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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼は便りを受け取る

 郵便を出しに行くと、昼宛に夜から1枚のハガキと、封書が学園都市から4通、サマンサ・フロイラ夫人から1通届いていた。電信速は高価であるからか、今回は届いていなかった。

 つまり、朝がどこにいるのかはわからないということだ。

「俺宛?」

「三つ子ちゃんのところに通っているのって、あんただろう」

 郵便を受け渡す叔母さんが興味津々というていでジャンジャックに薄い封書を差し出す。

「あ、確かに俺宛だな。……親父か」

 差出人を見て、ジャンジャックが眉根を寄せた。

「帰られた方がいいのでは?」

 こうして村に来るだけのことですら頼ってしまっている後ろめたさと、いい加減帰ってもらった方がいいのではとの心配で尋ねれば、ジャンジャックは困ったような顔をした。

「そう、そうだな。1度は戻った方がいいかもしれないんだけどさ」

 薄い封書を透かすように天井の灯り取りに向けて仰ぎ見る。人前で読むのは憚れるが、おおよその中身はわかっているという感じだ。

「こちらは大丈夫ですから」

「いや、大丈夫じゃないだろう」

「……まだ決めたわけではないのですが」

 昼は叔母さんに挨拶をして店を出た後、少しだけ声を落として続けた。昼はもともと声を大きく出す方ではない。だが、夜ほどではないが、昼も朝も声がよく通る。

「しばらく寺院の宿舎でお世話になろうかと思っているんです。朝と夜ともそう話していたので」

「でも畑のことも考えれば家にいたいだろう」

 ジャンジャックは初めて三つ子の家に行った時の昼を思い出しながら言った。

 傍らにジャンジャックがいることを忘れたかのように咲き誇る花の前で号泣していた小さな背中に、ジャンジャックは手を伸ばすことができなかった。

「そのために帰ってきたんだろう」

 家にいるのが、昼には一番大事なことなのだろう。

「夜が帰ってくるまでです」

 昼は手にしたハガキを見ながら微笑んだ。

「それほど先のことでもなさそう」

「そうか」

 ジャンジャックは「じゃあ」と続けた。

「寺院に入ったら、1回帰る。でもすぐに戻ってくるから、安心して」

 昼はちょっと考えてから、「ありがとう」と言い、ジャンジャックはまたも顔を真っ赤にしながら、「おう、任せて」とぎこちない笑顔を返した。

 







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