92話 土人形と糸魔法
お読み下さりありがとうございます!
「ビックサプライズ!よく出来てるでしょ?その土人形!私手先が器用なもので、本物そっくりに作れるんですよ!どうですか!?驚いてくれましたか!? その土人形には私の爆弾を沢山仕込んだので威力が桁違いでしょ?」
プライスは自身の技を自慢げに話していたが、アザミとカイルにそんな余裕はなかった。
アザミは少し距離があった為、全身火傷と爆風によって吹き飛ばれた時に、あちこち体をぶつけた程度ですんだ。
カイルは土人形で作られたプライスの傍にいたせいか、全身火傷はもちろん、左足が吹き飛んで、止血しないと失血死する寸前まで怪我を負っていた。
「グッ...バカイル...大丈夫か?」
アザミはカイルの様子を見て、その酷い有り様に、足を引きづりながらもすぐさまカイルに近づき、自分の服をちぎり、吹き飛ばれた箇所を圧迫して止血する。
「ハァ...ハァ...何度もすまねぇな。俺バカだからよぉ、考えもなしに突っ込んだり行動したりして迷惑かけちまう。ホントにすまねぇ」
カイルは地面に横たわり、アザミに何度も謝る。
「別に今に始まった事じゃないから大丈夫。自分で吹き飛ばれた箇所抑えてて、じゃないと死ぬ」
アザミはカイルに指示をして、痛む体に鞭をうって立ち上がる。
「おー!立ち上がりますか!でもその体で私と戦う気ですか?」
アザミはプライスの言葉を無視して、今までの嫌な予感の感覚を信じて突っ込む。
「無策で突っ込むなんて何の驚きもないですよ?それとも何か策があるのですかな?もっと私を驚かせてください!」
プライスはアザミの周囲の地面や空中に《不意打ちの爆撃》を設置する。
アザミは自身の感覚を研ぎ澄まし、嫌な予感がした時にはすぐさま移動する。
その姿はまるで設置場所を把握しているかのようだった。
「なんと! 設置場所は私にしか把握出来ないはず...魔力による探知でも引っかからない事は証明済み。ではいったい彼女はどうやって...」
泣き顔のピエロ、クラヴィの《魔力探知》ですら認知出来ない爆撃を目の前の少女が意図も容易く避け続けている光景が信じられないといった表情をするプライス。
「あそこはダメ、あそこはギリいける。設置される前に早く」
アザミはプライスへと疾走しながらも、ブツブツと何かを呟いて爆撃をかわす。
「フフッ!良いですねお嬢さん!私を驚かせたお礼にとっておきのサプライズを用意しましょう!出なさい私そっくりの土人形達!」
プライスが手を叩くと、地面からプライスそっくりの土人形が10体現れる。
「《糸魔法 糸繰り人形劇》」
プライスは10本の指から伸びた糸を1体ずつにつけ、人形は操る。
アザミは出てきた人形全てから嫌な予感を感知して、爆弾が仕込まれている事に気づく。
プライスに操られた10体と土人形と、地面と空中に設置された爆撃を同時に相手することになった。
しかし、アザミはプライスの視線や手の動きなどを事細かに見ることで次の行動を予測する。
土人形の1体がアザミに近づき自爆同然の爆発を起こすタイミングすら見切る。
「これはホントに驚いた。この同時攻撃ですら捌ききるなんて...。耳長族の少女だと甘く見るのはやめた方がよさそうです」
プライスは静かにアザミを賞賛して、初めて自身を脅かす敵として相手する。
現在アザミは周りの景色や音などが意識外にあり、プライスだけを注視して、自分の感覚に身を委ねていた。
9体の土人形がアザミを取り囲み、逃すまいとする。
アザミは9体の人形が同時の迫ってきて、空中に逃れようとすると爆撃の嵐に襲われる予感を察知する。
そこでアザミは今の自分なら出来ると感覚に素直に従い行動する。
アザミの予感通り、9体の人形が同時に向かってくる。
そこでアザミはその攻撃から逃れる為に、地面を蹴り、その包囲網から抜け出そうとする。
「かかりましたね。《連鎖する爆撃》」
空中に仕掛けられた爆撃が1つ爆破すると、連鎖して他の爆撃が爆破する。
土人形もプライスが操り、その連鎖へと入っていく。
その威力は今までの比ではなく、爆撃を受けたアザミは灰すら残らないだろう。
「アザミー!!!!」
とてつもない爆発に意識が朦朧としていたカイルが、目を覚まし、その光景を目の当たりにして叫ぶ。
✩皆様にお願い✩
ページ下部にある★★★★★マークの所を1〜5まで評価して欲しいですଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧
執筆の励みになります!!
【ブックマーク】【感想】もお待ちしております。




