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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は噂の話を聞く・3

「あのふたりは噂を信じていたからあんな事をしでかした」

「それは、誘拐ではなくて、王族を助けようとしたということ?」

「そう。王族を狙う者もいれば、助けたいと思う者もいる。あのふたりの故国は東の果ての国の隣国で、ほとんど同じ国のようなものだから、王族を崇める者は多い。捕虜の会話から王族を狙っていたと聞いたため、許せなかったと言っていた」

 ぼかんと口を開けている朝を見たハバラは、「まあ、お前が王族だとは思っていなかったから安心しろ」と付け加えた。

「そう。えっと、それは良かったわ」

「ああ、顔を見て王族と思う者はいないだろう。……目立つことは変わりはないが」

 朝は美しいが、東の国の王族のあの緑の、そして不安定な視力で揺れる瞳を持っていない。木の実の形の力強い目を見れば、王族と関連付ける者はいない。そこはハバラが朝を連れていっても構わないと思った理由のひとつになっていた。

「あとは尼僧の服だ」

「尼僧の?」

「巡礼者か尼僧に紛れているという噂があるんだ。これはグラカエスの寺院の難民たちから出た話らしい。まだそれほど広がっていないし、時期があっている」

「あそこで私を見た人がいて、ということかしら」

「ちょうど同じ顔が3人揃っていたわけだから、3倍、それ以上に目立つ。難民に話をしたのは僧侶か、尼僧か、手伝いかもしれないが」

「なるほど」

 同じ顔で目立つことは、それこそ生まれた時から知っているようなものだ。朝はそこに疑問は持たない。そして人の口に戸が建てられないこともしっている。しきりがあるわけでもないから、こっそりと覗きに来ることもできただろうし、三つ子が揃って畑の世話などをしていれば、それなりに目立つことはよくわかる。

――3人揃ったことが、裏目に出てしまったということかしら。

 朝は荷馬車で死んでいった男の顔を思い出し目をつぶった。賊を庇う気にはなれないが、死んでいった原因のひとつに関わっていたとしたら、気持ちは重くなる。だがそれでも朝や、昼や夜が悪いわけではないこともよくわかる。

「……そこで、ヒナダに頼んだ」

「そこで、ヒナダさん?」

 ハバラが片方の口端を上げ、笑みを浮かべた。



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