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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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3人からの手紙

 リ・シャンイー教授からの手紙は、ワンソウ夫人の半分どころか三分の一もなかった。



 家を手入れしている。いつでも帰ってきなさい。同封したのは昨今の地政における資料の一部だ。参考にしなさい。早く帰ってきなさい。



 教授の角ばった字が斜めに傾いて2行ほどで終わっている。同封の資料というのは最近発行され始めたという近隣のいくつかの国の新聞と1冊の本である。

「面白そうだわ」

 夜はそれらに目を走らせるとふむふむと頷いた。

「ちょっと難しそうね」

 昼は怯んだように本の表紙を見た後、次の手紙を開いた。

 カナイ・エンイ博士からの手紙も短かった。



 リ・シャンイー教授が家の手入れを始めてしまって騒がしいことこの上ないけれど、あなたたちは気にしなくていいのよ。私もなるべくお邪魔して寂しくないようにしているし。存外に寂しがり屋なのよね。同封したのは最近調べてわかったことの報告書をいくつか纏めてみたものなの。何か気になることがあったら聞いてね。いつでもあなたたちに会えることを楽しみにしているわ。体には気をつけて。



「この紙、見たことがないぐらい薄いのね」

 昼は1枚を窓からの日射しにあてて目をぱちぱちと瞬いた。

「そうね、この厚みなのに6枚もあるし、字が滲んでいないわ」

 インクの質の違いもあるのだろうが、紙のきめがとても細かい。きっとペン先もそれなりに高価なものに違いないとふたりは溜息をついた。

 最後に開いたユウノ・エンゲからの手紙はたったの1行だった。



 最新理論の発表が上手くいった。教授も博士も夫人も姦しい。早く戻っておいで。



 昼と夜は顔を見合わせて苦笑した。


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