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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は手伝いを引き受ける

「いいところに来たな!」

 戻ったことに驚きもせず、グラカエスは朝とハバラの荷物を取り上げると、「部屋は前の離れで構わないな。というより、今はそこしか空いていないんだが」とふたりを見もせずに話しながら先を歩いていく。

「どうした?」

 ハバラはさすがに驚きながらグラカエスの横に並ぶ。朝はふたりの早足についていけずに小走りになっている。

「難民がどんどんやってきている。ここまで来るのはかなりたいへんだったんだろう。怪我や病気をしている人たちも多い。ここではそういった人たちを引き受けているのだが手が足りない。少しの間でいい。手を貸してくれ」

 ハバラは返事を躊躇ったが、朝はすぐに頷いた。

「もちろん、できることなら」

 ハバラとグラカエスは揃って朝を振り返った。

「助かる。なに、そう長くはならない。じきに首都の僧院が融通してくれた者が何人か来る手はずになっている。それまででかまわない」

「すまない」

 ハバラのひと言は朝に向けてで、朝はゆるく首を振った。

「大丈夫。私は急がないから」

 朝の返事にハバラは眉を顰め、グラカエスは苦笑した。

「だが現況を知るためにも、先に互いの話をおいた方がいいだろう。茶を持ってくる」

 グラカエスは離れに荷物を置くと、今度は返事を待たずに戻っていく。

 離れの中は前に来た時と変わらず、清潔にきちんと整えられていて、周囲の喧騒もまったく聞こえない。耳をすませても、裏手の小川の流れがわかるぐらいだ。

「どこに?」

 裏門から入ったせいか、離れに来るまでにも難民どころか、グラカエスを呼んでくれた門番の僧侶とグラカエス以外の人を見ていない。

 朝の簡単な言葉に、ハバラは迷わずに答えた。

「おそらく本院の庭だろう。表門を入って右側だ。そこには信者の集う広場や集会所がある。ここは土地があるから、そこに簡易小屋も造れるしな。それに人が入る門はひとつにしておかないと纏められずに困るから、ここへの道の途中から表門に誘導しているんだろう」

「なるほど」

 それほど多くない荷物から地図を取り出した時、グラカエスが茶と菓子と一緒に、紙の束を持って戻ってきた。

「さて、どんな事情で戻ってきたんだ?」

 そう言ったグラカエスは来た時よりもよほど愉快そうな顔をしていて、朝は少しだけ肩の力を抜くことができた。





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