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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は両替屋へ

 両替屋の門扉は商店街の中では地味な色どりで縦に長く細い。訪いを告げるベルの紐を引くと、リンリンを可愛らしい音がして、朝は頬を緩ませた。

「どなたさま?」

 扉を開けた男性は朝よりも小柄で朝の倍の年に見える。だが怪訝な顔は、ヒナダが愛想よく寺院の女性に紹介されたと言えば、さっぱりと消えて、扉と同じく細長い、玄関へと続く道を案内してくれた。

 道の両側は高い塀に囲まれ、空も細長く切られている。両隣の建物も完全に見えなくしている、黒光りする壁を不思議そうに見る朝の袖をハバラが引くまでもなく、男性は「その壁は悪意を跳ね返しますのでお気をつけください」と、高めの声で注意を促した。

「え?」

 朝が聞き返す言葉には答えず、男性は玄関の重たい扉を開け、再び腰を曲げた。

「ようこそ、いらっしゃいませ」



 玄関の中は存外に広く、三つ子の家がふたつかみっつは入りそうで、表よりもよほど店の様子をしていた。敷居に遮られた場所で会話をしている人たちがあちこちにいれば、隅でお茶を飲んでいる少年もいる。小さな鞄をしっかりと抱えているので、お使いなのかもしれない。お茶に添えられているお菓子を、大事そうに食べている。

「少々お待ちください」

 そう言ってさらに奥へと行った男性は、すぐに戻ってきて朝達を大女将のいる部屋へと誘ってくれた。

 そこは奥の扉を抜けて階段を2階分上がったところにあり、小さな窓が3つ仲良く並んでいた。

「見ない顔ですね」

 窓の前の長い机に向かい腰かけていた女性が首を傾げて呟いた言葉は、静かな部屋の端の朝にもわかる言葉で、低く落ち着いた声だった。


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