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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は夢を見た

「夢を見たわ」

 朝の開口一番の言葉に、ハバラは「眠れたのなら良かった」と言った後、「寝苦しいようには見えなかったが」と呟いた。

「よく寝たと思うんだけど、ずいぶんはっきりとした夢だったわ」

 それから慌てたように手を伸ばした。

「あ、忘れていく」

「夢は忘れるものだ」

「でも、夜と昼が大きな木の下で私を呼んで、いた、と思う」

 目の前にあったようにしっかりと見ていたはずのものが言葉にする前に消えてしまう。それが夢だとわかっていても、朝は切なさに胸元を掴んだ。

「食事はとれそうか」

「……大丈夫。どこも悪くはないわ。昨日飲んだもののお陰か、本当によく寝られたと思う」

「ならいい。まだしばらくここにいる。無理はするな」

「そうする。ハバラはこれから眠るのでしょう。場所を変わるわ」

 長く旅をしてきたせいか、寝具を共有することに慣れてしまった朝に、ハバラの方が顔を顰めた。それでも「わかった」と言ってから、朝に袋に入れられた食事を渡した。

「パンとチーズだ。保温瓶にコーヒーが入っている」

 三つ子が再会した時に保温瓶の有効性について盛り上がり、商家から朝の分も用意できるとわかった時には姉妹揃って大喜びをした。ハバラは嵩張るものをと思っていたが、こうしてみると確かに便利である。

「ありがとう。これ、やっぱりとっても便利だわ」

 朝の目が明るくなったのを確かめてから、ハバラは体を横たえた。

「起きたら少し出る。ここで待っていてくれ。それから話をしよう」

 朝は目を閉じているハバラに頷いてから、これではわからないと思って言葉にした。

「わかったわ。それからね」

 窓の外では人々がさわさわと動いている音が聞こえる。逃げてきた町のような緊迫感は無い。穏やかな1日のまだ早い時間の音だ。

 朝はゆっくりと食事をとった。





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