39話 一触即発と洗脳
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「デノンハウザー。ワシらをここに呼んだのはどういう要件じゃ?」
カイルよりも髭を蓄えている小人の王が喋った。
デノンハウザーは、空いている真ん中の玉座に座り答える。
「儂が連れてきたそやつらは、先日魔族の一体を討伐した」
その言葉に3人の王は驚いている。耳長族の王だけは驚きではなく、怒った表情をしていた。
4人の王が続きを促すように、デノンハウザーを見る。
「儂の側近に確認させたから間違いない。魔族をこれ以上刺激しない代わりに、他の王にも会わせろと言われたから呼んだ」
デノンハウザーは手短に要点だけを伝える。
その間に俺は4人の王達に錯覚を発動させる。
小人アウト、獣人アウト、天使アウト、耳長族セーフ。
全ての王が洗脳状態にあると思っていたが、耳長族の王だけは、何も精神攻撃を受けていない。
これは予想外だった。
さっきも1人だけ驚きではなく怒っていた。何か関係があるのか?
そんなことを考えていると耳長族の王が玉座から立ち上がった。
「あなた達、なにをしたかわかってるの? 魔族を1人討伐したなんて...報復にできたらどうしてくれんのよ!!」
精神攻撃を受けていないのに、この苛立ちようは、元からこういう考えなのだろう。
「まぁまぁ落ち着けよティターニア。そこの者達はもう魔族に手を出さないと約束したんじゃろ? だったらここは穏便にいこうじゃないか」
ガルバンは、怒鳴ってきたティターニアをなだめている。 それでも、ティターニアは止まらない。
「いいや! 収まらないわ! 私達耳長族は平穏を望むのよ! それを自ら壊そうとしたあなた達は許せない! 後ろにいる耳長族! 名前を言いなさい。この国から追放してあげる」
ティターニアは、カオリとアザミを指差した。
なんだよこいつ。精神攻撃されてるって言われた方がまだ良かったわ。
「平穏平穏ってうるせぇな。そんなに平穏が好きならあんたがこの国から出てけよ。魔の森にでも行ってこい。なんなら案内してやるよ」
突如、王の間に暴風が吹き荒れる。ティターニアがキレて風魔法を使ったのだ。
「もういっぺん言ってみなさいよ。切り刻んであげるから」
ヒステリックもここまで来たら考えもんだな。
俺達は戦闘態勢を取り、一触即発の空気になる。
「おやめなさい!!」
その瞬間、ティターニアの風が収まった。声の主は天使族の王だった。
「ここは神聖なる王の間ですよ。ティターニアは少し落ち着きというものを持ちなさい。貴方もあまり挑発してはいけませんよ」
過ちを諭すかのような優しい声だ。
「ちっ、わかったわよセラフィム。命拾いしたわね」
「こらっ」
ティターニアの余計な一言に、セラフィムが叱る。
玉座の後ろに隠れていたガルバンは収まったのを見計らい、座り直し、獣人の王は、終始、腕を組み、目をつぶっている。デノンハウザーは風で乱れた服を直していた。
「最後にもう一度お聞かせください。貴方がたは、もう魔族には手を出さないのですね?」
そして、セラフィムが仕切り直したかのように聞いてくる。
「あぁ、そうだ。」
「なれば、もうとやかくは言いません。貴方の条件も満たされましたよね? お帰りなさい」
これ以上、余計な面倒を起こしてくれるな帰れと遠回しに言われた。
「わかった。帰らせてもらう」
また変なスイッチが入って、ティターニアが怒り出すか分からないから、俺達は王の間を後にした。
外で出るとパーシヴァルが出口まで案内してくれた。
「心臓バクバクでしたよ。いきなり王に喧嘩売るし、タメ口だし、他の王にも会わせろだなんて言い出すし...」
別れ際にパーシヴァルがため息を吐きながら愚痴ってきた。
「悪い。案内ありがとな。それと、転職先探しといた方がいいぞ?」
その言葉に一層大きなため息を吐くパーシヴァルであった。
帰り際、気になって仕方なかったのか、カイルが聞いてきた。
「なぁ、ギマン。魔族に手を出さないってのは本当かよ。あんな言いなりになるなんて、お前らしくもねぇ」
カイルの言葉に皆同感なのか、うんうんと首を縦に降っていた。
そういえば言ってなかったな。
「それはな。5人のうち4人の王が何者かに洗脳されているからだ」
後ろを振り返ると、アザミは無表情だが、残りの3人は目が飛び出でるぐらいに驚いていた。
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