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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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ジャンジャックは気をひきしめる

 ジャンジャックは昼と夜を見ていると、本当に似ているなぁとなんだか感激してしまう。綺麗な顔だちの姉妹は、話し方も笑い方も驚き方もそっくりだ。ふたりが揃って笑うところを見ると、感激で嬉しくなってしまう。

――でも昼ちゃんはわかるなぁ。

 ジャンジャックを見た時、昼はいつもちょっと不思議そうな顔をしてから話し出す。夜はそんな表情を浮かべない。そのちょっと不思議なものを見るような表情が可愛らしいと、ジャンジャックは思う。もちろん、それだけが理由ではないのだが、ジャンジャックには夜が、というより昼がわかる。

「……ひとりで大丈夫かなぁ」

 それでもそう呟いた時の視線の先にいたのは夜で、ジャンジャックは夜だとわかっていた。



 夜がひとりで先に学園都市を出ることに、みんな一様に眉を顰めた。

「どちらにしろ、ここからは別々に進むつもりだったので」

「でもさ」

 夜の隣で心配そうに見つめながら、ユウノ・エンゲは続ける。

「いっそ冬を越してからにしたらいいんじゃない? 村にふたりで戻るなら、そこのお兄ちゃんも家に帰れるでしょ」

 手のひらで示されたジャンジャックは慌てて首を横に振った。

「いや、俺、行くよ。大丈夫だから。俺、ふたりとも心配だし」

「ありがとう」

 夜が微笑むと、周囲の顔もみな微笑む。

「そうですねぇ。いっそおふたりともここで冬を越されればいいのではないでしょうか。村のおうちはジャンジャックさんが見てくださいますでしょうし」

「え、うん。俺、家の手入れは得意だけど。俺ひとりで行くのはなんか」

 ワンソウ夫人の名案だとばかりの言葉に、ジャンジャックは大いに慌てた。

「そうだ、それがいい。部屋の模様替えも済ませよう!」

 すっかりふたりを娘のように扱い始めているリ・シャンイー教授は、

「朝の部屋も造ろう!」

と、会った事のないひとりも娘に加えている。

「ありがとうございます。でももう列車の予約は済みましたから」

 夜は駅まで行った時に、ついでに朝へスカーフを送っている。駅の傍には電信速を送る施設もあり、グラカエスの寺院には先に知らせが届くようにもしてある。結局、朝と夜の名前は昼が、昼の名前は夜が刺繍をした。

「途中までは私も行くから大丈夫よ。私の研究助手として来てくれれば、その先を付き合ってあげることもできるんだけどね」

 カナイ・エンイ博士は隣国でのフィールドワークで途中まで一緒の旅路になる。それもあって、夜は早めに学園都市を出ることにしたのだ。

 博士も心配なのは変わりがない。フィールドワークには他にも助手の男性がふたり同行するので、夜が増えても、寝る時にひとりでないぐらいの差しかない。

「途中までご一緒できるだけでもありがたいです」

 夜がやんわり断ると、皆がちょっと残念そうな顔をする。



 そんなやりとりの横で昼は思いのほか呑気な顔をしている。昼も夜も、おっとりしているようで意志が固いのはとてもよく似ている。ここまできたら、止めても仕方がないことはわかっている。

 ジャンジャックは昼の心もすっかり決まっているのを見て、とにかく自分は昼の安全を守れるようにと気持ちをひきしめた。









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