87話 摩訶不思議と颯嵐鎧
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「みんな行くぞ!」
カオリの号令により、カイルとアザミはプライスを、ベルムにはリーシャがつく。
「せっかくの数の有利を活かさないの?1体1で僕とやろうなんて無謀だよね!キャハハハ!」
スマイリーは向かってくるカオリに対して言葉を投げかけるが、返答はない。
「無視されるなんて悲しいなぁ! まぁいいや、君も笑い死んでなよ!《伝播する笑い》、キャハハハ!」
「《不撓不屈》」
スマイリーはスキルを使うが、先程のカイル達のように笑わないカオリに疑問を抱く。
「ん?僕のスキルが効いていない?無効化されたのか?」
カオリはスマイリーが困惑している隙に、矢を射掛ける。
だが、スマイリーは独特な動きで矢を避ける。
「なるほどね! 何のスキルかは知らないけど、どうやら君には僕の《伝播する笑い》が効かないようだ!キャハハハ!でも、それだけで僕を相手するのはちょっと早計じゃない?」
カオリはそのスマイリーの態度に何かあるのでは無いかと疑う。
「キャハハハ!僕のスキルが1つだけだとは言ってないよぉ? 《摩訶不思議》!」
カオリは身構えたが、何も起きない。
ただのブラフに騙されたと思い、矢を射掛けようとした時、弓と矢筒が無いことに気づく。
「あれ?どうしたの?武器が無くなっちゃったの?おかしな事もあったもんだねぇ。キャハハハ!」
そう言うスマイリーの手には、カオリの弓と矢筒があった。
「貴様いつの間に!返せ!」
武器を取られたカオリはスマイリーに接近して、取り返そうとするが
「キャハハハ!必死になっちゃって面白ーい!取れるもんなら取ってみな!ほれ!」
スマイリーが武器を背中で見えないように隠した。
背中に回した手をこちらに向けると先程まであった武器が無くなっている。
「なっ!どこへやった!」
「その反応面白いね!上を見てみなよ」
カオリはスマイリーの言う通り上を見ると、上空に弓と矢筒が浮遊していた。
「上を見てと言ってわざわざ見てくれるなんて優しいんだね!キャハハハ!」
その間にスマイリーはカオリとの距離を縮め、ナイフによる接近戦へと持ち込む。
カオリは素直に上を見た自分を恥じたが、風魔法で後ろに下がり、距離を取ろうとした。
「まぁ、普通逃げるよね!ところがどっこい!《摩訶不思議》!」
スマイリーはスキルを発動しながら、ナイフを投擲する。
カオリはそのナイフを打ち落とそうとした時、ナイフが消え、背後から巨大な刃物が襲いかかる。
「《小夜嵐!!」
《超聴覚》で捉えたカオリはその場で風魔法を解除して急停止、後ろを振り向き、襲いかかる巨大な刃物に向けて、魔力を練らず、即座に撃てる最大火力の嵐魔法を放つ。
巨大な刃物とカオリの嵐魔法は激突し、何とか押し返す事に成功したが、スマイリーのナイフがカオリの左肩を貫く。
「クッ!!」
「キャハハハ!その顔が見たかったんだよね!どう?痛い?痛いよね?」
そう言いながら突き刺したナイフをグリグリと回す。
カオリはその痛みに耐えながら、スマイリーの腹を蹴り、何とか脱出する。
「足蹴にするなんてお行儀が悪いなぁ。まぁいいや、次は心臓に一刺ししてあげるからね!キャハハハ!」
「お前のスキル、武器の質量や場所を変える事が出来るというものだろ?」
カオリは左肩をおさえつつ、今までの出来事からスマイリーのスキルを予測した。
「キャハハハ!あれだけの情報でよく分かったね!大正解だよ!でもわかっても対処出来ないのが、このスキルの良いところなんだよね!」
スマイリーの言う通り、スキルの詳細がわかったところで、いつどこにどのくらいの質量の武器が飛んでくるか分からない以上、対策は厳しい。
「私もガストロ戦以降、何もしていなかった訳じゃない。リーシャに複合魔法を教えてもらったが、うまく出来なかった。だから私は自分の強みを鍛えた。丁度いい、貴様で試さしてもらうぞ」
「何を訳の分からない事を言ってるの?絶望的な状況に頭がおかしくなっちゃったのかな?キャハハハ!それじゃ僕が早く楽にしてあげるよ!《摩訶不思議》!」
スマイリーは内ポケットから新たにナイフを9本手に取り、スキルを発動させ、先程の巨大な刃物がカオリを四方八方から襲う。
そんな中、カオリは目を瞑り、魔力を練っていた。
あと数センチで串刺しというより、圧殺されそうになった時、カオリは目を開けて魔法を発動した。
「《颯嵐鎧》」
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