ収束"だっけ?アレに関する彼女の分析は、的を得てるって話だょ?」
「テリィたんまで!ヒドい…でも、認めるわ。ベニカには洞察力がある。でも、あの自信過剰な態度が許せないの。"私は計算を無限次元ユニタリ群に延長した。結論は、明らか。死後は、私の天才的な頭脳をスミソニアン博物館に寄贈しようかしら…"何ょバッカじゃナイの?」
と、ソコへ…
「私は、アインシュタインの脳みたいに誰かに盗まれて、ノンビリ長旅を楽しみたいわ」
ギョッとしてルイナが振り向くと"潜り酒場"の入口ドアにベニカがモタれて立ってるw
しかも…御屋敷の流儀に従って、律儀にメイド姿ナンだが…水色セーラー風のメイド服w
委員長タイプの最高峰、セーラー水星だっ!
「非常に興味深いわ。私の専門分野ょ。集合論…あ、あら?テリィたん、どーしたの?鼻血?」
「え?あ、いや。ソンな!余りにどストライクで…ってかベニカの専門って(まさか委員長系コスプレw)?」
「(違うでしょw)私の新しい研究は集合論なの。"深海流集合論"ょ」
「そのアクアな内容は?」
「群同士で関連性が見えなくても他の集合に影響を及ぼす因子の研究。深層海流が天候パターンに影響を与えているコトにヒントを得たの」
(中華なメイド服の)ルイナが食いつく。
「表面に出ない因子?関連ナイように見えて実は存在スル共通因子!で、その共通因子を探し出す方法は確立したの?」
「YES。もちろんょ。海流の位置が不明でも探し方はわかるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…ソレが加入している保険会社は全部違うのょレイカ」
「でもね、ラギィ。ウチのデータマイニングによれば、被害者同士に強力なつながりが確認出来たの。深海流集合と同じで表面に出ない共通因子が存在スルのょ」
「つまり…重要なつながりがアルってコトね?」
万世橋のラギィ警部とジャドーのレイカ司令官が最新データを持ち寄りリモート会議中。
「被害者は、全員高額品を所持してた。先日のスチームパンクのランプみたいに」
「犯人は、スチームパンクのランプがアルのを予め知っていた」
「保険会社は違っても、ソコに被害者同士の共通点がアルのょ!」
「どんな?」
「ホラ。保険会社って高額品を扱う時、他の保険会社による保険特約をつけるでしょ?」
「確かにつけるわ。再保険ょね?被害者は、ソンなコトは知らないから、大抵の盗難届からは漏れてる…そっか!共通項は再保険でかける保険特約だわ」
「ビンゴ」
「同じ保険会社の保険特約があるか調べてみるね!ありがと!」
署内でアチコチ号令をかけるラギィの声。
「イメクラ強盗は、その保険会社の顧客情報を入手しケータイ傍受も出来る奴だわ!犯罪歴のあるケータイ会社の従業員を…」
「はい!警部、リストです!」
「え。早い…わね」
万世橋警察署は、今夜も眠らないw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「警部!最初の3件を見ただけで割れました!BTL保険です。早速、従業員リストを入手します」
「…ビンゴ!両方のリストに載ってる者が1人います」
「待って!探すのは赤と白の2人組ょ。恐らく1人はケータイ担当。もう1人は保険に詳しい」
「了解!コレが万世橋流のデータマイニングって奴ですね!」
「結局、昔と変わらねぇ。手作業の運任せだ」
捜査本部がドッと沸く。
「見つけました!バーテックス通信のキリテ。2年前に盗んだケータイを売り、蔵前橋の重刑務所に3ヶ月服役」
「保険会社とは?」
「同時期にメナドと言う男が飲酒運転で週末だけ服役してます。BTL保険の管理職!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コンビニを出て有料でゲットしたビニール袋からオニギリを取り出したら…拳銃を構えた制服警官隊に取り囲まれ大声で威嚇されるw
「万世橋警察署!膝をつけ!動くな!」
オニギリをくわえたママでホールドアップw
「キリテ!イメクラ強盗の殺人容疑で逮捕する!お前には弁護士を呼ぶ権利が…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通りに面した路面店の御屋敷。
窓の外を走る完全武装の制服警官隊。
ドアを蹴り開けて雪崩れ込んで来るw
「おかえりなさいませ!おまわり様!」
「万世橋警察署!膝をつけ!早く!手は頭の後ろだ!」
「待ってくれ!逮捕の前に最後の"萌え萌えニャン"を…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
先ず赤。通信会社のキリテ。
「イメクラ強盗は、お前が計画を立て、実行犯のスーパーヒロインに指示して、家や車を襲わせてた。つまり、お前が主犯だ」
「スーパーヒロイン?リアルでも女に飢えてるのに、スーパーパワーを持つガールフレンドなんかいるハズねぇ」
「ウォル・ディナ通称"アキバキラー"。地下アイドル通り界隈を仕切ってる異次元人ギャングの女ボスだ」
捜査官がデスクにスーパーヒロインの手配写真を広げる。黒のハイレグレオタードだょw
アー写みたいなポージング←
「こんな女、見たコトもない」
「アルだろ?この先どーする?次にお前と会ったら、ディナはどう出るかな?お前の家族は?お前が服役したら、お前の家族は誰が守ルンだ?」
「だ、誰も傷つけないハズが…あの女達が勝手に…俺は、GPS信号の傍受を担当しただけナンだょおまわりさん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
次に白。保険会社のメナド。
「悪いスーパーヒロインとつるンでるな、メナド。どんなアプリで出会ったンだ?ソレにキリテ。週末に服役した時じゃ仲良くなれンだろ?」
「キリテって誰だ?私が何か罪を犯した証拠は?」
「組んだスーパーヒロインが暴走したンだょな?お前はツイてなかった。盗みが目的だったのに、ヒロイン連中が勝手に殺害を始めてしまったンだ」
メナドは深呼吸し…ガックリこうべを垂れる。
「警察はソコまで…わかりました。私がターゲットを選び、キリテにケータイを傍受させた。ディナは…いいえ、アキバキラーの連中は、ハナから私の強盗予定を無視して、全て前倒しで進めたがってた。高級車を異次元人のルートで売りさばき、裏の世界で名を上げたいと焦ってた」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部にヲタッキーズも集まる。
「あ、ムーンライトセレナーダー。例の銀の弾丸が2年前の悪魔祓い現場に落ちてた弾丸と一致しました。当時、現場で目撃されたのがディナです」
「どうやってケータイでターゲットの居場所を特定してたのかしら」
「"ノード"に"探知機"を仕掛ルンです。"ノード"は、基地局でケータイの電波を中継して通話を可能にする装置です。"探知機"は、電子装置の探知機で特定の通話を検知します。実行犯のアキバキラーは、その信号をキルテから受け取ったケータイでキャッチしてました」
「キリテなら細工が出来るのね?」
「YES。通信会社勤務なら、簡単に基地局へスニッファを仕掛けられます。必要工具なら電器店に一式あるし」
「メナドがキルテにターゲットのケータイ番号を教え、キルテは"探知機"にケータイ番号を入力。信号が入ると雇われスーパーヒロインの実行犯アキバキラーに渡したケータイに位置が伝わり、後はアキバキラーがターゲットを尾行して家に押し入る、というシーケンス」
「2年前から桜田門がアキバキラーを追ってたのは知ってたけど…まさか秋葉原にいたとはw」
ラギィ警部が悔しそうに歯ぎしりして総括。
「メナドとキルテがアキバキラーにセレブのケータイ番号を教えてたワケね。計画したのは、スーパーヒロインじゃなくてヲタクの方だったw」
「アルゴリズムから次のターゲットの目星はついてる。どーする?ムーンライトセレナーダー」
「アキバキラーが見つからないんじゃ、先回りしてターゲットのヲタク…じゃなかった、お宅で待たせてもらいましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
狭いワゴン車の中で、悪に堕ちた3人のスーパーヒロインが息を殺してケータイを見てる。
「さぁ今回もコイツが次のセレブまで案内してくれるわ」
「あ。今、通過した車ょ」
「良い車ねぇ。しかし、セレブの家族は驚くだろうな」
スチームパンクなシルクハットに黒のミニスカ、レオタード、ホットパンツの3人組だw
「行くよっ!お前は女を」
「車から出ろ!早く」
「何?お前は…」
車を停めたホットパンツが蹴り倒され、駆け寄るミニスカの首に空から首4の字がキマるw
「アンタ達アキバキラーは、私達ヲタッキーズが相手ょ!」
「おっと、貴女の相手は私だから、ディナ」
「お前は?ムーンライトセレナーダーw」
ターゲットの車から降り立ったのは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿、その名はムーンライトセレナーダーだ!
「おっとオカシなマネはナシょ。私の"雷キネシス"で黒焦げになりたい?」
「銃を捨てて!捨てなさい!」
「アキバキラー、おとなしく膝をつけ!」
既に周囲を万世橋警察署の警官隊、対スーパーヒロイン装備のジャドー特殊部隊が包囲。
「ギブアップ!私、負けましたわ(回文)」
「動くな。手を後ろに」
「さぁ立て!」
アキバキラー全員逮捕。
車に手をつき立たせる。
「あら?」
「何ょコレ?」
「静かに!ウチの子は寝てるのょ?」
ターゲットの車内に転がっているのは、水色セーラー戦士のドールで…激レア委員長ver.←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜遅く。今回の関係者全員が御屋敷の流儀に従いメイド服で"潜り酒場"に集まる。
「ヲタクのメナドとキルテは、アキバキラーのTOだったンですって!」
「まぁ!推しにイメクラ強盗させるTOって最低だわ!」
「何を考えてるの?最近のヲタクは」
「ところで、ベニカ。貴女の"深海流集合"のおかげょイメクラ強盗アキバキラーが3人とも捕まったのはね」
「ホント?ソレは良かったわ」
「警察としても協力に感謝するわ」
「あのぉソレから…別に私はルイナの理論だから分析したワケじゃないの。ルイナ収束が素晴らしい数学だからょ。貴女の発想は常に優れてるけど…コレは特に魅了されたわ」
「私も認めるわ、ベニカ。貴女には、優れた洞察力がアル」
「ソレは…ありがとう」
「で、私も貴女の分析を見直してみたの」
「その上から目線は…」
「結果、貴女が指摘したルイナ収束の問題点を解決スル方法を見つけたの。コレょ」
紙ナプキンに方程式を描き殴るルイナ。
「つまり…問題の箇所自体が不要なの」
「さすがルイナね」
「違うわ。貴女のおかげで気づいたの。だから、名前は"ベニカ変動"ょ」
「素敵…自分が恥ずかしいわ」
ココで、チャイナメイドと和ロリメイドが握手したンだが、このふたりが後に"脳の数字"と呼ばれる高次認知神経回路の統一理論でノーベル賞をとるのは…
また別の話だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私が求めてたモノは
ほんの束の間の甘い気晴らし
私がして来たコトは
何も意図してなかったのに
おかしいわ
いつだって秋葉原につながって逝く
目に見えなくてもつながるの
そうょ私達は似た者同士
ヲタクになるの
私達はいつだって最高のヲタク
過去のリアルを全て消し去る
恋以上のコトをいっぱいしましょ
リアルを敵に回して怖くない
待っててね
私は私にウソをつく
あなたへの愛はみんなリアルなの
だから私を離しちゃダメょ
さぁふたりで廃人になりましょう
だから、しっかり私を抱いて
さぁ翔ぶわょ
ふたりは最高の廃人になるの
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"悪に堕ちたヒロイン"を軸にスーパーヒロインによる強盗団、ソレを操る悪のトップヲタク達、盗品を売り捌くシンジケートに故買屋やその周辺、強盗団を追うアキバポリスの熱血署員達などが登場しました。
さらに、悪に堕ちたスーパーヒロインの存在や万世橋警察署の熱血な署員達の活躍などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第4次コロナ宣言が明け、人が戻りつつある秋葉原に当てはめて、展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。