51話 占い師と賢者
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――――――sideカオリ
私達はスイエルさんから貰った地図を頼りに、占い師が居る建物の前へとやってきた。
「最初はまず、私が占い師と話し合ってみる。洗脳している事が事実だった場合、解除して貰えるよう説得を試みる。それがダメなら戦闘に入る」
「それで?俺達はどこにいたらいいんだ?」
ギマンの錯覚によって少し暑さを感じているカイルが手を扇ぎながら聞いてくる。
「相手が2人きりで話したいとか言われなければ、近くで待機して欲しい。今回は魔族が相手だから何が起こるかわからん」
ギマンがいない初めての魔族との戦闘。ギマンはああ言ってくれたが、本当に私達でやれるのか?という不安は残っていた。
そんな私を見透かしてか、リーシャが近づいてきた。
「カオリさん。いつもの硬い表情が、今はもっと硬いですよ? ギマンさんから認められたのにまだ不安なんですか? それなら私がリーダー変わってあげますよ。ついでにギマンさんの正妻も私で決まりにしますからね」
「それとこれとは話が違うだろ! ギマンが認めてくれた私こそがリーダーなんだ!」
私はついカッとなって、リーシャに言い返す。
「やっといつもの表情に戻りましたね。ここに来るまでの道中、物凄い張り詰めた顔してましたから、私がフォローするハメになったんですからね! 貸し1ですよ!」
リーシャはそう言って、プンスカしながら離れていく。
カイルとアザミを見ると、2人共うんうんと頷いている。
そうか...私みんなに気を遣わせてしまってたのか。
本来はリーダーである私がみんなを引っ張っていかないといけない立場なのに。
私は自分の両頬を叩いた。なら、せめてここからはリーダーらしくいこう!
「みんな心配をかけてすまない。まだ不甲斐ない点があるが一生懸命やるから着いてきて欲しい」
「カオリがギマンに言ったセリフ、そのままお返しするぜ」
カイルにそう言われて、私は恥ずかしくなった。
一々謝るなと言った本人がこのザマなんだから。
「お姉ちゃんはいつも通りでいい。前線は私とおじさんが頑張るから」
私に普段冷たいアザミがそんな言葉をかけてくれるから嬉しくて小躍りしそうになった。
カイルは「おじさんって俺のこと!?ねぇ!?」とアザミに詰め寄っていたが気にしない。
「もう!さっさと行って早くギマンさんのところにフォローしに行きましょう! 颯爽と助けに行って褒められたいんですから!」
リーシャが我慢ならずに急かしてくる。
そうだな。ここでウダウダしてる時間なんかなかった。
私達は意を決して、占い師がいる建物へと入っていく。
中は全体的に暗く、足元に置いてある明かりが出る魔道具だけ。窓とカーテンは全部閉められており、陽の光が一切入ってこない。
廊下を歩き奥に進むと、広い部屋へと出た。その部屋はカビ臭く、至るところに人の骨が落ちている。
私達は気味悪がりながら進もうとしたら、部屋の奥からフードまで被り、顔も見えない何者かが出てきた。
「おや?今日は予約のお客様はいない筈ですが? 何の用でこちらに?」
声からして男だとわかる。まずは話し合いだ。
「王達や市民にかけている洗脳を今すぐ解け。大人しく従うなら命だけは取らないでおこう」
私の言葉にカイルとリーシャはあちゃーと頭を抱え、フードの男は考える仕草を取る。
「そもそも何を言ってるのかさっぱりわかりません。私が洗脳?ただの占い師ですよ」
フードの男はそう言いながら、フードを外し私達を視界に入れる。
フードの中から現れた頭部は、人間の頭蓋骨だった。頭蓋骨の目だけは蒼く光っていた。
『スキル《不撓不屈》により精神攻撃を無効化しました』
奴の目を見た瞬間に、頭の中から機械音が流れてくる。
「まぁ嘘じゃがの!クヒヒヒ。それでも、これからは儂の操り人形として生きる主達には関係ないことじゃ」
急に口調が変わり、勝ち誇ったかのような口ぶりで話し出す。
私はスキルで無効化かしたが、他のみんなはどうだ?と様子を見ると、皆何言ってんのあいつみたいな表情をしていたので安心した。
「やはりお前が王達を洗脳した魔族だな。説得しようとした私がバカだった。やはり魔族は悪、即、死だ!」
カイルとリーシャは「いや、説得する気なんかサラサラなかっただろ」とツッコミ、アザミは「悪、即、死!」とノッてきてくれた。
その態度に骸骨男は呆然としていた。
「な、何故儂の洗脳が聞かぬ!貴様らただの人間と耳長族であろう!下等種族如きが儂の魔術を跳ね除けるなどありえぬ!」
地団駄を踏みながら、骸骨男は悔しがっている。
私達はその隙に戦闘態勢に入り、カイルとアザミが前線に立ち、私が中衛、リーシャが後衛というフォーメーションを組んだ。
「そうか。ナナシ様が確か魔族を倒した者がおると言っておったのう。まさか貴様らがそうか?」
骸骨男は急に落ち着き払いながら聞いてくる。
「だったらなんだ?」
「そやつらが来たら沢山もてなして欲しいと言われておった。洗脳が効かぬだけでいい気になるなよ? 儂は賢者の死体のガストロだ。魔術の叡智を貴様らに見してやろう」
ガストロは虚空から禍々しい杖を取り出し、コチラを睥睨した。
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