97話 報告と共闘
お読み下さりありがとうございます!!
「という訳だ」
「何がと言う訳なんだ。マーカスに実況させながら、聞いてるといきなり戦闘になるし、4強に向かってもらおうか考えておったのに、全く」
アリステラが消え去った後、俺達は王城へと足を運ぶと、急いで王の間へと通れた。
アリステラとの密談の内容を話し終えると、デノンハウザーは疲れた声で話し出す。
ちなみにマーカスとはデノンハウザーの側近で《観測》のスキルを持っている。
《観測》というのは、設定した座標の現在から10日間までの出来事を詳しく視る事が出来るというものだ。
「それにしても、魔王と共闘とはのう。するにしても公には絶対に出来ん。しかし、こちらとしても魔族側の情報が手に入るのは大きい。実際に会ってみてどうだった?」
デノンハウザーにそう聞かれた俺はありのままを話す。
「ステータス的にも、多分あの場で俺達を殺す事も自身の眷属にする事も出来た。それほどまでに強かった。でもアリステラはそれをせずに話し合いを選んだ。急襲してきたピエロ達との戦闘にも協力してくれた。共闘するのはさておき、敵にするのだけは避けたい」
俺の言葉を聞き、デノンハウザーはしばし考え込む。
「わかった。共闘するにしてもいきなり魔神に挑みはしないだろう。ひとまず手を組み、魔族側の情報を得るのが人類にとっての利益と儂はみた。他の王達もよいかの?」
なんとデノンハウザーはアリステラとの共闘に賛成したのだ。
ここまで散々魔族に良いようにされて、恨みや憎しみなどあっただろうに、誰よりも人類の事を考えている王だからこそ、感情を殺したのだ。
デノンハウザーの覚悟が伝わったのか、他の王達から反対の声はあがらなかった。
「英雄達に頼むばかりで情けないが、魔王アリステラとの共闘、受けてはくれぬか?」
その想いが伝わってしまった俺に断れるわけない。
「わかったよ。ひとまず、共闘することに関しては了承しておく。魔族側の情報もしっかり聞き出してくる。もし人類に手を出したら許さないとは言ってあるけど、万が一の事があるかもしれない」
「無論、魔族と共闘すると言った時から覚悟は決めておる。その時は儂が命を賭けて民を守る」
全く、何とも頼もしい王様だよ。
その後、一通り話し込んで俺達は王城を出た。
「王の間で俺以外全く喋らないけど何でだ?」
俺は祝宴の買い出しの最中に気になった事を言ってみた。
「バカお前!普通俺みたいな一般人は王様にすら会えないんだぞ!あの場所に居るだけでも緊張してんのに、話せるか!」
「そうですよー!私も心臓バクバクです。今度からギマンさん1人でお願いしたいです」
「私も似たようなものだな。ティターニア様と話せるのは私達耳長族の中だと側近だけだったから、急にあんな所連れていかされても話すことなど出来ん」
「右に同じです」
カイル、リーシャちゃん、カオリ、アザミの順に答えてくれた。
「なるほどなー。あの王達、意外と尊敬されてたんだな」
俺が軽く言うと、「当たり前だ!」と怒られた。
だって俺、転移者だし...と心の中で言い訳した。
祝宴の買い出しも済まし、俺達は豪邸へと帰り着く。
「あら、遅かったわね。それにしても、この家のハーブティー美味しいわ。ヘクター貴方もそう思うでしょ?」
「もちろんですアリステラ様」
扉を開けて、リビングに着くと、椅子に座り勝手に家のハーブティーを飲むアリステラと、執事姿で主の隣に姿勢よく立っているヘクターが居た。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」とアザミ以外は叫ぶ。
「な、なんでお前がここに居るんだよ!? 帰ったんじゃないのかよ!」
「お前だなんて寂しいわ。アリステラって呼んでくれると言ったのに...シクシク」
俺の言葉にアリステラはわかりやすい嘘泣きを始める。
「シノノメ様、アリステラ様を悲しませる事は許しませんよ」
全くの嘘泣きなのに、ヘクターが臨戦態勢を取り出す。
「ウフフ、冗談よ。ヘクター、矛を収めなさい。去った時に次に会う約束をしてなかったから、めんどくさいし、ヘクターに聞いて直接来ちゃったわ。これからお世話になるけどよろしくね?」
アリステラの言葉にヘクターは矛を収める。
確かに次に会う約束をしていなかったが、まさか家に魔王が来るなんて思わないだろ普通。
「も、もし!よろしければ!お、俺の部屋で一緒に寝ませんか!?」
「あらホント?嬉しいわね。じゃあお邪魔させてもらおうかしら」
「アリステラ様と一緒に寝るなど許されない行為です。アリステラ様、この髭面の抹殺許可をください」
カイルがいきなりバカな事を言い始め、アリステラが了承すると、ヘクターがカイルの前に立ち、再び臨戦態勢になる。
はぁーめんどくさい事になった。
俺はその光景を見ながらため息を吐いた。
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