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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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ギュイット、手紙を受け取る

「院長様から手紙を預かってまいりました」

 元気な声に振り向いたまま、ギュイットは「そうですか」と軽く頷いた。

「では読んでください」

「……ギュイット様、私にこの文字は読めません」

 まだ見習いの少年僧はやっと文書の管理の手伝いを任せてもらえるようになったところで、意気揚々と手紙を開いたが、流れるような文字が学んでいるものと違うことにしばらく目で追ってから気がついた。

「私が知っているものとなんだか形が違います」

「おや」

 ギュイットは少年僧の方へ見えない目を向けて首を傾げてから、「それではフォン師を呼んできてください」と使いに出した。

 少年僧が読めないのなら仕事の言伝などの手紙ではなく、多少は憚られることが書かれているのかもしれない。読めることができるものを限っているなら、差出人は院長が関わり合いになりたくない者だろう。それでも彼は公平たれという主張を曲げることはできないから、こうして見て見ぬふりをしてくれるのだ。おそらく中身は先に読んでわかっている。危険が潜んでいれば少年僧を遣わせたりしないだろう。

「呼んだかい」

 しばらくすると女性にしては低く落ち着いた声が聞こえた。

「ええ、どうやらハバラから手紙が届いたようなのですが、共通語で書かれていないようなので、読んでいただけませんか」

「ハバラからなんてよくわかったね」

 フォン師は手近の椅子を引いて腰掛けながら少年僧から手紙を受け取ると、「なるほど」と頷いてから「お茶はいらないよ。飲んだばかりなんでね」と彼を部屋から下がらせた。

「本当に古語が好きだねぇ。さて、どんなことが書いてあるやら」

 楽しそうだけれど、やっぱり心配も混ざっているなとギュイットは思いながら、「よろしくお願いします」と耳を傾けた。

 



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