朝からの手紙
昼、夜、久しぶり。元気ですか。久しぶりなんて言葉を使う時が来るなんて、いままで思ったこともなかったけど。
「私も思わなかったわ」
「私も」
昼は帰ってるだろうけど、夜はどうかしら。たぶん帰ってると思うんだけど、もしまだだとしてもじきに帰ってくるわね、きっと。
「なに、これ」
「帰ってたね、大当たり」
私は冒険を求めて東に向かって、門から砂漠に出ました。いま考えると、砂漠に冒険って、馬鹿みたいなんだけど、あの時私は案外真面目にそう思ってたの。浅はかだったわ。
「浅はかだとわかって良かったわ」
「冒険、ってやっぱり朝っぽいよね」
それに実はもうあの時の気持ちがよくわからなくなっていて、なんでそんなことを考えたのかも曖昧なの。言えるのは東にあったのは冒険というより無謀だったし、砂漠はひとりで越えることができるところではないということ。
「……わかってなにより」
「え、朝、大丈夫なのかしら。砂漠はひとりでは越えられないって、じゃあ朝は」
「こうして手紙を書いているんだから今は大丈夫よ。続きを読むわね」
「そうね、お願い」
砂漠に出た時のこととかは帰ってから話すわね。とりあえず、昼も夜も、ひとりで砂漠に出たりしないで。
「行かないわ」
「行かない。大丈夫」
私は運のいいことに砂漠である人に助けられました。本当の名前は知らないんだけど、今はハバラと呼んでいます。
「知らない? ハバラ? 誰? 運がいいの?」
「……本当に大丈夫なのかな」
ただ、助けられて連れて行ってもらった国で内乱が起こってしまい、そこから移動を重ねて、いまは町から離れた寺院でお世話になっています。とても静かでいいところです。私はこのところ尼僧でいます。
「尼僧でいます。って、なにかしら。出家したってことかしら」
「……無理じゃないかな」
体調はいいし、ご飯も美味しいし、こうして手紙を書くこともできます。心配をかけているとは思うけれど、心配しなくても大丈夫。また手紙を書くね。ふたりとも体調には気をつけて。水路を直さないといけなかったね。悪いけれど、よろしくお願いします。
「朝より。って、で、これだけ? 場所とかなんにも書いてないじゃない。結局、どこにいるのよ」
「元気なのよね? なんか、ざっくりとしていて」
「ざっくりとしていてよくわからないところは朝ね。……そうね、元気なんだと思うわ」
「そうね。朝だね」
「ひとまず、食事にしましょう。パイを切るわ」
「うん、そうね、そうよね。お茶を入れるね。それから」
「それから、もう1回読んで。どうするか考えましょう」
「うん、そうね」
食事をして香り高いお茶を飲んだところでやっと、夜と昼は朝の無事をしっかりと感じとった。




