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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝からの手紙・2

 朝が受けた衝撃を、昼と夜が同じように感じるわけではない。朝はなるべく客観的にと思ってか、かなり端的に状況を書いているようだ。言葉をかなり選んでいるし、怖かったとはひと言も書かれていない。

「朝が眠れなかったなんて」

 それでも昼は朝が目にしたもの、どこでも寝られる朝が「寝られなかった日もあった」と、つい書いてしまうほどのショックを受けたものを思って自分の肩をさすった。せめて傍にいたならとも考えてから、

「一緒にいたとしても、私では無理かもしれないわ」

 と呟いた。

 そんな昼の手を、夜がまた軽く叩く。

「昼でも私でも、一緒にいられればそれだけでも良かったのにと思うけれど。でももう過ぎてしまったことだし、無理を悔いても仕方がないわ。それに」

 夜は読み終えたばかりの手紙の最後近くをもう一度読み上げた。



 ハバラがいてくれるおかげで、私は旅をしている途中でもいろいろなことを教えて貰えるの。それにヒナダが合流してくれたおかげで、あちこちの話も入ってくるし、安全に関してのハバラの負担も減ったみたい。私がそんなことを言うのはお門違いかもしれないし、ヒナダを危険に巻き込んでしまうのは申し訳ないけれど、そう言ったらハバラに「今更か」と怒られたし、ヒナダには「ちゃんと金になる仕事になっているから気にするな」と笑われちゃった。



「いまは元気そうだし」

 夜が微笑むと、昼も「らしいわね」と笑ってから「そうそう」と言った。

「さっきも思ったんだけど、ヒナダさんのお金になる仕事ってどういうことかしら」

「私もそれは気になって。ハバラさんは修行として朝についていてくれるらしいけど」

「凄い修行よね」

 昼と夜は顔を見合わせてからしみじみと頷きあった。

「ヒナダさんの仕事ってなんなのかしら」

 昼が首を傾げる。

「朝とハバラさんから聞いた話でしかわからないけれど、というより、ハバラさんからは信頼できる男だから、としか言われてないのよね」

 夜も同じように首を傾げてから、手紙へと視線を戻した。

「私たち、一気に知り合いが増えてしまって混乱しているわね」

「ほんとうに」

「明日はわかったことを纏めるつもりだったから、知り合った人たちの覚書も作っておくわ」

 夜の言葉に、昼は強く頷いた。

「それいいわね。お礼を伝えるにもきっと役立つわ」

「確かに大事なことね」

 そしてふたりはとにかく微笑んで一日を終えることには成功した。




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