52話 炎の巨人と複合魔法
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「大人しく洗脳にかかっておいた方が楽だったのにのう。《轟雷帝》」
ガストロはそう言って杖を翳すと、轟音と共に雷が幾つも発生し、私達に襲いかかる。
「魔法の処理は私とリーシャがする! カイルとアザミは奴の懐に近づいてくれ!」
そうは言ったものの、ガストロが放った雷の威力は凄まじく、追尾性能もついており、カイルとアザミは中々近づけない。
魔法で相殺しようとしても雷は意思を持ったかのように、掻い潜り、私達を襲う。
「どうした?この程度で苦戦するのか?こいつも味わえ。《永久凍土》」
雷に苦戦している私達に追撃の絶対零度の冷気が襲いかかる。 前線にいたカイルとアザミの両足が一瞬で凍りつき、上半身へと達しようとしていた。雷は動けない2人に集中して向かっていく。
「じれったいです!火加減調整!《灼熱地獄》!」
リーシャは絶対零度の冷気に対抗するべく、灼熱の炎で迎え撃つ。2人の氷を溶かしつつ、冷気に負けない火加減を緻密に調整している。なんと、雷までも相殺している。
「ほお。儂の氷と雷をたった1つの魔法だけで相殺しきるか。やるのう、魔術師の小娘よ」
自身の魔法を破られてもケロリとしているガストロ。
そんな隙を見逃す訳もなく。私は直ぐに指示を出した。
「カイル!アザミ!今のうちに接近戦に持ち込んで!」
カイルとアザミは高速でガストロへと接近していく。
そんな2人を見ても、ガストロはリーシャを見ていた。
「儂と魔術勝負するか?小娘よ。複合魔法《炎の巨人》」
あと少しで、2人の攻撃がガストロに命中する所で、地面から轟轟と燃えている体長4メートルはある巨人が邪魔をした。
2人は1度下がり、体勢を立て直す。
「いったい何だってんだよあの巨人はよ」
「冷たい、熱い、硬い、忙しい」
炎の巨人が発している熱が、かなりの高温なのか、カイルとアザミは玉のような汗をかいている。
「あれは土魔法《土の巨人》と火魔法《狂焔不知火》の複合魔法です」
リーシャは炎の巨人を見て、どう言ったカラクリなのか分かっているらしい。
「その複合魔法というのはなんなんだ?」
カイルはよく分かってないのか、リーシャに聞いた。
「普通魔法というのは、単一の属性だけを極めたり、威力を調節したり、使い勝手を良くしてアレンジする。でも、複合魔法って言うのは、今回の炎の巨人なら火と土を複合させている魔法の事」
「それって難しいのか?」
「難しいってレベルじゃない。そもそも魔力を練る時、今から撃ちたい属性の魔力を選ぶでしょ? 複合魔法は、その魔力を練る時に違う属性同時をきっちり半分半分にしないといけないの。この誤差なく50.50に分けるのが無理なの。しかも、戦闘中に動きながらとか尚更ね。」
要は、私たちの目の前にいる賢者の死体は化け物という事だな。
「解説痛み入るの。 じゃが1番大事なことを言っておらんのう。さて儂との格の違いも分かったことだし始めるとするかのう。炎の巨人、奴らを始末しろ」
ガストロが命令を下すと、炎の巨人は体から炎を吐きながら走ってくる。
「リーシャ!あの巨人を止めることは出来ないのか!?」
私は向かってくる炎の巨人を警戒しながら、リーシャへと投げかける。
「なにより複合魔法の1番強い所は、複合魔法は複合魔法でしか相殺できない所なんです」
リーシャは悲痛な声でその言葉を紡いだ。
さっきガストロが言っていた大事なこととはこれか!
「なんだと!?それならあの巨人は複合魔法でしか止められないって事なのか!?」
「でも、スキルや物理攻撃は通るのでまだ希望はあります!」
そうと決まれば余計な被害が出る前に、ここで1つ切り札を使うしかないな。
カオリは炎の巨人を睨みながら、《因呶羅の光矢》の準備を始めた。
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