24話 休息と決戦
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切り刻み、燃え尽き、灰になった九頭竜はさすがに再生しなかった。
『経験値倍化により6000000経験値になります。Lvが400になりました。パーティーへ振り分けます。竜種撃破により、称号【竜殺し】を獲得しました』
九頭竜との激闘を制した俺達はリーシャちゃんの新しく獲得したスキルにより、傷や状態異常は回復したが気力は使い果たしていた。
「みんな大丈...」
「うぉぉーー!!やったな!ギマン!勝ったぞ!」
「やりました〜!私達の勝利です!!」
「あの伝説の竜種に勝ったぞ!ギマンも喜べ!!」
心配しようと声をかけようとしたら抱きつかれた。
4つのマシュマロが心地良いがカイルの筋肉がそれの邪魔をする。
「あぁ、やったな。みんなよく頑張ってくれた。ありがとう」
何だか最後に色々とスキルが進化したが、今は置いておこう。
――俺達は無事、珠廻花を採取、九頭竜を撃退した。
オピュロイ毒沼からカイル宅へと帰ってきた訳だが、今は午後の3時。
タリスマンとの決戦まで後8時間。
そう、あの激闘を制した俺達だが本命はあくまでタリスマンだ。
冷蔵庫から酒を持ち出し、祝杯をしようとしていたカイルに後頭部チョップを繰り出す。気持ちは分からなくもないが。
「今朝も見たな。この光景」
カイルに同情の目を向けるカオリ
「お兄ちゃん!こんな昼間からお酒なんてダメ人間になっちゃうよ!?」
そうだそうだ。だから、そんは老け顔になるんだ。
「ちぇ! 少しくらい良いじゃねぇか。昨日までFランク冒険者だった俺が1日で竜種を倒しちまったんだぞ? 喜んで何が悪い」
俺達に怒られたせいか不貞腐れる髭老け顔。
「今日のタリスマンとの決戦が終われば酒も女も好きにすればいいさ」
ムチだけじゃ可哀想だから仕方なくアメを与えた。
「ギ、ギマンさんはお酒は良いけど、女はダメですよ! 欲しくなったら私が居ますからね!」
「カイルのバカは好きにすればいいが、ギマンはそんな如何わしい店は禁止だ。わ、私で発散すればいい!」
「カオリさん。ギマンさんには私が居るので大丈夫ですよ? 空気を読んでお兄ちゃんと出かけといてください」
「誰があんな髭面老け顔と2人で出かけるか。勘違いされたら最悪だろ。それこそ兄妹水入らず美味しい物でも食べるといい。私はもっと美味しい者を食べるがな?」
カオリとリーシャは絶対零度の目つきで睨み合っていた。
第三者のカイルがボロくそ言われていたがほっとこう。
しまった...。女という単語を出してしまったせいで女性陣2人がなんだか暴走し始めた。
俺は頭を抱えながら罵詈雑言を受け凹んでいるカイルに助けを求めるよう目で合図を送るが、「知るか自分でなんとかしろ」と返された。
「そもそも、俺はそんな店なんか行かない。だって、まだ童て...」
ヤバい。何を言ってるんだ俺は。
その3文字を聞いた2人は瞬時に言い合いをやめて俺の方を向き近づいてきた。
「ギ、ギマンさん!まさか今まで1度も経験がないんですか!? それなら私と一緒に初めてを卒業しましょう!」
「そ、そうなのか! い、意外だなぁ! ギマンの見た目ならモテそうなのにな! ならば、私が手ほどきしてやろう! 私も初めてだけど」
カオリの最後の言葉が小さすぎて聞こえなかったが、2人共、凄い剣幕で畳み掛けてくる。
なんだよこれ九頭竜よりも強敵じゃないか。
俺はこの場をどう乗り切ればいいか分からなくなっていた。
「ハイハイ。お二人さん、そこまでだ。俺が祝杯しようとして怒られたのにこれじゃ怒られ損だぜ」
公私共に盾役カイルお兄さんが助けてくれた。
2人はまだ何か言いたそうだったが、カイルにあまり近づきたくないのか大人しくなってくれた。
髭老け顔なんて言ってごめんな。
「取り敢えず、九頭竜との戦闘の時、最後になんか頭の中でスキルを獲得しましたって聞こえてきたんだけど、その確認とやらしないか?」
俺だけじゃなくて、あの機械音はカイルにまで聞こえたらしい。リーシャちゃんとカオリに目を向けると首を縦に振る。全員なのか。
「わかった。俺が皆のステータスとスキルを鑑定して紙に写す。そこから、タリスマンとの決戦に向けての作戦会議をして、気力回復の為に一旦寝よう」
ここから無理にLv上げに行こうとしても、効率的にも時間的にも良くないと思った。
3人を視界に入れ鑑定を行う。
『カイル』 男 忠誠心:200
種族名:人間 職業:冒険者 犯罪歴なし
Lv:250
HP:7800
MP:2500
攻撃:3500
防御:5000
魔法:1500
速さ:2000
知能:260
器用:120
スキル
《剛腕》10秒間だけ攻撃が100倍になる。CT3日
《金剛》10秒間だけダメージ.衝撃.状態異常.精神攻撃を無効にする。CT5日
《死と踊る》半径30m内の自分に敵意.殺意を持つ相手のヘイトや攻撃を全て受ける。CT3時間
称号
【竜殺し】竜種に対して与えるダメージが1.5倍
『リーシャ』 女性 B:90 U:58 H:86
種族名:人間 職業:冒険者 犯罪歴なし 好感度500
Lv:280
HP:6040
MP:10080
攻撃:3000
防御:2600
魔法:13000
速さ:2900
知能:570
器用:600
スキル
《大器晩成》徐々に大成する
《付与術士》対象の武具に自分の魔法の2倍の威力で付与させる。
《天使の聖域》半径20mの味方を全回復させ、退魔の魔力を一時的に与える。
称号
【竜殺し】竜種に対して与えるダメージが1.5倍
『カオリ=エンフェルト』女性 B:98 U:55 H:92
種族名:闇耳長族 職業:冒険者 犯罪歴なし 好感度500
Lv:300
HP:7030
MP:6800
攻撃:4150
防御:3860
魔法:3900
速さ:6900
知能:680
器用:500
スキル
《聖なる弾丸》己が悪と認知した相手に対して回復不可、再生不可の弾丸を撃つ。威力は想いに比例する。CT10日
《風を操る者》風の妖精の力を借り、風魔法の概念から外れる。
《因陀羅の光矢》神聖魔力を込めた必中の光矢を放つ。CT6日
称号
【竜殺し】竜種に対して与えるダメージが1.5倍
俺がステータスを書き写した紙を渡すと、3人はこれホント?と言った表情で見返してきた。
こっちだって驚いてるのにそんな顔しないでくれ。
カイルの《金剛》と《死と踊る》のコンボは凶悪だな。10秒間だけとは言え、強制にヘイトを向けさせておいてダメージを一切食らわないなんて最強の盾役だ。
リーシャちゃんは魔法に関するステータスの伸びが凄まじい。そのうち12階級魔法を使える日も遠くない。その魔法の威力を2倍にして付与出来るとか恐ろしい。
そして、最後の《天使の聖域》なんか完全に勇者パーティーの聖女の上位互換のスキルだろこれ。範囲内にいる味方全員を全回復だけでも強力なのに退魔の魔力を一時的にとはいえ与える能力もエグい。
カオリに至っては《因陀羅の光矢》と《聖なる弾丸》の強力無比の2大スキル。《風を操る者》という風魔法の概念から外れるという曖昧な意味。俺的にはこういうスキルの方が使い方次第では化けると《錯覚》で身をもって知っているから期待している。
九頭竜との戦闘で、自分より強者との実戦経験とLv上げを目標にしてたが、とんでもないスキルの獲得もプラスで着いてくるとはな。
かくいう俺のステータスは
『東雲欺瞞』男性
種族名:人間 職業:冒険者 犯罪歴なし
Lv:400
HP:18500+1000
MP:21000+1000
攻撃:16900+1000
防御:16000+1000
魔法:18000+1000
速さ:17200+1000
知能:1600
器用:1300
スキル
《錯覚》対象を錯覚させる。
《取得経験値倍化》取得する経験値を2倍にする。
《原語通訳》全ての原語が話せる。
《アイテムボックス》収集容量3%
《環境適応》環境に即座に対応できる。
《並列思考》2つの事象を思考できる。
《鑑定》対象を鑑定する。
《九鬼一閃》刃物系武器装備時、一振りで9つの斬撃を飛ばす事ができる。
《超錯覚》忠誠.好意を持つ相手に対して錯覚させ、その錯覚に適したスキルを与える。
加護
【創造神の加護】MP.魔法+1000
【冥府神の加護】HP.攻撃.防御.速さ+1000
称号
【竜殺し】竜種に対して与えるダメージが1.5倍
前まで+1000が有難かったが、このステータスを見るとオマケ程度にしか感じなくなってしまったな。
神の加護しっかりしてくれ。
「ぶっへっしん!」「あーくしょん!!!」どこかの神2人がくしゃみをしている幻聴が聞こえた。
てか、この《超錯覚》ってスキル普通に考えてヤバくないか?
俺はあの時「必ず成し遂げる」という曖昧な錯覚を発動した。
カイルは九頭竜を1秒でも長く引き止めることと、それに耐えることを成し遂げる為。
リーシャちゃんは俺の剣に付与出来る、みんなの傷が癒えるように成し遂げる為。
カオリは自分も九頭竜に一矢報いろうと、俺を必ず送り届けようと成し遂げる為。
みんな、その為に最適なスキルを獲得出来たのだ。
言い換えると何かを成し遂げる為に強く錯覚に落ちるとその何かに適したスキルを獲得するのだ。普通に考えて強すぎる。
「みんな、そろそろ頭の中で整理出来た? 各々のスキルを把握した所でタリスマンへの作戦会議をしよう」
その後、2時間しっかり連携の確認やタリスマン対策などを話し合い、気力を回復する為、各自部屋に戻り休んだ。
――22時。
今日の空には満月が浮かび、街の明かりが消えかかる頃、俺達は着替えを済ませてリビングに集合していた。
「みんな、ここまで俺に付いてきてくれてありがとう。俺1人だと九頭竜に勝てなかったし、タリスマンとの決戦もここまで上手く進まなかった。今日だ。ともかく今日を乗り切ろう。勝って必ず4人生きてここにまた帰ってこよう。このパーティーは最高だ。絶対に倒せる」
俺は柄にもないことを言ってしまうが後悔はしてない。
「おうよ!必ず勝って4人で乾杯しようぜ!」
「こちらこそありがとうです! 絶対にやっつけましょう!」
「遂にこの時が来た。アザミ、仇は必ず取るぞ!」
何だろうな。この3人と居ると不思議となんでも出来そうな気がしてくる。――この気持ちは錯覚なんかじゃないんだろうな。
さぁいよいよ決戦だ。
――23時魔の森。
俺達は魔の森の月明かりが照らす大きく開けた所で歩みを止める。
「今宵は月が綺麗ですね。おや?極上の女性を2人も連れてきてくれたのですか。嬉しいですね。その男はオマケということでしょうか?」
背中から赤い翼を広げ、浮遊している1人の男。
見た目は30代中半。白髪を丁寧に七三分けしており眼鏡をかけている。
こいつがタリスマンで間違いないだろう。
「あぁ。ちょっと変更になって約束の品は後ろにある。受け取ってくれ。ついでと言っちゃなんだがさ―――死んでくれ」
タリスマンが背後を見ると、蒼い炎を纏った竜がその身を燃やしていく。
「ハッハッハッ!! これは手厚い品ですね!では私からも何か差し上げないと悪いですね!《赫十字爪双撃》!」
全く効いていないのか、蒼い炎に燃やされながらもタリスマンは爪を伸ばし十字を切るように腕を振るう。
赫の軌道を描き俺達に襲いかかる。
それを《九鬼一閃》を放ち相殺する。
その余波で空気が揺れる。
決戦の火蓋が切られた。
『タリスマン』 男性
種族名:貴族吸血鬼
Lv:600
HP:50000
MP:80000
攻撃:28000
防御:28000
魔法:45000
速さ:31000
知能:1000
器用:1000
スキル
《不死》HPがゼロになっても死なない。
《眷属化》己の血を分け与えた者を眷属にする。
《眷属召喚》眷属を召喚する。
《霧化》身体を霧状に変化させる。物理攻撃無効
《赫十字双撃》己の爪を交差し振るう事で赫斬撃を飛ばす。命中した相手を失血死させる。
《血液魔法》己の血液を操る魔法を使える。
不明
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