表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
184/247

朝は噂の話を聞く

「噂にはさまざまな尾ひれがついて、俺たちが前に聞いたものの別のタイプが増えていた」

「別のタイプ、とは」

「内乱に関係した誘拐、人身売買、魔女の横行」

「魔女」

「デマだ」

 ハバラは一刀両断にしてから、「1番流布しているのが、王族の行方不明だ」と言った。

「この内乱は東の果ての国が陰で手を引き、その中心部にいた王族が行方不明になっている。その王族を見つければ報奨金が貰える」

「王族。報奨金。ええっと、それは」

「デマだ」

「そうなの?」

「ああ」

 ハバラは茶を飲み干すと、ポットに新しい茶葉を用意すると、脇に置いた火桶で湯気を立てていた薬缶から湯を注いだ。何も言わずに手を差し出すので、朝は「ありがとう」と、自分のカップを渡した。

 ふたり揃ってひと息入れてから、ハバラは話の続きを始める。

「あの内乱は周辺国の事情と、宗教との軋轢から起こっている」

 そのあたりの事情は、ハバラが砂漠にいたことと関係があるらしい。だがそれを詳しくは教えてくれないだろうと、朝もわかっている。

「そんな遠くの国の王族など入り込む隙はない。と言うか、どの国にも新しい権力は余分でしかないからな。必要ないものを入れて主張が弱まっても困るし、分け前が減っても困る」

「分け前」

「そんなものだ」

「はあ」

 なかなか俗な理由だが、そんなものかもしれない。もっとも、「分け前」は朝が想像するようなことを上回ったものであるのは確かだ。

「それに東の国にも内乱に手を貸す理由が無い。遠いところの争いに関わって得るものはほとんどないうえ、自国にも問題を抱えている。手出しをしている暇などない」

「問題」

「どの国にもある」

「そうね」

 それはそうだろう。朝は思う。のんびりとした村の中でさえ、小さな諍いから政治的な派閥まで存在する。面積や人口が増えれば問題はおのずと増えるというものだ。











 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ