43話 ザイードと占い師
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「いやー悪かったな。火廣金が運良く手に入ったのに、鍛冶に失敗しちまってイライラしてたんだ」
火廣金って、確か伝説の金属だよな。天皇家に伝わる三種の神器にも使われてるっていう。
「事情は分かった。それで、俺の武器を打ってくれるのか?」
この際、いきなり投げてきた事は水に流そう。
「あぁ、もちろんいいぜ。今は手が空いてるし、すぐにでも取り掛かれる。それにしても凄い腕前してんな。ちょいとそのミスリルの短剣見してくれ」
俺は金槌を返すと同時にミスリルの短剣をザイードに渡した。
「この刃こぼれに魔力の伝導率の減衰。使ってそんなに日は経ってないが、かなりの戦闘経験を積んでる。これは修理よりか新しい獲物に変えた方が...」
ミスリルの短剣を渡した途端に、ザイードは真剣な目になり、金槌で叩いたり、魔力を通したりしていて、ブツブツ言っていた。
「師匠に気に入られてよかったな兄ちゃん。心配してたんだぜ」
弟子の小人族は、ホッとした表情を浮かべていた。
タンコブ仲間になれなくてごめんな。
でもカイルってやつがいるから安心してくれ。
弟子小人族を憐れんでいると、ザイードが俺に話しかける。
「ある程度見させてもらった。この短剣は修理するよりかは新しい獲物に変えた方が良いと思う。刃こぼれなんかはこっちでどうにかなるが、魔力伝導まで治すとなるとかなり時間がかかる。それに、あんたは短剣じゃなくて、もっと長い剣の方が合ってると思う。筋肉の作り的に」
いつの間に筋肉の作りなんか見られたのか知らないが、俺もそれは思っていた。
短剣は小回りが効くし、使い勝手は良いのだが、威力とリーチに欠ける。
今まで、魔力を付与してその短所を補っていたが、魔法を使えない場面が来ないとも限らない。
「それじゃあ、新しく武器を造ってくれ。素材や価格はどうする?」
「素材は、値は張るが火廣金がまだ残ってるからそれでどうだ? 価格は金貨200枚。これでもかなり安くしといたぜ」
4人家族が1年生活していくのにだいたい金貨5枚あれば足りる。つまり、金貨200枚というのはめちゃくちゃ高い。
今は持ち合わせがないが、魔物の素材やら売れば足りると思い、その条件で了承する。
「分かった。あと1つこっちからの要望で、剣は両刃ではなく、片刃にして欲しい」
「刀ってやつか。変わってるねあんた。だけど面白い! 久々に腕が鳴るぜ! 今すぐに取りかかるから、2日後またうちに来な」
両腕を回しながらニコニコして作業場に向かうザイードを見て、何か忘れてると思い、気がついた。
「あとこれは全く別件なんだが、ガルバン王について少し聞いてもいいか?」
あっぶねー。このまま帰ったら、ただの武器依頼した奴になるところだったぜ。
「ん?ガルバンについて?」
作業場に向かっていたザイードは振り返り、俺の話を質問に耳を傾けた。
「あぁ、魔族に侵攻されて、ここまで追いやられて人が変わったとかないか?」
ザイードと弟子小人族は少し考えた様子をした。
「特に変わった様子はないな。1つだけあるとしたら、何かあいつ占いにハマったらしくて、占い師とつるむようになったな。鍛冶一筋のバカが小難しいこと始めやがって」
「確かによく、占い師が王城に出入りしている。っていう情報は聞くぜ兄ちゃん。何でも、かなりの的中で当たるって噂らしいぜ」
占い師か。怪しいな。
「あと、ガルバン王は魔族との争い反対してたか?」
「いや、そもそも俺達小人族は鍛冶して酒飲めりゃいいって種族だから、反対と言うよりかは、今の現状を崩したくない。って意見だな」
平穏ヒステリック耳長族よりかは酷くないが、元からガルバン王も魔族を刺激したくないって意見の持ち主か。
「最後に気になってたんだが、ザイードって小人族だろ? 何でそんなに大きいんだ?」
「そりゃ俺が人間と小人族の子だからだ。最初は純血の小人族からはいじめられてたが、今はブイブイ言わせてるぜ!」
力こぶを作り、ニッと笑うザイードを見ながら納得した。
「分かった。ありがとな。それじゃあ、また2日後に来る。楽しみにしてる」
「おう! 人生最高傑作作ってやるから待ってな!」
新しい玩具を貰った子供の様な表情で、作業場に向かうザイードを見ながら、俺は鍛冶屋から出て、次の目的地へと向かう。
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