25話 剛腕と聖なる弾丸
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「ほう。私の赫十字爪双撃を相殺させましたか」
俺は奴が放って来たスキルを撃ち落としながら鑑定を使い共有する。
「さっきの攻撃はくらったら一撃で終わりだ! 後、こいつが霧になってる時は物理攻撃が効かない! 血液を操る魔法を駆使してくるから注意!」
「了解(です)!」
この際、不死の事は考えない。リーシャちゃんの退魔の魔力とカオリの聖なる弾丸が切り札だ。
「あの裏路地で会った時とは全く強さが変わっていたので驚きましたよ。たった1日でどうやったのですか?お連れの方達も人間関係の中だと、かなり腕が立つとお見受けしますがどうでしょう?」
自分のステータスとスキルがバレているというのにこの態度。どうやら負けるなんて事は1ミリも思ってないんだろ。
「いやいや。すみませんね。こういった闘争は久方振りでして興奮してるんですよ。楽しませてくださいね?」
右手を1振り払うと蒼炎の龍が一瞬で消え去った。
タリスマンは自身の右腕を左手の爪で堕とす。右腕が付け根からなくなり大量の血が溢れ出す。
その血が地面に落ちることはなく、空中で丸く一塊になり静止していた。
タリスマンを見るといつの間にか右腕が再生している。
「さぁ行きますよ。血液魔法【串刺し血雨】!」
静止してた血が意志をもったかのように形を無数の棘に変え、降りかかってくる。
「作戦通りに行動開始!散れ!」
その言葉通り、俺達4人は血の雨をそれぞれ迎撃しつつバラバラに行動する。
「ふむ。人間は群れないと弱い種族だと思いますが、どういうつもりですか?」
そうやって油断しておけ。まぁ俺があいつにそういう錯覚を発動させてるんだが、当たり前の事すぎて錯覚してると思ってもないだろう。
「行くぜおらぁ!」
カイルがカオリの《風を操る者》の超高性能の《爆流風》を受けながら血の雨を掻い潜り、空中にいるタリスマンへと突撃する。
「単騎で突進とは芸が無いですね」
タリスマンは身体を霧状にして線斧の攻撃を回避しようとした。
「今だ!リーシャちゃん!」
「はい!天使の聖域!」
空にオーロラが現れ砕け、その破片が俺達に当たる。
誰も怪我をしていない為、回復はしないがもう1つの能力、退魔の魔力が付与された。
カイルの戦斧にもそれは影響し、霧状になっているタリスマンを横薙ぎにした。
ジュッ!と焼ける音がした。
「ぐっ!これは退魔の魔力ですか!小癪な!」
退魔の魔力が宿った攻撃を受け、初めてタリスマンは口調を荒らげた。
鑑定でHPを見ると減っており、やはり退魔の力は魔族に対して天敵らしい。
即座に霧状から人型になり、斧を振り終えたカイルに向け爪で攻撃する。
そうはさせない。九鬼一閃を2回放ち18の斬撃が襲う。
奴に錯覚を発動「この攻撃に退魔の魔力は付与されてない」。
ある程度のダメージ覚悟でカイルを攻撃しようとしたタリスマンに命中。
「ぐぁっ!この攻撃もですか!やはり先程のオーロラが原因...」
退魔の斬撃を受け、タリスマンが苦悶の表情を浮かべ攻撃を中止し距離を保つ。
その間の血の雨による攻撃はカオリとリーシャちゃんが魔法による迎撃で対処してくれている。
「あの魔術師の小娘から仕留めた方が良さそうですね」
タリスマンは標的を退魔の魔力を付与したであろうリーシャちゃんに定める。1度血の雨を解除し、再び血を形成していく。
「【血染めの袖】」
巨大な質量の血がリーシャちゃんに肉薄する。
「羅生門」
「西風神の帳」
俺とカオリはその前に障壁の魔法を発動させる。
「解除。流体移動。血染めの袖再構築」
だが、障壁に当たる前に血が液体になり、地面を高速で這って障壁を突破する。そして、リーシャちゃんの目の前で再び巨大な質量を形成した。
「カイル!頼む!」
「死と踊る!!」
即座にカイルがスキルを発動するとタリスマンが放った技は軌道を変え、カイルへと向かう。
俺とカオリは再びその間に障壁を発動すると今度は液体にならずにぶつかった。
「あの髭面の男に攻撃も私の目線も吸い寄せられる。なるほど。ヘイト管理のスキルですか。ならさっさと片付けましょう」
己の攻撃を阻止されても冷静に分析し、実行に移す。
やりにくい相手だ。
「眷属召喚。血の解放発動。さぁあの男を殺しなさい」
タリスマンがスキルを発動すると、地面に6つの魔法陣が出現し、そこから血を分け与えたであろう人間が現れたと思ったら、ハンスの時のように急に全身の血が吹き出した。
その血はタリスマンを形成しており、恐らくあの時、鑑定した血晶体verだ。Lv200とはいえそれが6体も。
「私の3分の1程度の力ですが、「数は力」と言いますし厳しいでしょう?」
血晶体は機械のようにカイルへと殺到する。
少々早い気もするがここでカイルを失ってしまっては元も子もない。
「カイル!使え!」
「いいんだな!?」
許可を求めるようにカイルがこちらを向くが、俺は首を縦に振る。
カイルは両手でしっかり戦斧を握り、腕に魔力を通す。
全方位から迫る血晶体が捉えようとした時。
「剛腕!!!!」
カイルが振るった斧が唸り声をあげるかのような音を発した。周りにいた血晶体は跡形もなくなっており、その現場を空中で見ていたタリスマンは驚きの表情を浮かべる。
「こ、この力は一体何が起こった?」
今まで、どこか余裕の笑みをしていたタリスマンの顔から笑みが消えた。
それもそうだろう。なんせ今のカイルの攻撃は剛腕の能力により350000という規格外の数字になってるのだから。
「カイル!俺達が全力でサポートする!どんな攻撃が来ても気にせず突っ込め!」
「おう!任せろ!」
さすがのタリスマンと言えど、今のカイルの攻撃を食らって良いわけがない。
身の危険を感じたのか、カイルに向けて血液魔法を放ちながら、より上空へと逃げようとするが死と踊るが発動している為、そうもいかない。
「「【堕落する水源】!」」
そこに俺とリーシャちゃんはタリスマンの上空に池なんかより遥かに多い水源を発生させ、それを堕とす。
水の流れというのは非常に強力で空中にいたタリスマンは地面に堕とされた。
「ゲボッ!ゲホッ!人間の分際でよくも私を汚い地面に落としてくれましたね!」
水浸しになったタリスマンは喉に水が入ったのか、地面に咳き込み水を吐き出しながら、怒り狂った。
「怒る余裕なんてあんのか?目の前見てみろ」
俺の言葉にハッ!と眼前を見ると爆流風を受けたカイルが斧を振り被ろうとしていた。
「くそ!ふざけるな!私が人間如きに!血液魔法【三柱血方位陣】!」
必死の抵抗でタリスマンの前に三角形の盾が現れる。
「観念しろ!【剛健齏】!」
カイルはその現れた盾など無かったかのように渾身の力で斧を振った。盾諸共タリスマン縦一文字にし、地面が割れる。
鑑定をするとHPはゼロになり、タリスマンは地面に倒れた。
しかし、半分になった体がお互い意志を持つようにくっつき目に光が宿る。立ち上がり、俺達の唖然とした表情を眺める。
「クックック!いやはやまさか、この私が人間相手に1度死ぬとは思いませんでしたよ! いやー素晴らしかった! でもすみません。私、不死なので死なないですよ! 絶望させてしまいましたか!? その顔が見たかったんですよ! どうですか?私の演技上手だったでしょう?」
――聖なる弾丸!!
その声が聞こえると、演説途中のタリスマンの右半身を吹き飛ばした。
「あぇ?」
先程まであれ程流暢に話していたのに、急に素っ頓狂な声をあげた。
この状況を作ったカオリの手の中には銀製の羽根をあしらった回転式拳銃が握られていた。
「演説どうもありがとな? そもそもお前が不死持ちだったのは知ってた。退魔の魔力があれぱ不死でも倒せると俺達が思い込んでると錯覚させたんだよ。そうして俺達がやっとの思いで倒せたと思いこんだお前は不死の力で蘇り、俺達の絶望の表情に愉悦を感じ、ベラベラと隙だらけの演説を始めた。あっ、ちなみに絶望の表情も錯覚な?俺、お前みたいに演技上手じゃないからごめんなぁ?」
「あとはその隙だらけのお前にカオリがスキルを放つだけだ。バカでもわかる説明してやったんだがわかったか?」
俺の言葉にタリスマンは顔を真っ赤にし、反撃しようと吹き飛ばされた右半身を再生させようとするが全く反応しない。
「な、なぜだ!再生が発動しない?」
再生が出来ずに慌てふためいてるタリスマンの目の前にカオリが歩いてきた。
「妹の仇よ。せいぜい苦しんで死になさい」
どうやら聖なる弾丸は回転式拳銃だったので弾倉分だけ撃てるみたいだ。
回転式拳銃の弾倉は全部で6つ。後5回カオリは弾丸を放てるというわけだ。
地面に這いつくばるタリスマンに回転式拳銃の銃口を向ける。
「ま、待ってくれ!今までの事は反省する!もう人間は食べない!だから!」
タリスマンは死の危機を感じ必死にカオリに命乞いをするが、その様子を絶対零度の目つきで睨むカオリに通用しないだろう。
「うるさい。死ね。」
カオリは躊躇なくタリスマンの残っている左半身を狙い引き金を引いた。
凄まじい威力で跡形もなく吹き飛んだタリスマンを眺めながら、俺は作戦通りに行ったことを少し上手く行き過ぎだとは思いつつも消失したタリスマンを改めて見ると、その気持ちも薄れていった。
だが、1つだけ気掛かりもある。鑑定したとき奴のスキルの欄に不明という文字があった。あれは一体...
――赫十字爪双撃
仇を倒し感傷に浸っていたカオリに無慈悲の爪撃が襲いかかり鮮血が舞った。
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