59話 過去の思い出と錯覚世界
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「な、なんじゃこれは!身体が動かぬ!スキルも魔法も何も発動せん!」
スイエルは急に変わった景色と身体の自由がきかない事に驚く。
「さぁーてと。それじゃまずは元気な天使族から痛ぶってあげようかな。そうした方が2人共絶望してくれそうだからさ」
このままだとスイエルまで殺されてしまう。俺は残る力を振り絞り、無謀だとは思うが、この空間に錯覚を発動し続ける。
失敗
失敗
失敗
失敗
失敗
やはり生き物以外を対象にする錯覚は無理なのか...。
俺が錯覚を発動し続けてる内に、二重複体は、また誰もいない観客席に向けて話し出す。
そんな中、スイエルは俺の方を見る。
「ギマンの言う事を聞かずについてきたわらわがバカじゃった。すまんのう。じゃが、いてもたってもいられなかった。わらわの復讐を手伝ってくれると言われた時、嬉しかった。だから、少しでも力になりたかった」
そう言いながら、スイエルの涙が頬を伝う。
そんな姿を見ても、何も出来ない自分に腹が立つ。
頭の中の機械音は今もまだ、錯覚は失敗だと流れ続けている。
口上が終わったのか、二重複体はスイエルの右腕を叩こうとしていた。
こんな奴に、俺のことを助けてくれた人を死なせるのか?
俺はまたあの時のように....
「バカだよな?騙されたお前を助けて、自分が犠牲になるなんてな」
俺はロープで縛られ、口をガムテープで塞がれている。その目の前にナイフで刺された女性が倒れている。刺した男の最後の言葉が、今も脳にこびりついている。
元の世界の最悪の出来事がフラッシュバックした。
俺はあの時、誓ったはずだ。もう二度、人と深く関わらないで生きていこう。騙されない力を身につけると。
『錯覚は失敗です』
それが今はどうだ。信頼してくれる仲間を作ってしまい、あの時と同じような状況でまた何も出来ない。
『錯覚は失敗です』
嫌だ。もうあんな想いをするのは。自分の為に誰かが死ぬのはもう嫌なんだ。
『錯覚は失敗です』
だから、お願いだ。大切な人を奪われないだけの力を。全部守れる力を。
その時、頭の中に電撃が走った。
『《固有結界》に対して、錯覚が発動出来ます。行いますか?》
そんなもん今すぐやるに決まってるだろ!
『錯覚が《固有結界》に対して発動を確認。スキル《錯覚世界》を獲得しました』
「《錯覚世界》」
その言葉と共に、二重複体の《固有結界》が破壊され、無機質な立体空間が形成される。
「は?僕の《固有結界》が破られた?」
二重複体は信じられないといった表情をする。
「こ、ここは?」
スイエルも状況を理解出来ないでいた。
「スイエルさん。もう大丈夫です。来てくれてありがとう」
未だに五感は元に戻っていないが、俺はスイエルに感謝する。
「え?どういうことなのじゃ? しかし、さっきまでの空間はどこに...」
スイエルは未だに困惑している。
「おい!人間!これはどういう事だ!? 何故僕の《固有結界》が解除されたんだ! あの技は魔王でも破れないのに」
二重複体は、俺達のやり取りを見て、イラついたのか、声を荒らげて聞いてくる。
俺の両耳は聴覚を失っているが、どうせどうしてこうなったとか言ってるんだろう。見たらわかる。
自分で俺の聴覚を奪っておきながら、聞いてくるとは余程焦ってるな。
「1つだけ答えてやるとしたら、お前はここで死ぬ。それだけだ」
俺はそう宣言すると、二重複体に向けて、錯覚を発動。
まずは俺と同じように五感を奪ってやる。
この世界において、俺の錯覚を無効化することは不可能だ。
そして、俺が与える錯覚が現実になり、錯覚と気づく事はない。
二重複体の視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚を奪う。
「おい!ふざけるな!何も見えん!何も聞こえん!何も感じん!早くここから出せ!!!」
ギャーギャーと喚き散らす二重複体。
もういいか。
「これまでの行ってきた悪行を後悔しながら消えていく」と錯覚をかける。
二重複体はその後、苦しみの声を上げながら、少しずつ体が消えさり、5分後には完全に消滅した。
――そういえば二重複体の名前知らずに終わったな。
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