75話 マグノリアとヘクター
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俺は魔王アリステラの部下ヘクターという魔族からの手紙を受け取り、すぐにカフェ【マグノリア】へと足を進めた。
スイエルの情報で、俺達が倒した魔族タリスマンを従えていたのも魔王アリステラだという事は知っている。
その部下が俺に何の用だと思ったが、1番思いつくのは報復だろう。
しかし、それなら話し合いの場を設けるのはどういう事だ。
相手の意図がわからないが、取り敢えずいつでも襲われてもいいように戦闘態勢だけはとっておこう。
そして、カフェ【マグノリア】へと着いた。
中に入ると落ち着いた雰囲気のいい店だった。
「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」
店員が話しかけてくる。
「先に入って待っている者がいる。俺はシノノメギマンという」
店員はその言葉に一瞬驚くが、すぐに態度を改める。
「シノノメギマン様ですね。分かりました。お待ちになられているお客様へ案内します」
店員は1番奥の個室に案内する。
「こちらです。お呼びの際は呼び鈴を鳴らして頂けるとすぐに参ります。ごゆっくりどうぞ」
そう言ってお辞儀をすると店員は戻っていく。
俺は個室の扉を開けると、そこには金髪の美男子が席に座り、カップに注がれている飲み物を飲んでいた。
こいつがヘクターか。やっぱり吸血鬼っていうのは人間とあまり変わらないな。
ヘクターは瞳の色を変えているのか、タリスマンのような真紅の瞳ではなく、茶色の瞳をしていた。
「これは随分とお早い到着ですね。数時間は待つ予定でいたのに、有難い事です。立っていないで座ってください」
こんなに早く俺が来る事が意外だったのか、少し驚いていた。
対面の席に座るよう促され、大人しく座った。
「それで俺にいったい何の用だ?タリスマンの報復か?」
腹の探り合いなど不要と単刀直入に聞く。
「いきなりですね。まずは何か頼んだらいかがですか? ここは私が払いますよ」
「俺がゆっくりお茶飲みながら話を聞くとでも思ったのか?」
「まぁそれもそうですよね」
ヘクターは諦めたのか、カップを置き、話し出す。
「まず、手紙にも書いたように私に敵意はありません。タリスマンの報復なども考えていません。むしろ感謝したいくらいです。アリステラ様からの警告を無視して、人間に手を出していた愚か者でしたので」
タリスマンは人間の男を眷属にして、女性を誘拐していた。その事に関して、どうやら魔王アリステラは良く思っていなかったらしい。
報復どころか感謝されてしまった。
「今回私があなたに話したい事は、私の主であるアリステラ様が会いたがっている事を伝えるためです」
ヘクターはそこで話を区切り、カップに口をつける。
「何のために俺に会いたがっているんだ?」
序列4位の魔王が俺に会いたがる理由がわからない。
「私も詳しくは聞かされていませんが、タリスマンを倒した直後から、あなたに興味を持たれていまして、調査をしろと命令されていました」
「そして、貴方が序列13位魔王《幽幻天》二重複体のナナシ様を倒された時にその事を報告すると、アリステラ様は調査の続行を打ち切り、接触しろと言われました」
俺はヘクターからの情報を聞き、何故アリステラが俺に会いたいのか予測する。
魔王を倒した事で、人類側である俺に何かやらせたいのか。 戦力として必要ってだけでいうなら部下や、それこそ他の魔王を頼ればいい。俺である理由はいったい...。
「その受け入れを断った場合はどうなるんだ?」
会わない選択肢が出るかもしれない。その時の為に一応聞いていく。
「それは非常に残念ですね。その時は1度主の元へと帰り、報告させて頂きます。その後、どう判断するのかはわたしにはわかりません。ただ1つ言えるのは私は主の命令であれば、何でもやります」
ヘクターはそう言って初めて鋭い目線を向ける。最後の言葉だけ力強い意志を感じたな。
こういう奴はホントに何でもやる。要は断ればどうなるかわからんぞっていう事か。
「わかった。その提案受け入れる。ただし条件がある」
俺の言葉にヘクターは嬉しそうな表情をする。
「それは良かったです。これでいい報告が出来ます。それで条件とは何でしょうか?」
「俺は人類、そっちは魔族、お互い敵同士だ。だから信用などという言葉は存在しない。本当に会う場合、場所の指定と時刻はこちらで決めさせてもらう。そしてその場所に来ていいのはアリステラ1人だ。もし飲めないんならこの話はなしだ」
ヘクターはその言葉に苦い顔をしていた。
少し考える仕草をした後
「分かりました。約束は出来ませんが、ひとまず主に伝えてきます。また手紙で連絡しますので、今日はこれで失礼します」
そう言ってヘクターは立ち上がり、足早に去っていった。
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