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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝はラバで行く

「……崩れるな」

「ああ、次の町でしばらく時間を取るか」

 空を仰いでいたハバラとヒナダが頷き合う。ふたりが揃うと、物事が早く進む気がする。

 朝はラバの背に揺られながら、前を歩くふたりの端的な会話を聞きながら思う。

「仕入れもできそうか」

「なんとかなるだろう。ちょっとそれらしいもんを買い集めるさ」

 朝が「それらしいもん」と呟くと、聞き留めたヒナダが振り向いてにやりと笑った。

「お嬢様の好きなものも仕入れますからね」

 それが乾燥果実や木の実だとすぐにわかって朝は破顔した。

「楽しみだわ」

 気持ちを弾ませながら答える。

 合流した町からの街道は広々として均されている。交易のための道だからだろうが、内乱の影響で行きかう人々が常よりも多いそうだ。難民もいなくはないのだろうが、どちらかと言えば商売の販路を内乱の国から遠くへと求める人々が主らしい。だからその人々に紛れた方が得策と判断して、ロバより大型で馬よりは庶民に手の入りやすいラバまで早々に用意したヒナダの腕前は、ハバラをも唸らせた。

 ラバは朝の鞍の前後に沢山の荷物を括りつけているにも関わらず、軽快な足取りで、いっそご機嫌な様子でハバラとヒナダの後をついていく。

 朝は商家のお嬢様という役割だ。ヒナダはそのお付きの奉公者という役回りなので、言葉使いは気をつけろと言われている。3人の中で一番立場が上だと意識しろと言うのだが、付き添いとして雇われた護衛の僧侶というハバラに対してはそうそう無礼でもいられないでしょうと言えば、「これまで通りで十分だ」と言われ、朝は少々憮然とした。

「まるで無礼者のようだわ」

「無礼とまでは言わない」

「お嬢様はちょっとばかし傲岸不遜なぐらいでいいんだよ」

 道はまだ長い。

 そのうち慣れるだろうとヒナダがいい。もうすでに慣れているだろうとハバラは顔を顰めた。

 そうこうして数日が過ぎ、朝がようようラバには慣れてきた頃、道の先に長い城壁が見え始め、わかっていたかのように天気がぐずつく気配を見せ始めたのだ。






 

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