32話 スイエルと観測
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「カシミヤよ元気そうじゃな。それでこの状況はどういう事か説明してもらえるかのぅ?」
ギルドマスターはリーダー格の騎士を睨むと、その騎士は肩をビクつかせてながらも言葉を紡いだ。
「私達はデノンハウザー王の命にてある冒険者達を探しておりました。」
「ほう。それは別に構わんが何故この騎士はカシミヤを助けたこの男に斬りかかろうとしたのじゃ? しかも、妾の冒険者ギルドで」
「そ、それはそこの男が国家反逆罪を犯したからです」
ただ冒険者カードを見せないだけで国家反逆罪になる国とか怒りを超えて呆れるな。リーダー格の騎士はなんとかこの事態を乗り切ろうとギルドマスターと話していた。
「国家反逆罪とは詳しく何をしたんじゃ?」
次第にギルドマスターの言葉の温度が冷たくなっていく。
「王命を無視したからです」
小学生みたいな受け答えに嫌気がさしたのかギルドマスターは大きなため息をつき、次の瞬間
「わらわが何も見てなかったと思ったか!阿呆が!お前達が注意したカシミヤを連れて行こうとした所を邪魔されて挑発されたから斬りかかったんじゃろうが!」
ギルド内に響く大声で怒鳴った。リーダー格の騎士はその圧に耐えられず倒れた。
「この位で気を失うなど近衛騎士が聞いて呆れるのぅ。おいそこの阿呆共。この2人連れてさっさと帰れ。妾は帰ってきて早々こんなの見せられて気分が悪い。ここは冒険者ギルドじゃ。王命でもここで好き勝手はわらわがさせぬ」
睨みをきかせたその言葉に騎士達は背中に冷や汗をかいた。そして、ギルドマスターに呼ばれた騎士達はすぐに倒れている2人を回収して脱兎のごとく去っていった。それと一緒に酒場にいた連中も出ていった。
ギルドマスターに何か言われるのが怖いんだろう。わかるぞ。
「ギルドマスターお帰りなさい」
騒ぎが収まり、カシミヤさんはギルドマスターへと近づく。
「ただいまじゃ。帰って早々大声出したから喉が乾いた。後で部屋に茶を持ってきてくれ」
「分かりました」
「それとそこのお主も部屋に来い」
指を刺された方向がどう考えても俺に向いていた。どうやら拒否権はないらしい。だって怖いし。
俺はギルドマスターに着いていき、2階の1番奥の部屋へと入り、ふかふかの椅子に腰掛ける。ギルドマスターは書斎の椅子に座り、煙管を口に咥え、葉を火皿に置き指を鳴らし火をつけた。そのタイミングでカシミヤがお茶を持って入ってきた。
「お茶です。」
「うむ。ご苦労」
カシミヤさんは俺を心配そうに見るが何も言わず出ていった。
「それでお主は一体何者じゃ? 自分では気づいておらぬが、騎士に斬りかかられた時に見せたほんの少しの殺気、尋常ではないくらい濃密だったぞ。あの騎士にはあの程度で済んで感謝して欲しいくらいじゃ。」
煙を吐きながら、ギルドマスターはそう述べる。
あの一瞬でそこまで見破られるなんて凄いなこの人。
俺はこの人が気になり、鑑定をかけた。
『スイエル』女性 B:85 U:50 H:82
種族名:大天使 職業:ギルドマスター 犯罪歴:1089 好感度:0
Lv:300
HP:10000
MP:12000
攻撃:7000
防御:6500
魔法:9000
速さ:6300
知能:1000
器用:1000
スキル
《重力魔法》重力を操る魔法を使える。
《地震》地震を起こす。
《大天使の号令》付き従う者のステータスを上昇させる。
《危機察知》危険を察知できる。
称号
【脱却者】不明
えぇ。何この人。強すぎるわ。色々ツッコミどころはあるが、取り敢えず不審に思われないように会話を続けよう。
「シノノメギマンと言います。奴らが探していたのは俺です」
スイエルを敵に回すのはマズイ。ステータスは俺の方が上だが、スキルが凶悪すぎる。
さっきの状況を見た感じギルド側は連合国の言いなりではなく、独立までは行かないだろうが、それでもスイエルがいる限り力で強引に何て考えないだろう。
「ほう。正直に申すか。それでそちは何をした?」
「その前に1つ良いですか?」
ここでホイホイ答えるようじゃ相手の言いようにされてしまう為、俺は切り返した。
「なんじゃ?」
「連合国の王の中、またはその側近に《観測》のスキル持ちの人はいますか?」
その質問をすると、スイエルは驚いた表情を見せる。
「王の側近のスキルなど、上層部でもほんのひと握りの人間しか知らない情報をなぜ知っている」
やっぱいたか。バレるとしたらその可能性が1番高かったからな。
何故俺が《観測》というスキルを知っていたのか、それはあの創造神が見せてくれたスキルの欄に書いてあったからだ。
あの時、俺は少し自慢の記憶力でめぼしいスキルをあらかた覚えていた。《観測》はその座標の現在から10日間までの出来事を詳しく視る事が出来るというものだ。
恐らく、《観測》のスキルで魔の森を覗いたものが俺達の事を知ったんだろう。
「まさか、お主。鎌をかけたな?」
スイエルは雁首を灰皿に強く叩いた。
俺が黙ったままだから鎌をかけたと思ったらしい。まぁ確証得るために鎌をかけたのは違いなけどな。
「すいません。でも、自分を狙う人物の情報を知るのは当然の事だと思ったので。」
スイエルからの圧に押し潰されないようにコチラも圧をかける。スイエルはその態度に怒るどころか、口角を少し上げ笑った。
「まさか、わらわを前にしてそのような態度を取るとはのう。肝が据わってるようじゃ。嫌いではないぞ」
話し合いに置いて舐められたら終わりだ。だから、あの態度を取ったが、どうやら嫌われずに済んだらしい。
「特別に続きも教えてやろろう。その《観測》持ちのスキルを持つ者は人類代表王デノンハウザーの側近におる」
「何故そこまで教えるんですか?」
「わらわがここまで教えたら、そちも事情を話しやすかろ?」
なるほど。返報性を利用したのか。
返報性というのは人は好意を受け取ると「お返し」をしたくなる。例えば、試食何かがその1つだ。 試食してしまった以上、何かお返ししなければと思い、その商品を買ってしまう原理だ。
まぁ、そもそも俺はこの人には事情を話そうと思っていたので変わらないがな。
「分かりました。事情を説明します。俺を探しているのは魔族を殺したからです」
スイエルは今までのどこか余裕そうな雰囲気を消して、真剣な表情を浮かべた。
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