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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜は情勢を学ぶ

 砂漠を中心に置いたジオラマの、左側に三つ子の住む国があるように眺める。

 上が北になり、高い頂をいくつも持つ山脈が長く伸びている。砂漠の上辺を縁取り、右は東側の国々の端まで、左は西側の国々の反対側の端の海まで繋がっている。未登頂の山も数多い。更に北には極寒の地があり、未踏の地である。

 下の南には緩い丘陵地が広がっている。北ほどではないがいくつかの山がぽこりぽこりと飛び出てあり、その間を森や沼地が覆っている。ここもまた未踏の範囲が広い上、更に南には果てしない崖があると言われている。「見た者がいない秘境」と語られている伝説の信ぴょう性は高くないのだが、何しろ未踏であるからどちらにしろわからない。

 砂漠の左、西側にはいくつかの国があり、さらに西に海がある。どこの国もそれなりの規模と国力を持ち、国交状態もよく、100年近くの落ち着いた情勢を保っている。

 対する右、東側は小国が砂漠を縁取り、その東にいくつかの国、もう少し先にもう少し大きな国がふたつ、そして海に至る。

 東の海と西の海の間には、つまりこの砂漠を囲む大陸の背中側には、もうひとつの大陸があるが、それはこのジオラマに乗せるには大きすぎる。そのうえ、まだわからないことが多すぎる。そもそも大陸であるかも不明だ。

 とにもかくにも、この東側の国々は常に情勢不安と戦ってきていたが、この十数年は比較的落ち着いた状態であった。それは宗教の力が大きく働いている。さまざまな宗教、宗派が各国の争いを抑え込む方向で纏まって行動していたおかげだ。

「さて、ここまではわかるかねぇ」

「はい」

 夜はジオラマを見ていた目を恩師に移して頷いた。もともと地理や歴史の話は好きなのだ。

「なんとなく」

 昼は心もとなそうに夜を見てから恩師を伺った。もともと政治や宗教に興味が無い。

「なんとなくで構わないよぉ。詳しく知る必要はないから。なんとなくでも知っていれば、何かを決める時の足しになるからねぇ」

「はい」

「わかりました」

 昼と夜は揃って頷いた。

「それで、ここで内乱が起こったわけだけれど」

 ふたりともざっくりとした話はもう前に聞いている。内乱が起こり、東側がたいへんだということも、朝が向かった方角のきな臭さも、本当にざっくりとしたことを聞いていた時には朝がどこでどうしているかの手がかりすら無かったので、どうしても学びより心配が上回っていた。

 朝からの手紙が届いたことで、心持ちにゆとりが出てきたことは確かだ。恩師の説明も前よりも聞きやすいのは、ジオラマのせいだけではないだろう。

 恩師の指の先は、砂漠の縁にある小さな国をトントンと叩いた。どうやら朝が巻き込まれたらしい内乱が起こった国は、宗教指導者が国政の中心部にいて、近隣の小国の要となっているらしい。

 そこで内乱が起こってしまった。

「近隣国への波及が思っていたより早かったらしくってねぇ」

 恩師は小さな手を、今度は顎にあてて溜息をついた。

「要が壊れれば、扇はバラバラだ」

 そして両手をひらひらと動かし、昼と夜は小さく息を呑んだ。

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