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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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ハバラは間違えない

 ハバラは間違えない。

 朝は言うまでもないが、昼と夜を間違えることもない。確かに見た目はそっくりなのだが、表情や言葉の選び方など、違うところはいくらでもある。

 もしそうだったらという言葉の無意味さをハバラはよく知っている。だが、もし砂漠で出会ったのが昼だったなら砂漠の真ん中でも回れ右をさせて村へ送り届けただろうし、夜だったなら次に目指す町を若干北に変更したかもしれない。

 どちらにしても、これほど無意味なたらればもない。昼も夜もひとりで砂漠へ冒険をしにいくという無謀なことはしないとわかるからだ。

――似ていない。

 誰もが三つ子の似ているところに戸惑うのだが、ハバラはそこに関して困ることは無い。

――問題はこれからだ。

 三つ子が揃ったところで、ここは朝にとって安心できる場所ではない。それに朝は両親の故郷の国を見てみたいという願いがある。それはできれば叶えてやりたい。

――ひとりでも行きかねないからな。

 手を離した途端、ふらふらと飛んでいきかねない。

 再会した驚きが過ぎた後、昼も夜も寺院の手伝いに加わった。畑も賄いも3人ならもっと効率がいい。そしてこれまでのあれこれをずっと話している。畑を回りながら、水仕事をしながら、お茶を飲みながら。離れていた間のすべてを埋める勢いだ。

――ふたりはどうするかだが。

 幼い子供ではないのだから、どうしたいかは当人の希望に任せるに限る。だが、三つ子が揃って故郷に行きたいと願えば、ハバラがひとりで守るには少し荷が勝ちすぎるかもしれない。

――平時ならなんの問題もないんだがな。

 それでも一緒にいたいと請われれば、ハバラは否とは言わない。

 三つ子が笑い声をあげた。明るい鈴の音のようだ。離れに近い畑から戻ってくる。今日も豊作だったらしい。日陰にいるハバラに朝が手を振った。小さな籠も一緒に振っているから、一緒にお茶でもどうだと言うのだろう。いま時分は青紫のベリーが収穫できる。

 ハバラは軽く手を挙げ、返事の代わりにして立ち上がった。

 ハバラがどれだけ考えたところで、朝は、そしておそらく昼も夜も、思ってもみなかった事を言い出すのだ。考えたところで仕方がない。

――昨日の菓子は美味かった。

 ハバラは足を速めて離れにむかった。




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