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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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ユアン・ラングラーの思惑

 取り立てて不自由は無い。

 ユアン・ラングラーはそう思っている。区別がつかなくても、どちらかが昼でどちらかが夜なのだから、都度問いかけてみればいいだけのことだ。列車で移動する間にわかるようになるだろうという楽観的な目論見が外れたために少しだけ意地になっていると言えなくもないが、やはり取り立てて不自由が無いのは変わらない。

 だからふたりを寺院に送り届けて所用を済ませ、また会いに戻った時に、もうひとり、同じ顔の人物が増えたところで、それほど困ることはないと思っていた。

――しかし、そっくりだな。

 似ているとは聞いていたし、昼と夜がこれほど似ていれば、残る朝も似ているだろうとは想像がついた。だが切りそろえた髪に同じ尼僧服を着ていることで、尚更区別がつきにくくなっている。

――上着を着ていた時はわかったのだが。

 移動中に、昼と夜の上着の襟のフォルムの違いに気づき、こっそり目印にしたりもした。

 ひとりずつで話をすればわかるのだ。昼はおっとりと柔らかな可愛らしさが、夜は凛とした美しさが目立つ。だが揃うとそれらの印象が混ざってしまってどちらがどちらかわからなくなる。

 そして加わった朝は、明るくぱっと目を引く。でもやっぱり、その明るさが3人揃うと同じように混ざってしまう。

――困らないと言えば困らないけれど。

 三つ子に揃って話を聞きたいと言われ、時間をつくって卓を囲むと、どこを向いて話ていいのかわからなくなる。そしてどこまで話していいものかもよくわからない。

――信用したものかどうか。

 朝と同行していたというハバラと言うやたらきれいな顔をした男が一緒に部屋に入ったのを見て、隠しておくべきことを増やすかどうか悩んでしまった。

 ハバラは「気にしないでくれ」と言うが、いや、それはできないだろうと思う。きれいな顔立ちはともかく、目つきが鋭すぎる。

――怖くて仕方ないなぁ。

 ユアン・ラングラーは自分が男前だと自負があるし、これまでも顔立ちで得をしたことがいくらもある。けれど揃って美しい顔と、それをまったく気にしない人々に囲まれてしまえば、そんなものはなんの武器にもならないのだ。

――まあ、それでも。

 ユアン・ラングラーは、夜がいつも「ちょっとうさんくさい」と思う笑顔を浮かべた。

――出し惜しみしている場合でもないんだよね。






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