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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は行く方向を考える

 結果として、海に落ちることはなかった。

「おおよそ、南に1時間も行きゃぁ海に出られそうだけどなぁ」

「問題はそこからどう行くかだが」

 ハバラとヒナダは地図を広げ、辺りを見回してしばらく黙り込んだ。

 飛行船は蛇行を繰り返しながらなんとか燃料の岩が無くなる前に、小さな草地に軟着陸を果たしたが、船体はかなり大きく破損した。森から抜けているため、誰も来ないような岩だらけの草地であってもこのまま放っておくわけにはいかない。3人はなんとか船を隠し、とりあえず火を熾して食事をとり、地図を広げたわけだ。すでに周囲は闇に包まれている。森の端に人は来ないが獣は来るかもしれないので火を絶やすわけにはいかない。もっともハバラもヒナダも寝ずの番も野営も慣れているので、朝はせいぜい自分ができることをするだけだ。ハバラと旅をしてきたおかげで、焚火でお茶を入れるのは上手になったと自負している。

「海と言っても、港は無いようね」

 おそらくここだと思われる場所を示したハバラの指が辿った道筋の先は、海岸線が細かくでこぼこしていて、とても港が作れるような入り江なり岬なりがあるようには思えない。

「無いな」

「無い無い。よくわかったな、あんた、地図読めるのか」

 ヒナダが感心したように見るので、朝は照れてしまったが、ハバラは「そのぐらいは教えた」とにべもない。

「船に乗れたとしても、海路で東に行くのは難しそうだ」

「あの船長が人がいいのは俺も知ってる。それでもなにかしら飲まなきゃいけない事情があったってことなら、他はもっとってこともありうるしな」

「もっと?」

「ヤバいってこと。船旅は安全性が高けりゃ高いほど値段も高い。それなりならそれなり。ハバラなら女連れて乗るのに値切ったりしなかっただろうから、高くても安全が見込めなくなってるってことは」

「他の船ではもっと危ないということ?」

「そういうこと」

 朝は肩をすくめたヒナダを見て、口を挟まずに地図を見るハバラを見て、手元にある湯気のたつカップを見た。

「船が駄目なら泳ぐ、とか?」

 言わなければ良かったと、朝はハバラの顔を見て、久々にそう思った。

「東に行くならこう、湾の筋を行くしかねぇだろう」

 つまり出航した港まで戻り陸路を東へと辿る道筋である。

「陸路も」

「危ないと思って船にしたんだよな、わかってる」

 ヒナダがふうっと息を吐いた。朝は自分が行きたいと言った手前、なんとか突破口を見つけたい気がするのだが、いかんせん、旅に関してはまだまだ素人である。

 しばらくの間、焚火のはぜる音がいちばん大きかった。

 だから、朝がうとうとしていたからという事を差し置いても、ハバラの声がやけに大きく聞こえて、朝は体をびくりと動かした。

「西に行くか」

「……西?」

「え、西って、お前たちが行きたいのって」

「西へ西へと行けば、東に着くだろう」

 それはそうだ。

 朝は、さすがハバラだ、と思った。






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