朝は再会を喜んでいる
「何年も音沙汰なしで安心してりゃ、忙しなく呼びつけやがって」
ヒナダの開口一番の声を聞いて、朝はああ、ヒナダさんだと、ほっとした。それほど長く一緒にいたわけではないのに、経験したことの印象が強いからか、とてもよく知っている人のようで安心するのかもしれない。
「悪いな。で、用意できたか」
「ほらよ」
放り投げられた袋はふたつ。それらを危なげなく受け取ったハバラは、「けっこうあるな。助かる」と、少し驚いたようだった。
「なめんなよ、俺は徹底的にやるんだよ」
港町の小さな家や森の中の隠れ家を思い出せば、ヒナダがきっちりと仕事をする性格なのはわかるというものだ。
ヒナダが用意した袋には特徴的な文様が織り込まれたショールが2枚と、旅に必要な細々とした物で、ハバラが「この辺りでは調達しにくいので困っていた」のを用意してきたということらしい。
「もっとも、一番大事なもんはこんなかだけどな」
ヒナダが自分の頭を人差し指で軽く叩けば、ハバラは「確かに入っているんだろうな」と眉を上げる。
「信用できねぇってんなら、帰ってもいいぜ」
「聞いてからだ」
そう言いながらも、ハバラは小さな火鉢で沸かした湯で濃いコーヒーを入れてヒナダに渡しているから、疑ってはいないのだろう。ヒナダは「なかなか手に入らない」コーヒーが好きだと、朝も聞いたことがある。
――そういえば、あの飛行船はどうなったんだろう。
なんとか隠しおおせた、つもりの飛行船はまだあそこにあるのだろうか。
何年も前のことのような、昨日のことのような。
それでも「これはあんたに」と手渡された干した果実をゆっくりと味わいながら、どうしてだかはわからないけれど、ちゃんと合流できたヒナダと、それを当たり前のように受け止めているハバラに、これが現実だと感じて、やっぱり嬉しかった。