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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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三つ子は話を続ける

「私はやっぱり家に戻る」

 昼は「その前に教授のお宅に寄ってから」と付け足した。

「あと、ユアン・ラングラーさんにもお話をお伺いしてから」

 列車の中ではラングラーの仕事が忙しく、なかなか纏まった話もできなかったうえ、寺院に昼と夜を送り届けるとすぐに「行くところがあるから、あとでまた」と最後に残った秘書と護衛のふたりを連れていってしまったきりだ。

「私も教授のお宅までは一緒に行こうと思うの。ラングラーさんのお話は私も聞きたいし。それから」

 夜は広げた地図の上をすっと筋を描くように指を何回か動かした。

「ここと、ここと、ここ。いくつか気になるところがあるから、ちょっと訪ねてみたいと思って。そのぐらいなら蓄えでなんとかなりそうだし。できれば台下のご意見を伺いたかったのだけれど」

 そこで夜は、ずっと気にかかっていたことを朝にも話した。

「でも先生は、寺院でも教会でも1番偉い人の言葉は信じてはいけないと仰っていたの」

 朝は軽く首を傾げた。

「先生は紹介状を用意してくださったのでしょう?」

「ええ、教授が急ぎ便という手紙を出してくださって。返事の手紙に同封されていたわ」

「でもそれにもね」

 昼が付け加える。

「あまり役に立たないかもしれないけれどって書いてあったのよ」

 夜はため息をついた。

「読んだ時はあまり気にしていなかったんだけど、先生の言葉を思い出したら後から気になってしまって仕方が無くて。いっそお会いできなくて良かったのかもしれないとも考えるんだけれど、お話を伺ってみないことにはわからないかもとも思えるし」

 朝は夜がこれほど悩むのを見るのは久し振りだった。3人揃うのも半年ほどぶりではあるのだが。

 夜はなににつけても解を得るのが早く、昼はゆっくりと考えてから行動を起こす。もちろん朝は考えるより先に動く。

 その夜が躊躇うようなわかりにくさが台下の周辺にはあるのだと思うと、朝は夜が行く先の方が自分よりも危ないのかもしれないと感じた。

「夜も村に帰ったら? 仕切り直すというか」

「朝は?」

 夜の苦笑に、昼は「それもそうね」と頷き、朝は「それもそうか」と素直に謝った。

「ごめんね。私もちょっと危なっかしいのかな。昼だけでも家に戻ってくれるなら、それは安心だけど」

「でも村の境での事故がまだ解決していないから、昼がひとりになるのも不安ではあるのよね」

 朝と夜が揃って眉間に皺を寄せた時、昼が「そういえば」と、いつも通りのおっとりした声をあげた。

「ジャンジャックが来てくれると手紙が来たの」

「え? 誰? あ、そっか昼を助けてくれた人ね」

「え? どうして?」

 昼がどう話すべきかを考える間、朝と夜はお茶を1杯を飲み干し、採れたてのベリーをいくつか食べた。



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