表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
226/247

夜の覚書・2

 あの時は恋をしているのだと思っていた感情が、夜はすでに思い出せない。そしてアシに対して持っているこの不思議な感覚はこれまで知らなかった。

 夜はちょっと笑った後、もう1杯コーヒーを入れて、座り直すと書きかけの紙に向き直った。

「私が会った人。そして昼が会った人」

 ジャンジャック以外にも、昼を助けてくれた人たちにはお礼の手紙を夜からも書いている。その後もいろいろとお世話になっているから、また手紙を書いた方がいいかもしれない。

「お医者さん、看護師さん、サマンサ・フロイラ夫人、ソー事務所長」

 たくさんの人から親切と心配を受けている。ふふふと笑いながら、夜は学園都市で出会った人々も付け加える。

「ユウノ・エンゲさん、リ・シャンイー教授、ワンソウ夫人、カナイ・エンイ博士」

 知り合ってからそれほど経っていないのに、すでに家族のように親しくなっているが。

「そうだわ、みんなもともとはこの国の人でなかったのよね」

 カナイ・エンイ博士の話が教えてくれたことを思い出す。その時、この国は余所からきて落ち着くにはちょうどいいのかもしれないと、昼と話したものだ。

「ワンソウ夫人は教授の奥様と同郷ということは、隣の国の人なのね」

 教授と亡くなった教授の夫人は学生時代に知り合ったと、ワンソウ夫人が遠い目をして話してくれた。ワンソウ夫人は国を出るのを躊躇っていたらしいが、教授の妻となる女性をひとりにするには忍びなかったと言っていた。ワンソウ夫人と結婚した男性は夫人を追いかけてきたらしい。夫の話をする時、ワンソウ夫人の頬が染まるのがかわいらしい。

「そう言えば、亡命したと言っていたけれど」

 ユアン・ラングラーはジャンジャックと同じ国の人のはずだと、ようよう夜は思い出した。

「この国からじゃないのね、でも」

 ジャンジャックが言うには、ジャンジャックの国だって取り立てて変わりはないということだった。ならなぜ。

「亡命する必要があったのかしら」

 夜はまたひとつの疑問を紙に書いた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ