45話 憎しみと叱咤
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酒場で奢るからと言って、話を聞かせて欲しいと言うと二つ返事で、デノンハウザー王について聞けた。
デノンハウザーは王になる前、家臣の目を盗み、冒険者と一緒に魔物などを狩っていた。
王になった時でも、「体が鈍るといかん」と言っては度々外に出て鍛錬をしていたらしい。性格は他人に厳しく、自分にはさらに厳しくがモットー。
そんな王の本質を知る民たちは、王の事を尊敬しており、魔族が侵攻してきた時は、各地に戦力を派遣して、自ら前線に出ようとしていた。
そして、この連合国を創ったのもデノンハウザー王であり、徹底抗戦の意志を貫いていた。
そんな王が人が変わったようになったのは、他の王と同じ時期からで、ここでもまた占い師の話が出てきた。
「王達のお墨付きもある、その占い師にみんな占って欲しいから行くんだけど、全員人が変わったようになるんだとさ」
ここまでの情報を話してくれた男が、ビールの入ったジョッキを飲み干す。
「なるほど。ありがとう。お代は俺が払っておくよ」
「おう!ありがとな兄ちゃん!」
知りたい情報はあらかた知れたので、俺は男の分も会計を済まし、カオリと合流する為、家に帰る。
家に帰り着くと、カイルとリーシャちゃんがソファにぐったりしており、アザミは庭で鍛錬をしていた。
「そんなにぐったりしてどうしたんだ?」
そんな言葉を投げかけると、カイルとリーシャちゃんがゆっくりと起き上がった。
「ギマンさんおかえりなさい。それが、アザミちゃんのやる気が凄すぎて、フォローする私達はくったくたですよ」
「あの子ほんとすげぇぜ。手足失おうが構わずに魔物に向かっていくんだからさ。まぁおかげでかなりの数の魔物は狩れたから、そこそこレベルは上がってると思うぜ」
いくらリーシャちゃんの回復魔法があるとはいえ、その戦い方は無謀だな。
俺は2人に労いの言葉を言って、庭にいるアザミを呼んだ。
汗を滴らせながら、まだまだ元気なアザミが来る。
鑑定するとレベルが120にまで上がっていた。
「ギマン様。何の御用でしょうか?」
「アザミ焦りすぎだ。大方、皆のステータスの紙を見て強くならないといけないと思ったんだろうが、こんなやり方してたら、いつか体を壊すぞ」
俺に怒られたアザミはシュンとしており、それでも譲れないものがあるのか、口を開閉して何か言いたそうな表情をしていた。
「言いたいことがあるなら言ってみろ」
そう言うとアザミはポツリと言葉を吐いた。
「私は早くギマン様のお役に立てるようになりたいのです。そして、憎き魔族を殺すだけの力を...」
憎しみか。確かにあんな経験したら憎むなと言う方が無理だろう。
それでこんなに焦っていたのか。それなら尚更注意しとかないとな。
「その気持ちもわかるが、こんなやり方は認めん。アザミは1人で魔族と戦うのか? 違うだろ? 俺達仲間全員で戦うんだ。 もっと、カイルとリーシャちゃんの話を聞くんだ」
「でも! あの2人は状況把握やら、敵の弱点や不意をつく作戦ばかりです! 魔物なんて正面から力でねじ伏せればいいと思います!」
アザミは珍しく声を荒らげた。
「その2人の意図がわからない内は、鍛錬禁止だ。分かった時はまず、2人に謝れ。それから、鍛錬に付き合っても貰えるようにお願いしろ」
そう言って俺はカオリに会うため部屋へと向かう。
ここで答えを1から10まで教えても、アザミは成長しないだろう。
自分で考える事を放棄した人間は、元の世界だと悪い奴に騙され、どん底へと落ちていく。俺もそうだった。
そうはなってほしくないと思い、少し厳しいがここは鬼の心であしらう。
アザミは、俺に怒られ、カイル達の意図もわからず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
部屋に行こうとすると、カオリがドアから顔を出して、心配そうにアザミを見ていた。
「心配なら慰めに行ってもいいぞ」
カオリは俺の言葉に首を横に振った。
「今すぐにでも抱きしめてあげたいが、ギマンの言うことは正しい。少し1人で考えさせよう」
シスコンのカオリにしては珍しい。
それでもやっばり気になるのか部屋に入る前にアザミを見ていた。お互いの集めた情報を整理するため俺はカオリの部屋に入った。
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