21話 九頭竜と珠廻花
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俺達は現在、オピュロイ毒沼へと到着した。
地面は暗紫色で如何にも触れたらヤバいですよというオーラがあり、周辺の空気も濁っており、リーシャちゃんが一階級の風魔法【送風】を使ってくれている。
「ここからは俺が土魔法【土流岸】を使い、リーシャちゃんは【送風】、カオリは《超聴覚》で索敵、カイルはリーシャちゃんの護衛をしながら進んでいこう。そして、少しでも毒を受けたらすぐさま毒消し薬を飲んでくれ」
ここに来るまでに道具屋で毒消し薬を買ったがここの魔物の毒に効くかは分からないが、ないよりはマシだからある分だけ買ってきた。
「ギマン、ここから約22m右前方に地面を這う音が複数聞こえる。多分毒に潜む百足だと思うわ」
カオリが《超聴覚》を発動し、敵の場所と個別か複数かを特定した。
「わかった。目標をそいつに定めて常に見張ってくれ。だが他に音が聞こえたらすぐに報告だ」
そして、毒沼を慎重に進むと目視で2体の毒に潜む百足を発見。すぐさま鑑定を発動。
『毒に潜む百足』♂ 体長3m
Lv:130
HP:3000
MP:1000
攻撃:1600
防御:1350
魔法:650
速さ:300
知能:30
器用:0
スキル
《毒咬み》噛み付いた相手に致死量の毒を与える
《毒霧》口から霧状の猛毒を散布する
Lv130か。かなり高いな。スキルも毒に特化してる。
《毒咬み》があるから接近戦はしない方がいいな。
「スキルに《毒咬み》と《毒霧》を持っている。接近戦に持ち込まず中距離、遠距離から攻撃、《毒霧》を吐いてきたらリーシャちゃんか俺が風魔法で打ち消そう」
3人が「了解(です)」と頷いた。
まだ気づいていないのか百足達は毒沼を這っている。
そこに俺は《斬撃》をカオリは弓矢に4階級の火魔法【炎熱地獄】を付与して放ち、リーシャちゃんは6階級の風魔法【断空】をカイルは3階級の土魔法【土巨人の鉄槌】を発動させた。
少しオーバーキル気味だったが百足達は断末魔をあげて絶命し、スキルを使わせる間もなく倒した。
『経験値倍化により98000となります。Lvが287になりました。パーティへと振り分けます』
魔の森の魔物達に比べると明らかに良い。Lvも2だけだがちゃんと上がった。
その後もカオリの超聴覚と俺の鑑定で敵を索敵、ステータスを解読して敵の好きなように戦わせず、ゆっくりとだが確実に狩っていった。
オピュロイ毒沼に来て体感2時間くらい経ったかなと思った時、暗紫色の毒沼の中にそのあたり一面だけ白く、1輪の赤い花が咲いていた。
恐らくあれが珠廻花だろう。
カオリに周囲を探ってもらい、敵が周囲にいないと確認する。
俺はこの毒沼には似つかしくない綺麗な花を摘み鑑定した。
珠廻花
・口にした者のあらゆる事象を戻す。
戻す?治すの間違いじゃないのか?
俺が珠廻花の効果の意味を考えていると、カオリが急に焦った声を出した。
「後方30mから高速でこちらに接近してくる!」
その声を聞いた瞬間、俺はすぐさま振り返り土魔法7階級【羅生門】を発動させたが高速で接近してきたそいつにすぐに破壊された。
勢いは殺せたのか壁を壊したそいつは俺達の目の前に姿を現した。
全身は赤黒く体長は10mはあるだろうか。九つの頭がこちらを威嚇するように口を開けている。
『九頭竜』不明
Lv:370
HP:18000
MP:15000
攻撃:23000
防御:20000
魔法:17000
速さ:13000
知能:500
器用:200
スキル
《蠱毒のオーラ》周囲20mに回復不可の毒を撒き散らす
《超再生》ダメージを受けた箇所を瞬時に再生する
《九頭竜の咆哮》周囲100mの敵に威嚇、対象を麻痺状態にする
《邪毒竜砲》前方200mに回復不可、再生不可の超猛毒の衝撃波を放つ
「全員、絶対にこいつの周囲20mには近づくな!あとは...」
__GyaOォォォォォォォォ!!!!!
俺が皆に注意しようとしていたら、九頭竜が爆音の咆哮を俺達に浴びせてきた。
俺は咄嗟に「これは単なる体の痺れ、麻痺ではない」と錯覚を発動したが、他の皆は血の気が引いたような表情をして固まっていた。特にカオリは超聴覚を発動させていたのか毒沼に膝をつき地面に嘔吐していた。
息つく暇もなく動けないと判断したであろう九頭竜がデカい図体の割に素早い動きで迫ってくる。
くそが。
取り敢えず麻痺状態が解除されるまで俺がこいつを1人で相手するしかない。
【羅生門】を目の前に10個発動させる。それを見た九頭竜は動ける奴がいるのかと驚いた訳ではなく、ニヤリと笑った。
先程と同じように走るだけで簡単に壊されていくが、奴が壊している間に風魔法【爆流風】を自分の背後で発動させ背後に回り込む。
【羅生門】を8つ壊して動けない3人に接近しようとしている九頭竜に、リミッター解除の錯覚を発動させ斬撃を放った。
九つある頭の三つを切断した。しかし、すぐに新しい首と頭が生えてきた。これが超再生ってやつか。ハンスの再生とは比べ物にならんな。
だが、首を斬られた事で怒り注意が俺の方に向いた。
「しっかりしろ!意識を強くもて!俺達はこいつより強い奴と戦うんだろ!こんな所で躓くな!」
まだ動けない3人に対して錯覚を乗せて発破をかけておいた。これで動ければいいが。
俺の大声が挑発に聞こえたのか九頭竜がもう1発咆哮をあげ、奴の体から薄紫色のオーラが漂い始めた。
あれが《蠱毒のオーラ》だな。ホントは常時発動出来ますよって事か。
どうやら九頭竜も本気になったようだ。
俺と九つの頭が睨み合い、今にもぶつかり合おうとした時。
「【断空】!!!」
「【土巨人の鉄槌】!!!」
「【鎌鼬】!!!」
突然、背後からの魔法を受け九頭竜は首1本を失った。
「ごめんなさい!ギマンさん!もう大丈夫です!目が覚めました!」
「悪ぃな。まだまだ覚悟が甘かった。助かったぜギマン」
「良くもギマンの前で嘔吐する様を...許さんぞ貴様!」
リーシャちゃんは自分に魔法を撃ったのか身体中に細かい傷、カイルは左腕に浅くなり傷がある。カオリに至っては弓矢が右手の甲を貫いていた。
痛みと俺の錯覚込みで麻痺状態を解除したのか。フッ。さすが俺の信じた仲間達だ。
首を1本失ったが、またすぐに生えてきた。だが、奴は何故動ける?と言った表情を浮かべ3人を見た。
やっとイイ面してくれたな。
さぁ第2ラウンドだ____
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