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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼は声をかけられる

「手紙を預かってきたわよ」

 昼はジャンジャックとふたりで恩師の元を尋ねてから買い物を済ませたところだった。思っていた以上の荷物に、いつもの荷車だけでは足りなかったので、ジャンジャックがいてくれて助かったと思っていた。もっとも、彼が来たことで入り用な品物が増えているのも確かだが。

 そうしてたくさんの荷物を持って家へ戻ろうと、足を踏み出した時、いきなり声をかけられたのだ。

「ここで会えてよかったあ。連絡しようと思ってたんだけど、どう書こうか迷っちゃって。もうこれは行っちゃった方が早いかなってここまで来ちゃった」

 明るい金色の巻き毛が四方八方に跳ねている。明るい青い瞳が、そばかすの散った日に焼けた顔の上で弓なりになっている。昼より少し背が低い。そしておそらく昼より少し若い。と、思われた。

 そしておそらく。

「夜、結婚してたの?」

 その人は昼と、昼の後ろで不思議そうに顔を傾げているジャンジャックを見比べながらそう言ったので、昼はやっぱり、と思った。

「私は夜ではありません。ええっと、あなたは」

 夜から聞いていた名前は確か。

「モリー・ロビンソンさん?」

 モリー・ロビンソンは素直に頷いた。

「もちろんよ。スパイに向いていないモリーちゃんよ。私を知っているんだから夜でしょう。私を忘れちゃったの? それなら名前も出てこないか。だいたい、夜みたいな美人がふたりもいるわけないんだから、私は間違えようがないし」

「3人だよ」

「え?」

 モリーはジャンジャックを見上げて、首をずいぶん上に向けて尋ねた。

「なんて?」

「3人。そっくりな美人さんは3人。それに俺たちはまだ結婚してないよ」

 昼は結婚という言葉をどうしようかと束の間戸惑ったが、聞かなかったことにしておけばいいだろうと、ジャンジャックの嬉しそうな声は忘れることにした。

「私は昼です。夜は家にいます。ええっと、家にいらっしゃいますか?」

「昼ちゃん、いいの?」

「もちろん行くわ」

 ジャンジャックとモリーの言葉に、昼は微笑んで頷いた。



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