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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼はひと息いれる

「たいへんお世話になりました」

 昼は家に帰り着いてからすぐに畑や家の手入れをしてもらった人々にお礼を言って回った。誰もが「ゆっくりしなさい」とねぎらってくれたし、「いつでも言って」と笑ってくれた。

 それでも昼は、ひとりもかかさずに、そして一か所も欠かさずに三つ子の畑を見て終えてからやっと、自分のためにお茶をいれた。

「……やっぱりひとりで帰って良かった」



 昼と村まで来たジャンジャックは、馬車を降りて1番に尋ねた寺院で、女性がひとりで暮らす家の屋根の下に入るとは、と青ざめた恩師の強硬な配慮により、荷物とともに送り届けるだけしかできなかった。ジャンジャックの傍らには常に少年僧がふたりも張り付いていて、寺院に戻るまで離れなかったため、ジャンジャックは寺院から三つ子の家に様子を見に通うことで折り合いをつけるしかなかった。



 荷物を片付けてそうそうに寺院へと戻されたジャンジャックを見送ってからのあれこれだったので、もうお茶よりは食事が欲しい時間ではあったが、とにかく昼はお気に入りのお茶の香りを深く吸い込んで家へ戻った実感を味わった。

 こうしてひとりきりになることに寂しさを感じないわけではないが、どうも最近はずっと誰かが傍にいて、誰かの心配をして、誰かと話をして、新しい話を聞いて驚いてばかりだったので、なんだかへろへろになってしまっていた。

「明日、来年の作付けを考えて」

 それを朝と夜に届くように送ろう。

 もうふたりがどこにいるかわからないけれど、連絡の手段はあるとわかっている。

 昼は今はそれで充分な気がしていた。寂しさは、まだスパイスどまりだ。

 もっとも、次の日のまだ薄暗ささえ残っている時間にジャンジャックが息を切らして三つ子の家に来た時に、なんとも言えない複雑で少しばかり鬱陶しい感情を知ることにもなるのだ。



 

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