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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜に手紙が届き、朝は手紙を書く

「久しぶりじゃない?」

「そうね、10日ぐらい、かしら」

「やっぱりなかなか迫力があるわね」

 苦笑する夜に、昼は同じくらい厚みのある封筒と、薄い1通を差し出した。

「私にも?2通?」

「そうよ。厚い方はこの間の人じゃない?」

 差出人の住所に見覚えがあった。薄い方は更に西の国の名前が書いてあるが、クセのある字が読みにくく、詮索するにも気がひけた。お世話になったといっていた少年からと思われるが、その気になれば夜から教えてくれるだろうと考え、昼は自分に来た封書を溜息と共に開いた。

 しばらくそれぞれの手紙を読んでいたふたりは、揃って眉間に皺を寄せた顔をあげ、ほぼ同時に呟いた。

「内乱?」




「手紙? どこに、ああ、そうか、僧院か」

 にやりと笑ったグラカエスに、朝は「ええ、まあ」と言うにとどめた。

「そうだな、封筒などは用意できるが」

 少し考えた後、グラカエスは「どうするかな」と続けた。

「俺はしばらくここを離れられない。俺の名前で出すものなら不安は無いが、あなたの名前や宛先が出ては困るかもしれないな。そうだな、時間がかかるが、いくつか経由させるか」

「あの、ご迷惑をおかけするなら無理には」

「いや、手紙ぐらい迷惑な事もない。ただ、なにも無いとしても、ハバラがあれだけ慎重に行動しているんだ、ちょっとした手間を惜しんで何かあった方が後々の災いになりかねない。だから用心をしたいだけだ。気にしなくていいんだよ」

 そして朝は手紙を書き、三つ子の村の住所を書かれた封筒はグラカエスにも見られないようひと回り大きめの封筒に入れて封をしてからグラカエスに渡し、グラカエスは朝の目の前でそこに宛先と自分の名前を書き入れると、もうひと回り大きい封筒に入れ、一筆、「中の封書を郵送してほしい」旨書き記したものを同封してから封をして宛先と自分の名前を再び書いた。

「これで良し」

 グラカエスがペンを置いた時、知らずに息をつめていた朝の肩から力が抜けた。

「お手数をおかけしまして」

「いや、たまにあるんだ。こういうことも」

「たまに」

「たまにな」

 笑いながら、グラカエスは封筒を手伝いの尼僧に託すために部屋を出て行った。

 朝は溜息と一緒に、とりあえず不安を吐き出した。無事に着くかはわからないし、万が一ふたりを何かに巻き込まないとも限らないが、まだ見えない未来をただ不安がっていても仕方がない。

 グラカエスが持ってきてくれた菓子を食べてから、手強い本と地図に向かい、朝は自分にできることを再び始めた。



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