77話 グランゼル荒野と拳骨
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カイルはまだ帰っていなかったが、リビングにいた女性陣3人にさっきあった事を説明した。
「えぇぇぇぇー! 明日魔王と会うからついてきてくれっていきなりですね! まぁ、私はギマンさんと一緒ならどこへでも行きますよ」
物凄い良いリアクションをしてくれたリーシャちゃんが、初めは驚いて、最後はモジモジしていた。
「お前という奴は相談もしないで勝手に決めて、もう少し私達を頼ってくれてもいいのだぞ。それにしてもタリスマンの所の魔王とはな」
「今頼ってるだろ」と言うと、カオリに「そういう問題じゃない!」と怒られてしまった。
どうしてだ...。 にしても、カオリとアザミにしては嫌な相手かもな。
タリスマンによってアザミは酷い経験をしたわけだし、その魔王と会うなんて少し無責任だったかもしれない。
俺はアザミを心配する顔で見つめた。そして、本人であるアザミの言葉を待つ。
「ギマン様、心配してくれてありがとうございます。確かにタリスマンの眷属をしていた時の記憶は酷いものでした。ですが、私はこうして皆のおかげで人間として今生きています。だから大丈夫です」
カオリは「うぅ...。さすが私の妹だ」と涙ぐんでいる。
俺はしっかり過去の辛い思いを乗り越えているアザミの頭を撫でる。
「凄いなアザミは。もし、本当に辛い時はちゃんと言うんだぞ」
「はい...」
頭を撫でるとアザミは気持ちよさそうに目をつむる。
リーシャちゃんとカオリがジーッと睨んできたので、慌ててアザミから離れる。
その時に「あっ...」と悲しそうな声を出すアザミ。
「それにしても何で、午後12時にノスクレイ要塞なんだ?」
カオリは俺が指定した日時と場所が気になったのか聞いてくる。
「吸血鬼は陽の光に弱いからな。魔王にまで効果があるかはわからなかったが、夜よりはマシだと思ったからだ。ノスクレイ要塞にしたのは、人間領から近すぎず離れすぎずの距離にしたかったからだ」
ノスクレイ要塞というのは、勇者パーティーや冒険者が最前線として常駐していた場所の事だ。
人間領から近すぎず遠すぎずの距離にしたかったのは、もし戦闘になったとしても、人間領に影響が出ないようにしたかったのと、ヘクターは例外だが、魔族側からの援護を遅らせたかったからだ。
「なるほどな。私達以外に連れて行く人はいるのか?」
「そこは俺も考えたが、戦闘になった場合に守りながら戦える余裕がないと思ったから、今回は俺達だけでいく」
人類の4強、ランディスは会ってないのでわからないが、スイエル、ジン、レテはスキルも優秀で頼りになるが、序列4位の魔王が相手となると瞬殺されかねない。
パーシヴァルやユーリッドにしてもそうだ。
「わかった。そうと決まれば私は少しでもLvを上げたいから、グランゼル荒野に行ってくる」
「私ももう少しで《複合魔法》のコツが掴めそうなので、カオリさんと一緒に行きます」
「私も同行する」
カオリ、リーシャちゃん、アザミは実戦形式の訓練をした後なのに、俺の話を聞いて、Lv上げの為に準備をしだした。
ちなみにグランゼル荒野というのは、九頭龍クラスの危険度SSSの魔物が跋扈する通称【死の荒野】と言われている場所だ。
だが、今の3人なら油断しなければ大丈夫だろう。
「ギマンさんはどうしますか?」
リーシャちゃんが準備しながら聞いてくる。
「俺は酒場にいるだろうカイルに事情を話してくる。他にしたい事もあるし、それが終わったらそっちに合流するよ」
「わかりました! お待ちしてますね!」
こんな真面目な女性陣を少しでも見習って欲しいと思いながら、俺はさっき王の間で小人族代表王ガルバンとの話を盗み聞きしていた酒場まで向かう。
酒場に着いて、ベロベロのカイルが上半身裸で踊っていて、それを見てバカ笑いしている周りの客達。
俺はその光景を冷めた目で見ながら、カイルに近づく。
「おっ!英雄様じゃないか!一緒にの...」
そんな俺に気づいたのか、小人族代表王ガルバンが声をかけようとしたが、俺の雰囲気に気づいて話しかけるのをやめた。
俺は踊っているカイルの背後へと立ち、こいつにチョップでは甘かったなと思い、頭におもいっきりゲンコツをする。
カイルはその一撃で床に倒れ気絶する。
そんなカイルを地面を引きずりながら連れていく。
一部始終を見ていた周りの客達は「英雄様を怒らせてはいけない」と心の中で思った。
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