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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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夜は思い、昼は思う

――わかるのね。

「おはようございます。……夜さん」

 庭先でなにか、恐らく教授が壊したと言っていた家具のひとつを直しながら、ジャンジャックはひょっこりと顔を出しただけの夜を見て、昼ではないと気がついたようだ。

――朝がいてもわかるかしら。

「おはようございます」

 返事をしながらちょっとだけ意地の悪いことを考えて、もう少し意地悪く思う。

――たぶん、昼はわかっても、私と朝はわからないかもしれない。

 ハバラは三つ子を見分ける。アシは夜と昼を似ていないと言った。ジャンジャックは、そっくりと言いつつ、夜と昼が違うとわかる。

――面白い。

 両親以外にきっちりと見分けられたことがないからか、この違いは面白いと、夜は感じる。リ・シャンイー教授もユウノ・エンゲもワンソウ夫人も、「私をのけ者にする気っ!」と乗り込んできたカナイ・エンイ博士も、昼と夜を見分けることをすでに諦めているというのに。三つ子が揃った寺院では、グラカエスもフォン師も僧侶達も、思いやりを見せながらかなり困っていたというのに。

――たぶん、基本は感情なのね。

 夜がちょっと首を傾げてそう思った時、横からひょっと昼が顔を出して「おはようございます」と言い、それを見たジャンジャックは、「やっぱりそっくりだなぁ」と目を丸くした。これで何度目かわからないけれど、ふたりが並ぶのを見る都度、ジャンジャックはきちんと驚く。昼は毎回苦笑するけれど、夜はそれがちょっと嬉しい。



――夜はいい人なのよって言うけれど。

 昼はそれでも未だにジャンジャックのことはよくわからない。

――なんでこんなに親切なのかしら。

 ジャンジャックは納屋に置いてあった壊れた家具から、中庭の柵から、夜の手が届かなかった屋根の上まで、次々と手を入れていく。

「仕事は大丈夫なんですか?」

と聞けば、

「ちゃんと任せてきたし、たまには帰るから」

と答えが返ってくる。

――たまに、でいいのかしら。というか、たまには帰るって、ずっとこっちにいるってことかしら。

 どうしてここまで親切なのか不思議だわと言えば、夜はうふふと笑って、そうねぇと言う。

――夜が言いたいことはわかるんだけれども。

 つまりジャンジャックの気持ちということだけれど。

 昼はやっぱりそこがよくわからない。そして少々くすぐったい。




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